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第三十一話 バール、〝淘汰〟と邂逅する。

日曜日!

読まずにはいられない!

読もう! 追放戦士のバール無双!


勢いが重要です('ω')

「バール、よかった」


 すっきりした顔のロニが、俺を見て笑顔を見せる。

 明るい表情に、いつもの笑顔。

 ロニが戻って来た、取り返したと、少しばかり俺の中にある『狂化』の炎が火力を落とす。

 それに伴ってか、俺の姿が若干人へと戻っていく。


「ああ。心配をかけちまった。もう、大丈夫だ」

「うん……わたしも、ごめんね」


 目を伏せるロニをもう一度抱擁しようとした俺だったが、足元が大きく揺れてたたらを踏む。


「なんだ……!?」

「おそらく、ガデスが規定位置に到達したのじゃろう」


 デクスローがナブリスの消えた扉を睨む。


「じゃが、まだ間に合う。最後の封印は、エマによってなされた〝聖女〟の封印じゃ。ロニ殿がそれを解かねば全権の使用はできぬ」

「そうか。じゃあ……いくか」


 いまだ化物のように黒く硬質化した手と腕を見て、ぎゅっと握りしめる。

 これは、この局面を越えるための力だ。ロニを取り返しても、まだ終わりはしない。

 もし、このまま戻らなくても、後悔などするものか。


「……大丈夫、こわくないよ」


 ロニが俺の腕に手を沿わせる。


「バールがどんなだって、バールはバールだもの」


 どうしてロニは俺の事がこんなに理解できてしまうのだろう。

 ここに来て、俺のあの迷いが完全に杞憂だったと思い知る。

 俺は、ただ心が弱い愚か者だった。


 だが、今度は恐れずに前へ進める。


「ああ。ありがとう、ロニ。……さあ、とっとと全部終わらせて帰ろう」

「うん」


 「帰ろう」に今度こそ頷いたロニが、俺が投げ捨てた大剣を拾い上げる。

 刀身がボロボロに砕けて、もはや剣の形もしていないが。


「ごめんね、クカタチ。ね、もう一度……力を貸して」


 ロニの言葉に、ガラクタになっていた剣が淡く輝きながらその姿を形を変容させる。

 それはするすると形を整えて、やや細身の湾曲した刀身を持つ美しい片刃の長剣に変化していく。


「それ、使って大丈夫なのか?」

「うん。これはすごく昔の〝勇者〟が使っていた聖剣なの。ナブリスがわたしの力を引き出すために使った、教会の聖遺物。利用されたのは、この子も同じだから」

「そうか。なら、そいつも一緒にいこう」


 あのうすっぺらいゴミ野郎の、うすっぺらい夢を(ことごと)く、その何もかもぶち壊して……殺してやる。

 もう今後、ロニを利用しようというバカが現れぬよう、徹底的にぶっ殺してその残骸を目立つところにぶちまけてやる。


 三人で頷き合い、俺達はいまだ少し揺れる『ガデスの玉座』の最奥にある扉に向かって注意深く歩く。


「デクスロー。この都市自体はどうやって止める。いや、どうやって止めた?」


 ナブリスは人間のはずだ。

 なまじ、【勇者】のようになっていても、物理的に排除できる。

 だが、これだけの規模の超巨大魔法道具(アーティファクト)を止める方法はわからない。

 前回これを何とかしたらしいデクスローならば、方法を知っているはずだ。


「それについては考えがある。まずは、ナブリスめを止めようぞ」

「わかった。ガデスについては任せる」


 そんなやり取りをする間に、ナブリスの消えた扉の前に到達する。

 扉に手を掛けようとして、俺ははたと足を止めた。


「……」


 奇妙だ。

 内部から漏れる人の気配が、あまりも奇妙すぎる。


「どうしたの、バール?」

「なあ、ロニ。ナブリスってのは、なんだ?」


 俺の問いに、ロニが不思議そうに首をかしげる。


「あの人は、普通の人間のはずだよ?」

「だとしたら、そうじゃなくなったらしい」


 扉の向こう側から漏れる気配……ぼんやりと感じる命の気配はもっと禍々しいものだ。

 人の気配がこんなものであってはならない。


 そして、それは徐々に密度を増して迫ってきている。


「デクスロー! 扉から離れろ!」


 そう警告して、ロニを抱え後方に跳ぶ。

 それと同時に、扉が勢いよくはじけ飛んだ。


「……」


 水蒸気のようなもので煙る向こう側から、人影が姿を現す。


 そいつは、ナブリスではなかった。

 そして、人のなりをしちゃいるが……人間ですらなかった。


「なんだ……コイツは」


 理解の及ばない何か。

 人間と紅い水晶が混じり合ったような奇怪な姿のそいつは、床から少し上を浮遊しながら、ゆっくりと首を振って俺達を確認する。

 頭部だけは人間とはっきりわかる形をしてており、その顔はどこか高貴さを感じないでもない。


「ああ、居た……。君。()()をここに持ってきてくれたまえ」


 俺の方を向いたそいつは、ロニを指先で示す。


「あん?」

「聞こえなかったのかい? その聖女をこっちに持ってこいと言ったんだ」

「てめぇ……何もんだ?」


 俺の言葉に、そいつは意外そうな顔をした。

 これだけの邪気を放ちながら、まるで無邪気な様子がこいつの不気味さをさらに際立たせている。


「どうやら、人間はサル以下にまで落ちぶれたようだね。世界の支配者たる僕の名前がわからないなんて」

「知っておるともッ!」


 デクスローが魔法の矢を連射して、水晶人間を攻撃する。

 だが、その全てが直前で目標を見失ったかのようにあらぬ方向へそれて、壁や床に穴を穿った。


「そやつの名は、レヒター。儂の兄にして……世界を崩壊せしめる〝淘汰〟じゃ!」


 デクスローの方を向いた水晶人間が、じっとデクスローを見る。


「ホントだ。やあ、デクスタロニーア。何年ぶりかな? ずいぶん老けて……薄汚い姿になったもんだね」

「此度も、お主を仕留めに来たぞ。レヒター!」

「面白い冗談だね。結局、お前はあの時……僕も『ズヴェン』も仕留めそこなったんじゃないか。そして、今回もできやしないよ」


 水晶人間(レヒター)が、自分を晒すように両手を広げてけらけらと笑った。


いかがでしたでしょうか('ω')

ラスボス登場です。

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