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8話 お姫様、ここはお花畑で……



 パーティが終わり、ルナちゃんに声をかける男性もすくなっていき、空いた時間にルナちゃんは大広間から直で行けて、城下町を見渡せるようなベランダへと1人で歩いていった。白い木の柵で囲まれた二階のベランダで星空のもとたたずむ赤いドレスを着た金髪の少女。

私はそれを追いかけて、ルナちゃんの元に駆け寄る。

私がベランダに通ずる扉を開けると、ルナちゃんはそれに気がついたのか私の方を振り向いた。

「リア、ちょっと疲れちゃって……」


 「しかたないよ、あれだけ多くの人としゃべったり、踊ったりしたんだから。ところで、ルナちゃん、明日お母様のお参りに行ってみない?」

ルナちゃんがすこし表情を曇らせた。ルナちゃんはお母さんを失った時の気持ちを思い出してしまうことを恐れているのか、一度もお墓に行ったことがない。

「なんで……」

「それはもちろん、ルナちゃんが女王になったことを告げるためです」

そういうと、ルナちゃんはしぶしぶ頷いた。


 そうして、夜が明けて朝となった。

私がいつも通りの仕事をしていると、もう当たり前のこととなったかのようにルナちゃんが私を呼ぶ声が聞こえてくる。

私は今日もまたルナちゃんの部屋へとかけていく。


 部屋につきドアを開けると、数日前のようにおねしょの布団に膝立ちし、ネグリジェを黄色く染めているといったルナちゃんの姿は見られなかった。

「ルナちゃん、おはようございます。今朝はおねしょしなかったのですね」

「リア…… 違うの」

ルナちゃんが涙ぐんだ目で私のことを上目遣いしながら見てきた。


 「実は、昨日のおむつをつけたまま寝ちゃって、それでそのおむつに……」

要するに、ルナちゃんはおむつにおねしょをしてしまい、それでいつもより恥ずかしがっているということだった。

「わかりました、じゃあおむつを替えましょうね」

私はベッドで座っていたルナちゃん、を再びベッドに寝かせて、ルナちゃんのネグリジェをたくし上げた。するとぷっくりと膨れたおむつがあらわとなり、私はそのサイドを破る。

一室におむつを破る音が響き渡る。私はそのままおむつを開いた。


 すると、むわっとした空気とともにルナちゃんのおしっこのにおいが感じられる。

私はおしりふきを持ってきてルナちゃんのお尻を入念にきれいにした。

そうして、私はルナちゃんに白のショーツをはかせて、おむつをくるりとまとめる。

おむつはまだかすかに暖かかった。

それから私はルナちゃんに純白のドレスを着せた。


 そうして私たちは前女王のお墓へと出発した。とはいってもお城のお庭の恥のほうにあるので徒歩で行けるのだ。

暖かくなってきた三月の空気を感じながら私たちは歩いた。

そうして徐々にそのお墓のある場所が見えてくる。


 今までの地面は緑の芝が広がる地面だったがお墓のある場所には周りが青で、内側が白といった配色の花が一面に咲き誇りお墓を囲んでいた。

一面の花畑の中心に堂々と立つのがルナちゃんのお母様のお墓である。

「ルナちゃん、ネモフィラがきれいに一面に咲いていますよ!」

ネモフィラが咲き誇るその花畑は遠くから見れば水色に見えている。

「うん……」


 ルナちゃんは少し元気がなさそうだった。

私はそんなルナちゃんの手を引っ張りお墓の前へと向かう。

ネモフィラの花畑に作られた一本の通路を通り歩いていった。

お墓の前にたどり着き、私はぽんとルナちゃんの背中をたたいた。

「お母様、わたし…… 女王になりました。まだ立派じゃないけど、お母様みたいになれるように頑張ります」


 ルナちゃんはとぎれとぎれながらそう言った。ルナちゃんの目にはすでに涙がたまっていた。

私はそこでポケットから一つの封筒を取り出す。

ネモフィラと同じように周りだけが青で染色されたその封筒には”ルナちゃんへ、ネモフィラがきれいに咲き誇る時期に読んでください。”と書いてあった。

私はこの手紙を前女王が死んでしまう前にもらい大切に保管していたのだ。


 「私…… この状況じゃ読めないから…… リア、読んで」

「わかりました」

私はそう言って封筒を開き、中から手紙を取り出して読んだ。

「ルナへ。ごめんね、あなたのお世話をあまりできなくて。私がいなくても元気にやっているかしら?」

そういった文章で最初は始まった。


 「ルナ、お漏らしや、おねしょは治るようになったかしら? そりゃあ、治らないわよね。だって私もそうだったもの」

おどろきの文章が書かれていて私もルナちゃんも驚いた。

後の内容からするに、ルナちゃんのお母さんもかなり遅くまで失敗をしていたがいつかはきっと直るから心配しないでほしいとのことだった。


 「ネモフィラの花言葉はね”どこでも成功”なの。だから今は失敗が続いていても最終的には成功で終わるんだからね」

その一文で手紙は終わった。

私の頬にもルナちゃんの頬にも涙の筋ができている。


 「ありがとう、ありがとう、ママ……」

ルナちゃんはお墓の前で涙を流していた。

それからしばらく時間がった。

風がそよぎ、ネモフィラの香りが私たちの花に届く。

「そろそろ、帰りましょう。ルナちゃん」

私が声をかけると、ルナちゃんは立ち上がった。しかしその様子が少し変だった。


 もじもじとした様子で、落ち着きがないルナちゃん。

「り、リア、おしっこしたい……」

「えっ、急いで戻りましょ!」

「う、ううん。もう我慢できないの……」


 そういうと、ぽたぽたという音が聞こえてくる。

ルナちゃんの白いドレスの裾からおしっこがしたたり落ち、ネモフィラ畑におしっこがかかっていく。そのまま水流は徐々に強くなり、ルナちゃんはネモフィラの花畑の上でお漏らしをしていた。

しかし、その顔はいつもより、辛そうではない。


 そうして、しばらくしてルナちゃんのお漏らしが終わった。あたりのネモフィラの上には少し黄色い水滴が残り、その水滴に光が当たり輝いていた。

「り、リア、お漏らししちゃった……」



「もう、ルナ姫様ったら。お姫様、ここはお花畑ではござい……」

その瞬間、ネモフィラ畑に風が吹きわたり、花弁がぱっと待った。

そんな中、お姫様はにっこりとほほ笑んだ。私はその微笑みに微笑みを返してこう言った。



「お姫様、ここはお花畑でございますね!」








ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!!

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