8話
とりあえず、災害による避難民という名目でマレイアたちを保護することとなった。
しかし、現在の日本では色々なものが不足しているため、マレイアたちにもなにか知っていることはないか聞くことになった。
「こんにちは。ここでのあなたたちの担当になった自衛隊の情報担当官、山下 栞といいます。基本的には私があなたたちのことをお世話することになるから、何かあったらいつでも言って下さいね」
「はい。よろしくお願いします」
「私も引き続き医官として担当します」
「ありがとうございます、守山さん」
この世界での重要な情報源。早速マレイアたちの村について、聞くことにする。
「あなたの村は、どんな生活をしていたの?」
「基本的には狩猟と農業です」
「狩猟···。どんな狩りをしていたの?」
「単純なものから罠まで色々です」
「狩りの道具はどんなものを使っていたの?」
狩りの道具。地球では木製から金属製まであった。おそらく町から遠いマレイアたちの村で金属製品が使われているのならば、鉱山が近くに···。
「ええと、私は狩りには出ていないので詳しくは知らないのですが、金属製の矢とか、武器を使っていました」
「金属製の武器!」
「は、はい」
マレイアが突然の大声にビックリしている。その前で栞と朱美は顔を見合わせる。
「それから、私たちの村はその役目から自分達で銅や鉄の武器を作っていました」
「銅と鉄ですか!村の近くでとれていたんですか?」
「いえ、村から半日くらいのところから馬車で運んで、村で武器や農具を作っていました。少し前には300人位の人がいたので、その中で鍛冶を役目としている一族がいました」
「わざわざ村で?」
「はい。森のなかなので、魔物が出るんです」
「魔物、ですか?」
「はい。魔物です」
なるほど、だからわざわざ村まで運んで武器を···。
魔物···ファンタジーなどで出てくる魔物だろうか。私は詳しくないけど、今度誰か詳しい人に聞いてみようかしら。
栞は知り合いに詳しそうな人がいないか考えてみるが、いくら考えてもいない。部内で聞いてみるしかない。
「もしかして、魔物を知らないんですか?」
「え、ええ。どんなものか教えてくれると助かるわ」
「少し長くなりますが···」
「時間は問題ないわ。詳しく教えてもらえる?」
この世界での魔物は、魔法的な攻撃をしてくる厄介な生物である。詳しい生体などはまだよくわかっておらず、この世界の国は、国内の魔物を討伐することで魔物の魔物たるゆえんである『魔石』を得る。それを生活に利用しているため、魔物は「生きる鉱山」等と言われている。ただ、魔物は大きな洞窟や深い森などに多く、その多い地域のことを広義にダンジョンと呼称する。
一部の学者が魔物は通常の生物が特殊進化したものという説を発表しているが、立証されておらず、この世界の謎のひとつとされている。
「その···魔石?どうやって使うのかしら?」
「色々ありますけど、魔法の増幅だったり、触媒に使ったりします」
「魔法を増幅するの?」
「はい。精錬すればもっと強い効果があります」
「なるほど···」
つまり、この世界でのエネルギー源ということね。これはかなり重要な情報。化石燃料の存在はまだ確認できないけれど、もしかしたら利用できるかもしれないわ。
「では、次にあなたたちを襲った人たちについて教えてもらえるかしら」
「はい」
「襲った人たちはどこから来たのか、わかる範囲で教えてもらえるかしら」
「あの人たちは間違いなくラシュテルト王国の兵士でした。騎竜に乗っていたので、どこかの貴族の騎士団だと思います」
さらに貴族···。宗教と貴族が関わるとさらに面倒なことになりそうね。戦闘になるのは困るから、基本的には不干渉がいいわね。
「私たちの村はどの国にも属していないのですが、北東にあるリーベッタ連合国と友好な関係を結んでいます。複数の種族が住んでいる多民族国家です。私たちを襲ったラシュテルト王国は、唯一教を信仰していますから、あまり仲は良くありません」
「リーベッタ連合国はどんな国なの?」
「リーベッタ連合国は、50年前くらいに唯一教に対抗する東方諸国が集まってできた国です。あらゆる種族に開かれた国と言われています」
「いい国みたいね」
「はい。亜人であっても実力があれば認められるみたいですから」
「···え、亜人?」
「はい。だからすごい種類の亜人がいるらしいですよ」
いや、そう言うことを言ってるんじゃなくて。亜人て何よ。