表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
9/11

9話


 マレイアに色々なことを聞いている頃、基地に護衛艦「くにさき」と「かが」が来ていた。「おおすみ」と交代で来ている。様々な資材や建設機械、農業用の機械を日本から運んできたのである。かがは空母に改造されているため、あまり輸送向きではないが、少しでも多く持っていくため、F-35Bをほとんどおろして荷物を積んでいた。


 ひとまず、この周辺を開拓し、農地をつくる。この周辺には資源はないようなので、一番必要な農地にしてしまおうということである。


 今、日本では食糧廃棄禁止法、通称残飯禁止法が施行されており、想像以上に厳しい状態になっている。これでは来年までもたない。


 現在栽培が決定しているのは、成育が比較的早く、冬くらいには収穫ができる、じゃがいも、ニンジン、キャベツ、ダイコン等の野菜、そしてとうもろこし。とうもろこしは成育期間が85日程度と短く、世界三大穀物のひとつであるためだ。米は時間のかかる作物なので除外する。小麦は北海道で秋蒔きが主流であるため、もう少し待ってから開始することになった。これは気温があまり変わらなかったからできる芸当である。ただし、今がどの季節なのか不明であるため、細心の注意を払って栽培を進めることになった。


 ただし、日本ではあまりない大規模な農地となるため、アメリカのような大型機械を用いることになった。しかし、肝心の大型機械は日本ではほとんど使われていなかったため、中古業者が確保していた輸入ものや、Kubota、ヤンマー、ヰセキなどの車両を購入している。


 なお、地軸は傾いていることは確認された。昼夜の長さが違うためだ。この一ヶ月で少しずつ昼の長さが短くなっているため、おそらく季節もある。


 さて、現在日本国内の食糧生産量は、国の大規模屋内生産推進政策によりある程度回復しているが、依然として輸入の割合が高い。日本が輸入していた食糧を生産するためには、単純計算で500万ヘクタールの農地が必要だ。500万ヘクタールと言えば、5万平方キロメートル。だいたい中国・四国地方の広さ位の土地である。


 そんな広さの土地が日本国内にあるわけもなく、所有者不明の土地を国や自治体が以前は出来なかった強制回収をしているものの、あと150万平方キロメートルあるかどうかである。もちろん、状況が落ち着いて持ち主が返還を要求した場合は、それまでの使用料などを払う。要求がなければ、そのまま国有地として管理、もしくは売却を行う予定だ。


 すべての農地や施設の管理・運営は国が主体となって設立した国有企業「新陸地農業開発公社」が行うため、国が巨大農業会社のようなものである。


 もちろん、こういう状況でもメディアからは突き上げを受けているが、無視している。いちいち付き合っている余裕はないし、逆に「いま、そんなことはどうでもいい」とメディアが批判される事態になっている。今日本中が求めているのは、批判ではなく、政府がこの状況をどう乗りきるか、その一点なのだから。



「まさかLCACで重機や農業用機械を輸送することになるとはな」

「まあ、港がないですから、仕方ないですね。コンクリートなんかも日本から持ってくるそうです。中継地は物が集まりすぎてすごいことになっているようですよ」

「港は時間がかかりそうだな」

「一応しばらくはポンツーンを使うそうです。国内の大きなやつを持ってくるみたいですよ」

「浮き桟橋か。まあ、今よりはマシになりそうだな」

「はい。直接下ろせますからね」


 現在、新基地への物資輸送は、護衛艦からのヘリコプターやオスプレイによるピストン輸送、またはLCACによる海上輸送である。

 

 しかしそれでは効率が悪いし、一度に大量の荷物を運べない。というわけで、国内ですでにしようされているポンツーンを買収、新基地へと持ってこようという計画が動いている。ただ、大型船の発着が可能なポンツーンは少なく、一番楽なのが呉からFバースを持ってくることだ。しかし、Fバースは今ちょうど使用しており、難しい。


 転移してから約一ヶ月。製造業は壊滅的な状態なので、新規に建造するのは困難だった。

 

 もちろん、港の建設は始まっている。とりあえず、2~3隻くらいの大型船舶が利用できる港の建設が進んでいる。最初から大きいものをつくっても、時間がかかるためだ。


 現在は土台である捨て石の投入が終わり、ガット船などを使って平らにしている。基地の場所から少し離れているが、半島の影になっており、海流の影響が少ないため防波堤は無しになった。


 日本国内ではすでに港へ据え付けるガントリークレーンの建造が行われている。もっとも、すでにあったものを流用しており、それほど手間はかからない。ただし、新陸地には電気がないので、大型のディーゼル発電機を新たに追加している。もうあまり使われていない方式だ。



 こうして、日本は新たな世界で生きるすべを整えていった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ