おっさん生徒会長は企む!
生徒会長
それは、最も可能性を秘めたキャラクター属性である。
主人公やメインヒロイン。お助けキャラにお邪魔虫に当て馬。更には事件の黒幕やラスボス級の敵にもなれば、時にその他大勢の端役にもなりうる。その様はまさに七変化といっても過言ではないだろう。
そんな生徒会長というものに憧れたのは小学生のある日のこと。メインのキャラではなかったものの、主人公を影ながら手助けするその姿は、幼い俺の心をがっしりと鷲掴みにしたのだった。
「そして今年!私の念願が叶うときが来たぁ!」
季節は春。新たに我が校の生徒となる新入生への挨拶を終えた私は、生徒会室へと戻って早々に生徒会長専用椅子の上に立ち上がって呵々大笑していた。
「おっさん会長、うるさいですよ」
「副会長。私が30歳のおっさんであるとはいえ、そうストレートに言うものではないよ? 社会に出てからやっていけないぞ?」
「そうですか。あなたが社会に出たことがあるとは驚きです。椅子の上に立って大笑いしている人の台詞とは思えませんね」
「正論!」
鋭い眼光に、年と共に気になりだしたお腹を射抜かれたような気がして冷や汗をかく。ただ事実ではあるため自省して椅子に腰を落ち着けると、思わず息を吐いた。年は取りたくないものである。
「それで?念願とは何ですか?新入生に向けた生徒会長挨拶で、『うわっ、おっさんかよ』という好奇の目を向けられた会長」
「副会長。事実だけど、的確に私の心をえぐり取っていくのやめてくれないかな?」
座ってるはずなのにがくついている脚を手で必死に止めていると、早く言えと言わんばかりの目で睨まれた。
「彼だよ、彼。古河勇君!彼、幼馴染の美少女がいるのに加えて、今朝の登校中にまた別の美少女とも運命的な出会いをしたそうじゃないか!まさに主人公の如し!逸材さぁ!」
「……もしもし、警察ですか?」
「そのスマホを降ろそうか、副会長」
かけてはいけないところへと電話をかける副会長を止めて、話を続ける。
「私はだね、主人公の如き彼の恋愛を手助けしたいのさ!それこそが生徒会長!伊達におっさんになって高校入ってないよ!」
「クソしょーもないですね」
「言い方ぁ!?」
俺の嘆くような声に、でもまぁ、と副会長は続けた。
「それがあなたらしいのでしょう」
「……ありがとうね。それじゃぁ!まずは手始めに、周囲の不良どもを焚きつけて強制イベントでも……」
「もしもし警察ですか」
「本気のトーン!?」