第14話:咲き散る渚
後日、
華やかな衣装のもと、
古今朱雀の送別会が
執り行われ‥
古今:
「死んでないしね!?
何度言ったら
わかんのあんたら!
それに慎ましい
衣装じゃないんだ、
華やかな衣装なんだ!!」
罹依:
「じゃ、留守番
頼むわね〜、古今」
漉音:
「変なところ
いじるなよ〜」
河南:
「留守番を引き受けて
くれるなんて、
少し見直したぞ。
じゃあな」
古今:
「…へ?」
古今、お前は
気づくべきだったな。
昨日お前が
寝静まったのを
見計らって俺たちだけで
会合を開いたことをな。
結依:
「それじゃあ後は‥」
知美:
「いってきまーす‥」
神崎:
「…私はバイト探しに
行ってきますね」
古今:
「え、え、何っ?
計画的な仲間外れ?」
遅いぜ。
渚:
「古今君…」
古今:
「な、渚ちゃん…」
まあ、この前のように
いけばあれだな‥
今回は指示しなくとも‥
渚:
「後はよろしく
お願いしますねっ!」
突き放してドーン!
ニコッと渚は笑った。
古今は精神的に
245378146ダメージが
クリティカルヒット!!
古今は目の前が
まっしろになった‥
古今:
「…いいよ、
放っておけよ」
あ、いじけた。
漉音:
「あ、そうか?
ならこの家の鍵を‥」
古今:
「そこは引き留めて!?」
Ι
Ι
《咲き散る渚》
Ι
Ι
古今?:
「(泣)!!」
漉音:
「罹依、古今の顔が
サブタイトルを
入れた隙になんか
放送禁止コード"ピー"で
塗りつぶさなきゃ
いけないような顔に
整形されてるぞ」
罹依:
「元々あんなもんよ」
河南:
「ここで選択肢だ。
・今日は諦めて
ひとり寂しくここで
留守番をしておく。
・その醜い顔で
羞恥を晒しながら
私たちから距離をおいて
行動を共にする
どっちをとる?」
史上最悪の選択肢だな。
古今:
「どっちも嫌じゃ!」
河南:
「じゃあ選択肢を
もうひとつ加えよう。
・死ね
これで
選びやすくなったろ、
多分お前は3つ目を
選ぶことに
なるだろうがな」
…ていうか
命令形だしな。
古今:
「ってことは…
罹依に殺されるぅ!!」
罹依:
「何であたしなのよ!」
古今:
「ギャー!!」
古今、羞恥どころの
問題じゃなくなったので
留守番に強制的に決定。
Ι
Ι
俺たちの町には
そういう遊び場は
まず建っていない。
そこで毎回バスを幾つか
乗り換えしないと
いけないんだ。
罹依:
「ん〜〜着いたっ!!」
おもいっきり
背伸びをする。
数十分バスに乗ってた
だけだろうが。
河南:
「はじめはどうする?」
結依:
「あっ、私
映画館に行きたい!」
罹依:
「よし決定〜!
じゃ、お金
よろしくね、漉」
漉音:
「そのための俺か!!」
なんてこった…
まさかはめられた?
くそっ、こんなことなら
あいつ
連れてくりゃよかった‥
ふと罹依を横目で見る。
…あいつ、
してやったみたいな
顔してやがるな、
確信犯か。
……なにぃ!?
河南までもが
してやった顔だと!
あいつら、
俺の見てないところで
共謀してやがったのか‥
漉音:
「わかったよ、
払えばいいんだろ」
罹依:
「さっすが〜!!
古今だと周りから
まきあげてる感じに
見られるから
嫌だったのよね〜」
漉音:
「……」
もういい、何も言わん。
‖
映画館、服屋、
カラオケ、ファミレス、
ゲームセンターと
まわりにまわって……
罹依:
「もうっ!!
どうなってんのよ
このポンコツ機械は!」
店員:
「そ、それは
お客様がボタンを強く
叩きすぎなのが
問題かと‥」
罹依:
「知らないわよ、
〈取り扱いの注意〉にも
[この機械の
ボタンは強く
叩かないでください]
なんて書いてない
じゃないのよ!」
店員:
「そんなこと
言われましても‥」
この状況がみなさんには
お分かりだろうか。
罹依がゲーセンの店員を
脅して…ん?
ゴハッ!!
……UFOキャッチャーが
不慮の事故により
壊れてしまったのだ。
それを店員に
文句しているのである。
(実はボタンを無駄に
力強く連打して
逆に弁償しなければ
いけない立場なんだが…
物が物なんで
俺も罹依側に
まわるしかない。
すみません、ちょっと
年上の人生の先輩‥)
漉音:
「まあまあ、
それくらいにしとけよ。
あんたも大目に
みてくれ、な」
店員:
「しかしこのまま
使えないんじゃ…
僕の…くびが‥」
…おい罹依。
何てことしやがった。
お前の出現により
ここの一店員が
人生狂いそうなんだぞ。
狂い咲きそうなんだぞ。
ま、まさか私だって
ここまで発展するとは
思ってなかったのよ‥
知美:
「店員さん店員さん。
これ、直ればいいの?」
いたぁぁぁあぁあっ!!!
ここに日本を誇る
最強の天才がぁぁ!!
店員:
「な、直せませんよ…
さすがにこれは‥」
知美:
「ううん、まかせて」
ここまで説得力のない
緩やかな口調の娘を
見るのは初めてだ、
でも言いたそうな
店員さんだった。
しばらくして、
俺がドライバーとかを
調達して知美に渡すと、
説明書を見るなり
ものすごい勢いで
いじくりだした。
店員も唖然としている。
‖
知美:
「ふーっ…
これで動くはず」
店員:
「あ、ありがとう
ございます!!」
いや、ホントは
俺たちが言うべき
台詞なんだがな‥
罹依:
「知美〜
あんたやるじゃない!」
漉音:
「原因作った
お前が言うな」
罹依:
「キニシナイ
キニシナイ〜〜!!」
目は完全に
泳いでるけどな。
‖
結依:
「今日は楽しかったね」
河南:
「またこうして
みんなで
行きたいものだ」
漉音:
「俺は今日だけで
人生の75%くらいの
ドッキリを
味わったんだが‥」
なんやかんやで、
一番楽しんだのは
俺だったのかもな。
夕焼け、
俺たちは談笑に沈んだ。
Ι
Ι
俺たち高校生には、
越えなきゃいけない
壁がある。
その意味が
おわかりだろうか?
表現を変えると、
《避けては通れない壁》
…つまり、あれだ。
先生:
「古今、今日から
1ヶ月間放課後補習だ。
由来……お前もだな」
古今:
「ぎゃああぁあぁぁ!!
放課後の楽しみがぁ!!」
そうテストである。
そしてこの日、
部活にはしばらく
行けないことが
決定した日でもある。
‖
放課後、部室
罹依:
「おっはー…ってあれ?
まだ誰も来てないの?
せっかく停学期間終了
お祝いしようと
思ってきたのにさ」
その時部屋の扉が
いきなり開き、
思わず「ひゃっ!!」と
柄にもない声を
出してしまった。
渚:
「り、罹依さん…
みなさん…テストの‥」
罹依:
「ちょ、ちょっと渚!?
あんた大丈夫?」
明らかに今までと
様子が違っている。
倒れかけた渚をそのまま
抱きかかえる。
罹依:
「熱っ!!」
額に手を
添えただけだった。
この熱さは
普通じゃない!!
罹依:
「ど、どうすれば……
そうだ!
漉のやつを!!
あいつ、彼女が
倒れたっていうのに
何してんのよ」
電話をかける。
(早く…でなさい!)
‖
漉音:
「…ぐっ、ぐお……
はっ……ぐぅ‥」
無性に眠たい。
これちゃんと受けないと
いつまでたっても
渚に会えないな‥
「プルル、プルル!」
漉音:
「うおっ!!
なんだなんだ…って
電話かぁ‥」
先生:
「電話かぁ…じゃない!
由来、携帯没収するぞ」
漉音:
「そ、それは
ちょっと‥な‥」
机の下で勘だけで
携帯を触る俺がいた。
もう何年も使い古した
俺の相棒なんだ、
間違えて変なところを
押すわけがない‥
ポチッ。
「漉ーーーぅぅ!!!
あんた聞いてんのー!?」
部屋いっぱいに流れる
受話器先の声。
間違いなく罹依だ。
…まわりからの視線が
こんなにも痛いなんて
思ってもみなかったぜ。
先生:
「……由来、
5秒だけやる、出ろ」
漉音:
「ん……なんだ罹」
罹依:
「渚が!!
渚が倒れたのよ!!」
っ!!
渚が…倒れた?
漉音:
「わかった、
今すぐに行く!」
俺は荷物を部屋に残し、
席を立った。
先生:
「なっ!
由来、出ろっていうのは
そういう意味じゃ‥」
今の俺には…
ただのノイズだった。
Ι
Ι
漉音:
「……」
玖珠:
「…別にお前の
せいじゃねえんだよ。
しゃきっとしやがれ」
漉音:
「あんたこそ
いつもみたいに
しゃきっとしろよ」
玖珠:
「あんっ!?」
環那:
「まあまあ…
由来さんは玖珠さんを
元気づけるために‥」
玖珠:
「こんなやつに
俺が元気づけられて
たまるかぁぁ!!」
場所は渚の家、
居間に渚を除いて
俺たちはいた。
環那:
「もともと体が
弱い子でしたから…
昨日の疲れが出たのかも
しれませんね。
心配しなくて
いいですよ、また
前みたいに学校にすぐ
行けるように
なりますから、ね」
俺に心配かけないように
するためか、優しく
声を声をかけてくれる。
でも俺はあいつのとこに
すぐ行けなかった‥
漉音:
「…俺、渚の横に
ついててもいいですか」
玖珠:
「あぁ!?
お前はな、さっさと」
環那:
「はい、そうして
あげてください」
玖珠:
「そうだ、
そうしてあげてください
……ちがーーう!!」