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第十四話 バール、ジョブチェンジする

本日二回目の更新('ω')!

お楽しみいただければ幸いです

「なんだって?」

「はい、ですので……『冒険者信用度(スコア)』の加算に問題がありまして、達成報告を少し待っていただけないかと」


 冒険者で依頼品を納品した俺達だが、しばらく待てと言われたかと思うと、今度は『冒険者信用度(スコア)』加算を一時停止にされてしまった。

 ついでに言うと、報酬も受け取れないらしい。


「どうしてだ? こうしてルコラ草も森玉葱(フォレストオニオン)も納品したってのに」


 しかも、余剰分を追加納品までしている。

 それなのに、依頼達成とならないのはどういった訳だ。


「ええっとですね、逆なんです」

「逆?」

「『冒険者信用度(スコア)』加算は、ランクと成果に対して相対的な方法で行われるんです」


 難しい言葉を使われたら、学のない俺にはさっぱりわからない。

 普通に依頼達成分だけ『冒険者信用度(スコア)』を加算してくれればいいのだが。


「バールさんとロニさんの場合は受領された依頼に加えて、討伐依頼が出ていたDランク依頼の梟熊(アウルベア)討伐と、まだ不確定ですが緊急Aランク相当の硬鱗の蛇竜(ハードスケイルワーム)討伐までされているので……それを加味して『冒険者信用度(スコア)』を加算せねばならないのですが……」


 ミコットが依頼票をめくりながら、申し訳なさそうに頭を下げる。


「Fランクのバールさんとロニさんだと、『冒険者信用度(スコア)』が足りなくて、依頼の『後受け』という形も取ることができず……現在、その対応を上のものが決めているところです」


 多分、それを精査してるのが、あのメンディとかいう調査官だろう。

 面倒なことだ。


「『冒険者信用度(スコア)』がつかないと、達成にならないのか?」

「はい、申し訳ありません。そして依頼達成処理は『冒険者信用度(スコア)』加算にて完了するので、現状は達成とすることができないんです」


 どうしよう、俺の頭じゃミコットが何を言いたいのかよくわからない。

 ついでに狩った梟熊(アウルベア)が問題となるなら、黙っていた方がよかったか?

 ちらりとロニを見ると「帰ってから説明するね」と小声で言ってくれたので、とりあえずこの場は退散することにしよう。


「近日中に、『冒険者信用度(スコア)』をお付けしますので」

「わかった。よろしく頼むよ」


 ミコットに軽くうなずいて、一階の酒場へと下りる。

 日はすっかり落ちているが、酒場は魔法の灯りが焚かれて昼間の様に明るい。


「体調はどう? ごはん、食べられそう?」

「ああ、むしろ腹が減って仕方がない」


 まるで二、三日食べていないかのような空腹感だ。


「懐は温かいし、じゃんじゃん食おう」


 依頼の達成は保留にされてしまったが、梟熊(アウルベア)からとれた素材は買い取ってもらえた。

 おかげで今日は少しばかり余裕がある。


「もう、バールったら。心配してるんだよ?」

「心配ない。傷はロニが回復魔法で塞いでくれたし、後はたらふく食えば明日には元通りだ」

「それよりも、帰ったらお説教だからね?」

「げ……」


 ロニの説教は長いし怖いのだ。

 しかも、【司祭】のクセに妙に感情的なところがあって、迂闊に反論も出来ない。

 心の底からの反省を示すまで、延々と深夜まで続くことすらある。


「それより、『神眼鑑定』していい?」

「鑑定? 俺をか?」

「うん」


 【司祭】は希少な上級ジョブだ。

 その適性があるだけで、神殿のみならず、市井でも一定の地位が約束されるほどに貴重な人材でもある。

 当然、冒険者であれば、引く手あまたの人気ジョブ。

 何故かというと、その能力は多岐にわたって有用なものだからだ。


 【賢者】には劣るが『魔法』の能力に秀で、【僧侶】と同じく『ターンアンデッド』を使うことができ、何より【商人】や【学者】顔負けの『神眼鑑定』スキルを使うことができる。


 『神眼鑑定』は物にも使うことができれば、生物に使うこともできる。

 例えば、人に使えばその人間の適性ジョブや現在ジョブ、それにスキルを確認することもできる。

 冒険者ギルドに登録する際、適性ジョブを教えてくれるのはギルドに雇われた【司祭】である。

 俺もリードも、そうして冒険者となったのだ。


「別に構わないけど。ついこの間だって【戦士】の判定だったぜ?」


 Aランクにあがる時に、偽証がないか再度『鑑定』されたので間違いない。


「いいの! ……じゃあ、失礼して」


 身を乗り出して、ロニが俺の瞳を覗き込む。

 じっと見ていると、金色の瞳に吸い込まれそうだ。


「……バール」

「どうした?」

「そこの酒を、あおってから聞いてね?」


 ちょっと説教口調で怖いので、言われたまま今まさに運ばれてきた麦酒(エール)を一気に飲み干す。

 うまい……!

 濃くて強い、祝杯に相応しい良い麦酒(エール)だ。


「……飲んだ」

「じゃあ、心して聞いてね。……ジョブが変化してる」

「え」


 ──ジョブの適性変異。


 ごくごくまれに発生する、既存適性ジョブの変化。

 それは経験だったり、天啓だったり、特別な魔法道具(アーティファクト)の影響だったりするが、かなりイレギュラーで……俺達にとってはかなり危険なことだ。


 この世界において、『ジョブ』というものは、『働き方』を指すものではない。

 それは、『生き方』を指すものだ。


 かつて冒険者となる前、教会で最初の適性診断を受けた時、俺には【戦士】と【農夫】、それに【料理人】の適性ジョブが存在した。

 およそ、誰にでもこの位の数の適性があるものだ。


 そして、村を出てフィニスに到着し、冒険者になると決めた時……俺のジョブは【戦士】に定まった。俺がそう決意したために、『ジョブ』が定まったということだ。

 それに伴って『強靭』や『剛体』といった【戦士】のスキルが発現し、肉体は短期間で【戦士】に相応しい状態へと変化していき、今の俺が形作られる。

 この世界で成人の証とされるこの現象によって定まった『ジョブ』は、およそ、一生涯変わることがないとされる。


 そんな、重大なものを塗り替えるのが『ジョブの適性変異』だ。

 人の在り方そのものである『ジョブ』が変われば、当然、今までの様にはいかない。

 つまり、今の俺が【戦士】でないとすれば、冒険者としての生活に大きな支障をきたす可能性があるのだ。


 例えば、【農夫】や【料理人】が自分を【戦士】と勘違いして、魔物(モンスター)と真っ向から打ち合うなど、荒唐無稽で危険すぎる笑い話である。


「一体、何に変化してるんだ……?」


 意を決して、ロニに尋ねる。

 せっかく再出発したのに、ここで俺の冒険者生命が終わるかもしれないと思うと緊張を禁じ得ない。


「今のバールは──【狂戦士】だよ」

いかがでしたでしょうか('ω')

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