第13話:始まりはいつも…
翌日、晴れやか朝、
エスケープしようとした
俺の作戦は
華麗に失敗に終わった。
Ι
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《始まりはいつも…》
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河南:
「じゃあ朝ご飯は
作っておいたから
早めに食べてくれ」
既に支度を始めていた
河南が作ったらしい。
確かに今までにない
香ばしい匂いが
漂ってくる。
罹依:
「それじゃ、
いってきまーす!
間違ってもエスケープ
しようだなんて
考えるんじゃないわよ」
流石察しのいい。
だがここは俺の家、
俺だけが知ってる
脱出口なんて
幾らでもあんだよ。
知美:
「漉君行ってくる」
結依:
「行ってきますね」
さらに2人が
扉から出て行く。
渚:
「由来君、
行ってきますね」
漉音:
「ああ、
楽しんでこいよ」
そしてまた1人。
神崎:
「…私はバイトでも
探しにいってきます」
漉音:
「頑張ってな」
今思えば神崎はもう
家に1人なんだよな。
古今:
「んじゃ、
僕も行ってく‥‥」
古今の動作が止まった。
玄関、男、ふたりきり、
変な感じだ。
早くfly awayしてこい。
古今:
「そうだそうだ!
言うの忘れてたよ」
漉音:
「なんだ?」
古今:
「僕も扉閉めるの
手伝ったから。
じゃーねー」
……?
「僕も扉閉めるの
手伝ったから」‥
………(°□°;)!!
しまった!
思わず絵文字を
出しちまうくらい
驚いてしまったぁぁ!!
漉音:
「あいつも俺の家を
知り尽くしてたかぁ‥」
きっと罹依に
強要されたに違いない。
だって顔こそ
特に言わなかったが
目に青いあざが
できてたからな。
漉音:
「でも、
探さないよりましかっ」
胡座の状態から
立ち上がり、
辺りを見回す。
‖
居間の窓は外部から
徹底的に固定か…
いや、そしたら
換気できねえじゃん。
やりやがったな
あの無敵超人。
‖
玄関は…
見るまでもなかった。
まさかの《KEEP OUT》。
何で外が
危険地帯化してんだよ。
あいつら
危険地帯に笑いながら
飛び込んでったぞ。
‖
2階は…ん?
開いてるな、
忘れてたのか?
それとも流石に
ここからは逃げはしない
だろうと甘くみたな。
残念だったな。
実は見えにくいが
梯子が眠ってんだよな。
これで俺は安心して
エスケ……プ?
地面いっぱいに広がる
いとせぬ地獄絵図。
おい、
針山に古今の私物が
見るも無残な姿で
放置されてるぞ。
なんだ、
罹依か、河南か?
まあ俺のじゃないから
構わないけど。
‖
漉音:
「エスケープは不可か」
諦めたよ、
ああ諦めましたよ。
こんな大仕事いつ
あいつらこなしたんだ?
その時、
ピンポーンと
来客が来たようだ。
この家に、珍しいな。
漉音:
「はーい、
今開け…ま、す‥」
?:
「…やあ、久しぶりだ」
何で…こいつが?
?:
「たまたま近くに
立ち寄ったものだから、
来させてもらったよ」
この弱々しい声、
雰囲気、そして顔。
一生忘れるような
はずのない…
俺の……父親だ。
Ι
Ι
漉音父:
「…私の顔に何か
ついているかい?」
漉音:
「こ…どの面さげて
ここに戻ってきたっ!!」
漉音父:
「……」
相も変わらず
少し微笑んだままだ。
昔から、今も。
漉音父:
「ちょっと…母さんと
会わせてくれないか?」
漉音:
「母さんなら
死んでるだろ」
冷たく言い放つ。
別に
母さんの死んだ原因が
こいつのせいでは
ないことはわかってる。
問題はそのあとだ。
漉音父:
「そうか…
そうだったな。
なら家にあが‥」
漉音:
「断る!」
漉音父:
「ん……
そういえば
学校はどうしたんだ?」
漉音:
「ちっ、
停学くらったんだよ」
漉音父:
「なんで‥」
漉音:
「あんたには
関係のないことだ!!
もういいだろ、
さっさと行ってくれ」
許せなかった。
俺を置いていった
あいつが許せなかった。
ただそれだけ、
仕事だなんてことは
重々承知だった。
でも、せめて……
漉音父:
「…じゃあ、
もう行かせてもらうよ」
漉音:
「ああ」
ぶっきらぼうに言った。
それでもあいつは
微笑んでいた。
Ι
Ι
罹依:
「たっだいま〜!」
漉音:
「あれ、
家に連絡とかいいのか?
いきなりこっち来て」
罹依:
「とっくの昔にね」
漉音:
「ていうかなんだ
罹依、あれは」
罹依:
「あれ?
…あ〜、あれね」
漉音:
「俺はな、
停学なだけであって、
家宅謹慎
じゃないんだぞ」
罹依:
「エ、イコールデ
ツナゲナイノ?」
とぼけやがって、
お前はカタカナ語は
似合わないんだよ。
知美:
「今帰ったよ〜」
古今:
「たっだいま〜!」
ボグッ、ドガッ!!
罹依:
「真似んじゃないわよ」
古今:
「知りませんけどっ!?」
と、ここまでで
気づいたことがある。
漉音:
「河南と早瀬は?
あと渚も」
知美:
「亜希さんと
結依ちゃんは
生徒会の仕事だって」
古今:
「渚ちゃんは
一度家に寄るんだって」
漉音:
「そうか‥」
‖
罹依:
「ねえ、明日土曜だし
漉も連れて
繁華街に行くわよ!」
漉音:
「ゲーセンか?」
罹依:
「いちいち
どこに行こうかなんて
決めるの面倒だから
全部行けばいいのよ」
なんて大雑把!
そういえば
部活乗っ取り作戦の時も
似たような場面に
出くわしたな。
渚&河南&結依:
「ただいま〜」
そこに渚たちが
まとめて帰ってきた。
ちょうどそこで
出くわしたらしい。
罹依:
「よぅーし!
明日楽しむわよー!!
古今送別会ぃ!!」
バタンッ!
扉の陰から燃え尽きた
古今の亡骸が…
漉音:
「古今んんーー!!(笑)」
古今:
「笑うところ
じゃないよねぇ!?」