表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/101

第二十七話 クライス、救援を得る。

水曜日です('ω')

週も半分。運命の来週が近づいてまいりました……


あ、今回はクライスさんの視点です。

(クライス視点)



「社長! もどったッス!」

「距離と規模は?」

(ウェーブ)は三つ! 規模はそれぞれ五十弱ッス。一つはルートを逸れて、平原方面っス」


 すぐに答えが返ってくるあたり、相変わらずダッカスの奴は有能だ。


「平原のは対応できないので、斥候に動向だけ追わせろ」

「はいッス。ついでに警戒哨を回ってくるっス」


 ダッカスが外部委託の追跡者(チェイサー)が待機する小屋へと走り去る。

 『モルガン冒険社』の幹部だというのに、使い走りのように使って申し訳ないと思うが、情報の伝達や収集に関してダッカスほど信用できる奴もいない。


「よし、第一波が来るぞ! 迎撃準備だ。防衛部隊は待機して、討ち漏らしを排除しつつ防壁を守れ。迎撃部隊は『アルバトロス』と出撃だ」


 各部隊の隊長格が緊張した面持ちでうなずく。

 ここトロアナは『大暴走(スタンピード)』の脅威に常に晒されてきた街だ。

 当然、その行動マニュアルも存在するが、今回のはやや規模がデカすぎる。


 魔物の数が五十を超えて、異常行動をとり始めれば『大暴走(スタンピード)』と呼ぶが、今回はそれが三つ。

 しかも、報告によると魔物(モンスター)は複数の種類が混ざり合っていて、いつものように一種類の魔物(モンスター)を相手にするような対策がとれない。

 迷宮(ダンジョン)での遭遇戦(エンカウント)が、向こうから大挙して攻めてくるようなものだ。


「バルボ・フット。あんたのアライアンスには遊撃を任せる。好きにやってくれ」

「おうさ」


 横に控える歴戦の冒険者に適当な指示を丸投げする。

 何度も『大暴走(スタンピード)』を退けてきた男だ。本来はこういうやつが指揮を執るべきなんだろうが、こう大規模になると自分じゃ力不足だと抜かしやがった。


罠地点(トラップポイント)に接敵!」


 遠見の魔法道具(アーティファクト)で『トラヴィの森』を警戒していた防衛部隊が声を張り上げる。魔物(モンスター)どもめ、思ったより早いな。


「行ってくれ!」


 短く指示を飛ばし、迎撃部隊を載せた馬車を出させる。

 こういう場合、殲滅速度と状況に対する臨機応変さが重要になってくることが多い。

 そして、その大半は足の速さで解決できる。


「くそ」


 思わず悪態が口からこぼれてしまう。

 バールを手伝うこともできず、総指揮官故に戦場に出ることもかなわない。

 恐騎士(テラーナイト)が聞いて呆れる。


「クライスさん、マズいッス!」


 再度戻って来たダッカスが、息を切らして数枚のメモを差し出す。

 そこには、別方面の監視を任せていたいくつかの斥候部隊からの連絡が走り書きしてあり……始まったばかりの防衛戦が、すでに最悪の事態に傾いていることを示していた。


「くそったれが! どうなってやがる」

「わからないッス。『大暴走(スタンピード)』にしては統制が取れすぎてるっッス」


 トロアナを囲み込むように、いくつかの魔物(モンスター)の群れがトロアナを目指している。

 念のためにと配置した斥候がこの動きを察知したのは、まさに不幸中の幸いというべきか。


 だが、マズい。

 これ以上、ここの人員は割けない。

 というよりも、すでに冒険者ギルドに緊急時招集を掛けさせているため、これ以上はどうしようもないのだ。ここにある全てで解決しなくてはならない。

 考えあぐねていると、知った顔が防壁の上から飛び降りてきた。


「クライス。一か所はオレが行ってやるよ。足止めして時間を稼ぐ」

「ヴィジル!」

「簡易設置のトラップを山ほど持っていけば、多少足は鈍らせられる。トロアナ(ここ)を落とされたら、今度こそバールの奴の帰る場所がなくなっちまうからな」


 やる気なさげにヴィジルが苦笑する。


「しかし、やべーな。他ん所に向かえる人材は?」

「それがあればお前を一人で行かせたりはしない」


 指揮官を誰かにふれば俺が出ることもできるが……『モルガン冒険社』が各隊に出張ってる以上、俺じゃないと指揮が混乱するだろう。

 各所ギリギリの人員配置だ。戦力を減らせば、その場所のリスクが跳ね上がる。


「お困りですね、クライスさん」


 緊張した場の空気にそぐわない、落ち着いた声が俺の背中からかけられた。

 連絡用通用口から声の主が姿を現す。

 戦用僧衣を着た細身の男はでかい戦槌(メイス)を片手で軽々と担ぎ上げて、柔和な笑みを浮かべながらこちらへと歩いてくる。


「モルク……!」


 ヴィジルの声に、【僧侶】モルクが小さく頭を下げる。

 数百のボルグルの群れとやり合っても倒れない、歴戦の元A級冒険者。


「お二人とも、お久しぶりです。お手伝いに来たのですが、いいタイミングだったようですね」

「お前、トロアナに来てたのかよ」

「はい。先ほど。ダルザックに報せが届いてすぐに出たのですが、少し出遅れましたね」


 モルクが俺に向き直って、笑って俺に手を差し出す。


「クライスさん。ここで()()()()()()()()()()()()()


 モルクの手を握り返して、俺はうなずく。


「わかった。北西方面を頼む……出来るだけ早く迎撃を向かわせるから、もたせてくれ」

「お任せください。守ってみせますよ。あなたとバールさんが、私の故郷(ホーム)を守ってくれたように」


 モルクが頼もし気にうなずき、北西方向へ走ってく。その後を追うように、ヴィジルも駆け出していった。

 これで北の二ヵ所は時間稼ぎができる。『アルバトロス』が戻り次第、フォローに向かわせよう。


 しかし、あと三か所……数が多すぎる!

 波状攻撃ではない包囲戦を仕掛けてくるなど、この『大暴走(スタンピード)』はどこかおかしい。


「伝令です!」


 戦力分配を再計算していたところ、斥候の一人が駆け込んできた。


「どうした? 『大暴走(スタンピード)』の追加か?」

「いえ、増援です。指示をとのこと」

「……! どこの連中だ?」


 招集できる戦力は全て集めたと思ったが……まだ、動けるやつらがいたのか?


「サングイン騎士団と名乗っています!」

「あいつらか……!」


 『白き者の行進』でも、どこからともなく増援に現れた騎士団だ。

 素性は明かせないと言っていたが、信用できる戦力ではある。


「よし、北方面の殲滅に向かってもらってくれ」

「はい!」


 斥候が全速力で走っていく。

 これで、終わり次第ヴィジルとモルクのフォローに回ってもらえれば、あいつらの生存率が上がる。


「あとは南方面……!」


 俺が出るしかないか? 


 包囲戦になれば俺がここで指揮官をする意味もあまりない。

 今出張ってる連中を戻して、迎撃戦から防衛戦に切り替えるしかない。

 そうしなくては、南方面からきている魔物(モンスター)の群れが街を踏み荒らすだろう。


「ダッカス、前線に走って防衛戦に切り替えると伝えろ。俺は今から南門へ向かう」

「社長一人で? 無茶ッスよ!」

「ダチに無茶をやらせたんだ、俺も同じ手を打つ。ここの指揮はお前に任せるぞ」

「そんなの無理っスよ!」


 ダッカスが声を上げると同時に、先ほどとは別の伝令が駆け込んできた。

 南方面の警戒に当てていた奴だ。


「来たか……ッ!」


 いよいよ戦線崩壊の報せかと思ったが、伝令の顔はいくぶん明るい。


「社長! 南方面、持ち直しました」

「なんだと? 今度はどこの騎士団だ……。それとも別の街のアライアンスか?」

「いいえ、パーティです。六人組の」


 伝令の言葉に、絶句する。

 こちらに伝えられていた南方面に押し寄せる魔物の数は、俺が『アルバトロス』を率いて命を賭ければギリギリ足止めが敵うかどうか……という規模だったはずだ。

 それをたったの六人で押し返す? そんな連中、本当にいるのか?


「名のあるA級パーティか? どこの連中だ」

「わかりません。ただ、『〝能無し〟が一杯奢りに来た』とバールさんに伝えてくれって」


 どこの誰だか知らんが、〝能無し〟とはまた謙遜の過ぎる二つ名を名乗ったものだ。


「わかった。そいつらは好きにさせておけ! 悪いが引き続き観測と連絡役を頼む」

「はい」


 駆けゆく斥候を見送って、俺は深呼吸をする。

 良い事も悪い事も起こりすぎていて、少し落ち着く必要がある。


「なんなんスかね、この状況」

「わからん」


 そう答えつつも、一つだけわかっていることもある。

 それはバールが……あの粗野で乱暴で無意識に貸しをばら撒くお人好しの〝勇者〟が、ここにおらずしてまた俺に貸しを作ったという事実だ。


 ああ、くそったれ。これじゃあ、いつまでたっても借りを返せやしないぞ。

 こうなったら好きなだけ奢ってやるから無事で戻って来い。


 ……あの酒好きの〝聖女〟を連れてな。

いかがでしたでしょうか('ω')

見知った人の影がちらりと見えた人もいたかもしれませんね。


さぁ、面白いと思ったら☆☆☆☆☆をくださいませ!

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆この位ください!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆ よし来たぁぁぁぁ!
[一言] ようやくここまで帰ってこれました(読み直し) ☆☆☆☆☆×∞ ☆1の6人パーティー…最強では?
[一言] その酒好きの聖女ちゃん、大丈夫かネ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ