第11話:過去の使命
暗い夜道を独り歩く。
唯一の光源である
街灯に照らされた
漉音は河南と別れて
家路につくまで
終始溜め息をついていた
漉音:
「はぁ…
また帰ってきたか」
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《過去の使命》
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小さい町では
主流の一軒家。
しかし、漉音は
そんなことなど
どうでもよかった。
漉音:
「…母さん」
和室には無造作に
物が置かれていて、
横になっている
家具さえあった。
とても人が
住んでいるとは
思えないほどだ。
そんな中で一カ所だけ
綺麗に整っている
場所には1つの写真。
今は亡き漉音の母親、
親父の残した…
唯一の……形見だ。
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漉音:
「ひとまず!
少しは
綺麗にしないとな」
散らかり放題の服、
倒れた家具など。
やることは沢山あった。
漉音:
「こりゃ夜通しだな」
‖
漉音:
「というわけで
あとは頼んだっ!」
古今:
「いきなり連れてきて
何言ってるか
わかってますあなた!?」
古今を義理で連れてきた
古今:
「なに義理って!?
え、義理で
手伝わされるの僕!?」
漉音:
「なあ、頼むよ。
この近くにいて
俺の家の事情知ってんの
お前しかいないんだよ」
古今:
「…そりゃね、
確かに由来の過去を
知ってんのは
僕だけだけどさ、
そろそろ打ち明けて、
罹依とかにも
来てもらったら?」
漉音:
「変な心配を
あいつらには
かけたくないし、
もう時間が時間だ。
もう観念しろ」
古今:
「くっ、こうなったら
観念するしかないか…
…って何故僕立場下!?
なに、
言葉のマジック?」
ホント扱いやすいよな
こいつは‥
‖
そして俺たちは
片付けを開始した。
古今:
「あ、そういえばさ、
何でこんなこと急に
しようと思ったの?」
古今が他の作業を
しながら目を合わせずに
こんなことを聞いてきた
漉音:
「何でって…
明日から河南が
泊まりにくんだよ」
俺もまた
目を合わせずに
答えてみた。
古今:
「へぇー、そうなんだ…
へぇー……へ?」
ピタッと古今が
首だけをこちらに
向けてくる。
180°くらい。
古今:
「その言い回しだと
してすぐ死ぬわ!!
というかなに!?
河南明日から
ここに泊まるの!?」
漉音:
「予定ではな」
古今:
「がっ……」
おそらく
こいつの頭の中じゃ、
俺が河南と楽しく
登下校して
最高のスクールライフを
おくっている
描写が映ってんだろな‥
古今:
「何でそういう
話になったかは
知らないけどさ、
よく向こうも
OKしてくれたよね。
ひとつ屋根の下
男と2人っきりなのに」
漉音:
「ああ、それだろ。
時々罹依たちにも
来てくれるよう頼むって
言ったらOKしてくれた」
古今:
「〜〜!!」
なんか苦悩してる。
時々壁に頭
ガンガンぶつけてる。
止めろ、
隣の白河さんとこの
親父っさんが……
「ガンッ!」
ほら蹴り返してきた。
古今:
「ねぇ!
ぼ、僕も来ていい?」
漉音:
「そこらへんは
罹依に一任する」
昔の俺じゃあ、
こんな人を家に
あがらせるなんて
しなかったろな。
ホント…
変わっていくな、
俺の歩む道は‥‥
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〜学校〜
罹依:
「おっはよー、漉!
早速質問なんだけど‥」
漉音:
「ん、なんだ?」
罹依:
「こいつは何で
いきなりあたしの
目の前に朝っぱらから
現れたわけ〜?」
右手には広辞苑、
左手には古今、か‥
まあ理由は
察しがつくけどな。
漉音:
「昨日メールしたろ。
それでこいつは
僕も来ていいか
って聞いてきたから、
罹依に一任するって
言ったんだ」
罹依:
「はは〜、それで〜」
合点がいったらしく、
古今の首根っこを持つ
手の力が緩み、
ゆっくりと、
古今を窓から
落とそうとしてた。
古今:
「だあぁぁーーっ!!
待った待ったぁぁ!!」
結依:
「落ちれば
いいのに(笑)」
古今:
「何で笑ったぁ!?」
罹依:
「3、2…」
地獄への
カウントダウン。
古今:
「待った待った
待った待った待った
待ったぁぁ!!」
罹依:
「1……ん?」
古今が教室の隅に
ポイと投げ捨てられ、
罹依が
窓の外に注目する。
結依:
「どうしたの
お姉ちゃん?」
罹依:
「なんかぞろぞろと
校門に向かって
来てるわよ!」
漉音:「っ!」
まさか奴らがまた‥‥?
漉音:
「ちょっと席はずすぞ」
罹依:
「ちょ、
あんた、まさかっ!」
‖
河南:
「っ!!
ここまで来たか」
Ι
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生徒の大半は
まだこの事態に
気づいてない。
追い返すなら
今しかない!
…俺ひとりで
追い返せるか?
河南:
「おい!……漉音っ!!」
呼びかけられた先には
河南がいて、こっちに
走ってきていた。
漉音:
「あれは…やっぱり」
河南:
「ああ…
多分私目当てだ」
漉音:
「どうする、
無理にでも追い返すか」
河南:
「駄目だ。
へたな刺激は
あいつらを余計
騒がせることになる。
話し合いで済まそう」
漉音:
「あいつらが
そんなこと聞くわけ‥」
河南:
「穏便に済ませる。
生徒会長河南亜希、
それが今の私の使命だ」