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第3話:映る幻想

せっせと散らばった本を

片付ける途中、

あることを思い出した。


漉音:「資料室っていうと

神崎だが、あいつはもう

いないんだよな」


そう、あの文武祭の後、

神崎はこの学校は自分の

今いるべき場所ではない

と言い残し、

現在、妹である彩音の

寮室に暮らしている。

近くの大学に

受かるために必死で

勉強しているそうだ。

時折暇ができると

古今や俺に留年しない

程度に勉強を

教えてくれている。


漉音:

「考えてみれば…

大切な存在にもう

なっていたんだな‥‥」

Ι

Ι

《映る幻想》

Ι

Ι

渚:「そういえば

神崎さんたちって

姉妹なのに性格とかが

対照的なんですね」


彩音:

「そりゃね〜、だって」


神崎:「大体兄弟というものはどちらかが真面目でもう片方がはっちゃけてるんです。真面目な妹想いの姉がいるからこそ世界はこんなにも安定しているんです。でなければ世界はすでに終わってます。もしそうでなければ今頃き‥‥」


彩音:

「ストップストップー!!

読者が読む気

なくすじゃん!」


神崎:「また意味のわからないことを言って。だから彩音は幼稚園の頃から私に心配ばかりかけて、結局成長は見られなかったようで……これだからあな‥」


彩音:「お姉ちゃんは

お母さんかぁー!?」


神崎:「ついに幻覚まで

見え始めてきましたか」


彩音:「あー言えば

こー言う〜!!」


知美:「フフッ」


渚:「でも確かに

神崎さんは

良いお母さんに

なれそうです」


神崎:

「…そうでしょうか」


渚:「はいっ!」


賑わう10代の少女たち。

男が入り込める

余地がないのは

わかっていたのだが‥‥


漉音:「…おーい」


俺は部屋の隅っこに

突っ立っていた。


神崎:

「…おはようございます

、由来さん」


漉音:「神崎、

単刀直入に言おう。

……何故いるんだ」


神崎:「由来さんは

そんなに私を彼女たちから遠ざけたいですか、そうですか。同年齢の友達が近くにいない私にとって渚さんや知美さんが唯一の憩いの場なのにあなたはそれを奪うつもりですか」


漉音:「さっきから

聞いてたけど、長い」


神崎:

「…言ったら負けです」


おもむろに

(ていうかわざと)

俯く神崎(19)


彩音:「あー!、

お姉ちゃんを

困らせるやつは、

例え由来君でも

許しませんよ!」


漉音:「あー、

悪かった悪かった。

すまん」


神崎:「慰謝料25万円で

妥協しますよ?」


漉音:

「随分リアルな

数字だな、おい。

なら一生しなくていい」

Ι

Ι

まあなんやかんやで

神崎もやっぱり

寂しかったんだろう。

ついこの前まで

家族は全員死んだと

勘違いしてたからな。


にしても、

彩音はあの飛行機事故で

生還したことをはじめ

この学校の生徒たちは

知らず、

(俺が知らなかった

だけかもしれない)

しばらくの間

姿を眩ませいた。


する必要なんて‥


チラッと彩音の顔を

横目で見る。

その顔は笑顔で

いっぱいだった。


彩音:「ん、私の顔に

何かついてる?」


漉音:

「いや、何でもない」


彩音:「?」


神崎:「…度の日曜日は

ちょうど暇ですね」


知美:「じゃあ一緒に

海へ行こう〜」


彩音:

「お、なら

私も行く行くー!!」


神崎:「下劣な言葉を‥」


彩音:「下劣?

……無理やりでしょ!?」


知美:

「渚ちゃんもどう?」


渚:「あ、私は家の仕事が

あるからその日は

無理なんです、

ごめんなさい‥」


漉音:「なら、俺が

代わりにやっとくから

渚は海に

行ってきていいぞ」


渚:「本当ですか!?

ありがとうございます、

由来君」


彩音:

「…ねぇ、何で恋人同士

なのに、渚ちゃんはまだ

由来君って呼ぶの?」


渚:「んー。

馴れが必要ですからね」


彩音:「馴れね〜‥」

Ι

Ι

ある日の日曜日


渚:「では由来君、

あとはよろしく

お願いします」


漉音:

「ああ、楽しんでこい」


渚はにっこり微笑むと

家を出て行った。


漉音:「さてと、

何しよう‥‥」


玖珠:「何しよう…

じゃねえよ、てめえ!」


振り返るとおっさんが

眉を吊り上げて

立っていた。


漉音:

「どうしたおっさん」


玖珠:「俺が折角

渚に無理言って

今日この時間を2人きり

で過ごすつもりだった

のにてめえは〜!!」


漉音:

「あいつの願望

優先させろよ、

親だろ?」


玖珠:「ちっ…

それ言われると何も

口答えできねえな。

……で、あいつは

どこ行ったんだ?」


漉音:「聞いて

なかったのか?」


玖珠:「ああ」


漉音:「ついに渚も

お父さん離れだな」


玖珠:「何ぃぃ!?

そんなの俺が許さねえ」


漉音:「あんたは

娘離れしろ」


玖珠:

「いつまでも俺は

お前を見守るぞ、渚」


漉音:

「知らない人が聞いたら

ただの変態だな」


玖珠:「で、

どこ行ったんだよ」


あっさり流すなよ‥‥


漉音:「海だよ、

友達3人と」


玖珠:「海か……

海と言えば昔嫌な事故が

起こったな」


漉音:「事故って?」


玖珠:「俺は実際

その瞬間を見たわけ

じゃねえんだけどな、

なんでも、旅客機が

エンジントラブルで

墜落しちまった

みたいでな。」


漉音:「それまさか……

13年前か!?」


玖珠:

「小僧知ってんのか?

ああ、確かにあれは

13年前に起こった

事故だ。

生存者は《0》

だったらしい」


漉音:「え、生存者なら

いたはずだろ?」


玖珠:

「どっからそんな

根拠のないこと

言えんだよ。

いや、確かに

新聞やテレビじゃ

はじめは噂されたがよ、

結局遺体は

見つかったそうだ。

全旅行者のな」


漉音:「……」


嘘だろ?

だって彩音は実際

生きているし、

何より一緒に話したり

してるじゃないか。


漉音:「……彩音」


玖珠:「彩音?

……てめえまさか

渚以外に女を!!」


漉音:「違う!

その飛行機事故で

生存した俺の友達だ」


玖珠:「あ?

だから生存者は‥」


漉音:「…神崎彩音って

いうんだ」


その名を聞いた途端、

おっさんの顔が驚きに

変わった。


玖珠:「神崎だと!?

神崎っつったら

あの金持ちの豪邸持ち

じゃねえか」


漉音:「有名なのか?」


玖珠:「てめえも

登校する途中の道で

見かけるだろ」


漉音:「いや、あんまし

見てねえからな」


玖珠:「はー。

だから世間知らずは……

あそこは有名な学者が

住んでたみてえでな。

なんでも、そこの長女は

頭がきれたやつだったが

家族旅行の日に偶然

風邪をこじらしちまった

みたいで、旅行には

行けなかったそうだ」


漉音:「…その後は?」


玖珠:

「引きこもっち

まったらしい」


漉音:「そうか‥」



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