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4話 過去のこと

 私はルナちゃんが待っているであろう湯けむりの中へ足を進めた。ぼんやりとした視界の中、うっすらと灯りが見えるだけだ。

「リア! こっちこっち」

ルナちゃんが私を呼ぶ声が聞こえてくる。

私は声の聞こえるほうへと向かった。


 白い湯けむりの中ぼんやりとルナちゃんの姿が見えるようになってくる。

ようやくルナちゃんの姿が視認できるようになった私はお風呂に入り、ルナちゃんの元まで近づいた。

「ねえリア、ミランダが言ってた通り、私、おかしいよね。こんな年にもなっておねしょしてお漏らしするだなんて」

ルナちゃんが突然しょんぼりとした声でそう言った。

「大丈夫だよルナちゃん。ミランダさんはあれだけきつく言ってたけど、私だってたまに我慢できなくて下着をちょっと濡らしちゃったりしちゃうし……」


 言っていてなんだか照れくさくなった。

「ほんと!?」

急にルナちゃんが目を輝かせながら私の目をじっと見てきたせいか、余計に恥ずかしくなる。

「う、うん……」

私は思わず目をそらしてしまいながら、二つ返事を返した。

「それに、あれはもう少しちっちゃい時だけど、私が10歳の時にもしちゃったけどその時はルナちゃんが助けてくれたんだっけ。たしか……」

私は自分の失敗談を語るときの恥ずかしさが癖になってしまったのかもう一つのことを口にしてしまった。


ーーーーーーーーーーーーーーーー

 私が10歳になったとある寒い冬の日。10歳ともなり、メイドとしての仕事もうまくできるようになってきたため、私が行う仕事は去年よりも多くなった。

ミランダさんに言われたので私は今、お庭のお掃除をしている。頭上を見上げると空一面に鉛色の雲が広がっていて、昼間なのにもかかわらず、少し暗く感じる。

その上、雪がしんしんと降り、時にほうきをもつ私の手に留まり私の手を冷やす。


 寒さで反射的に体がぶるっと震えた。

「うぅ、寒いよぉ…… それにおトイレしたい……」

寒さのせいか、無性にトイレに行きたくなる。さっきまでは全然大丈夫だったのにもかかわらず、突然、内側から膀胱が刺激される。

私は思わず、ほうきを太ももの間に挟んで、おしっこの出口を圧迫しようとした。


 少し変な感覚だが、少しは我慢が楽になった。でもその効果もあまり長くは続かず、私は太ももをきゅっとよじりながら、急いで掃除を終わらせて、片手でおしっこの出口をふさいだ。

私はそんないかにもおしっこを我慢しているようなポーズを取りながら、お城の中に戻り、トイレへと向かう。

お城に入ってすぐの廊下を進んで、次を左に曲がれば……

そうして、私が角を左に曲がると、そこにはミランダさんがいた。私はおしっこをあんな風にはしたなく我慢していては怒られてしまうと思い、とっさに両手を鼠径部から離し、ほうきに当てた。


 「あら、アリア。お庭の掃除終わったのね。ありがとう。じゃあ次はお城の中の窓ふき頼めるかしら?」

私はひどく太ももをきゅっとよじりながらミランダさんの話を聞いた。

「あ、あっ……」

私は”おトイレ行ってからでもいいですか”とその一言も、”はい”の一言も口を開けばおしっこの出口も開かれてしまいそうで何も言えなかった。


 「アリア、どうしたの?」

「あ、その…… も、もうだめですっ……」

そう言ったとたん、私の下腹部がかっと熱くなり、よじった太ももにぬれた感触が伝わる。

さっきまで外で冷やされていたせいか、おしっこの熱が余計に厚く感じられる。

その熱はショーツと股間の間で渦巻き、太ももを濡らし、白くて膝ぐらいまであるようなソックスをレモン色に染めていく。

気が付けば、スカートにもおしっこは吸収されていて、ぬれた部分が濃い色に変わっていた。


 「何やってるんですか! アリア!」

ミランダさんの叱責が私の耳に届く。

「ひっぐっ、ごめんなさい…… おしっこ我慢できませんでした…… 外が寒くて……」

怒られた瞬間私はお漏らししてしまったことが悲しくなり、また、申し訳なくなり、私はしゃくりなきながら謝った。


 しかし、その間にもおしっこは止まることなく、私の靴にもたまっていく。

すると廊下の奥からルナちゃんがこっちへ歩いてきた。だめ、こんな姿ルナちゃんに見られたくない……

ルナちゃんはうつむいていてまだ気が付いていないようだったが、ひたすら続く、私の泣き声と、ミランダさんの私を叱る声に反応したのか顔を上げて私のほうを見た。

それと同時に、私たちのもとへとルナちゃんが駆け付ける。

その間にも私のお漏らしは続き、カーペットを濡らしていく。そして、ルナちゃんが私のところまで来た時にはようやくおしっこもおさまっていった。


 「アリア! 何歳になるんですか。メイドがお城で粗相だなんて全くですよ!」

「ひっぐ、ひっぐ……」

私はただ子供のように泣くことしかできなかった。

罪悪感、羞恥心、そんな感情が私の中を渦巻いている。

「ミランダ、リアをこれ以上怒らないで上げてほしいの。だって今日は寒かったんだし、10歳にもなってやることが増えたんだから仕方ないじゃない。ね、私からのお願いだから」

ルナちゃんが、ミランダさんのことを見上げながら、そう言ってくれていた。

私は前々から、ルナちゃんのことが好きだったけど、今のでもっと好きになれた気がした。


 「ルナ様がそこまで仰られるなら…… アリア、すみません。少し怒りすぎてしまいましたね。カーペットは私が掃除しておくので早く、お風呂に入ってきなさい」

穏やかな声でミランダさんがそう言うと、ルナちゃんは私の手を引っ張り、私をお風呂まで連れて行ってくれた。気が付くと私の涙はすっと止んでいた。

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 「あの時は本当にありがとね。ルナちゃんがいないと私たぶんずっと泣いてた。あれからね、私、ルナちゃんがお漏らししちゃったら、その時には絶対に助けてあげようって思ったの」

「ありがとう、リア……」

それから私たちは手をつないでお風呂場を後にした。

 

 




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