6話
「昨日発見した鉱床は、ボーキサイトであることが確認できました。アルミニウムですね」
「そうか!アルミなどは国内で回収してもう一度精錬すればある程度は持ちそうだったが、よかった」
「露出している鉱床は、横3キロ、縦4キロほどです。これがほんの一部であると考えられるので、埋蔵量は相当なものでしょう」
ボーキサイト鉱床の発見が、日本政府に伝えられると、政府首脳陣は大喜び。
これを受けて、まだ調査段階ではあるが、ある程度の規模の拠点設営を決定した。
アルミニウムは日本では産出せず、つくるのにも再精錬するのにも莫大なコストがかかるが、そんなことはどうでもよかった。
ひとまず、この世界に地球と同じ形で物質が存在しているということがわかっただけでも、大きな収穫なのだから。
「専門家の話では、アルミニウムは熱帯に多いということです。現在までにわかっている地形からすると、この森林一帯は、楯状地か安定陸塊。そのため、鉄やウラン、その他レアメタルも産出される可能性があるそうです」
現在、日本に備蓄があるのは、あくまでレアメタル類。鉄や銅、アルミニウムなどのベースメタルは備蓄と言える備蓄はない。そのため、今の日本ではある意味レアメタルより貴重である。
「ひとまず、今後は鉱床周辺を調査しつつ、まだ詳細な行っていない西の方を詳細に調査します」
「そうだな。それがいいだろう」
「この森林は農作物の生産にはあまり向いていない部分が多いようですが、鉱産資源には恵まれていそうですから、今後は資源調査を強化しましょう」
これで、アルミニウムはなんとか確保できるようになったため、他の資源、特に石油などを見つける必要がある。しかし、石油は湧き出していないと見つけるのに数年かかる。湧き出してさえいれば、1年程度で生産ができるようになるのだ。
「山脈が森林を囲うようにあります。あれが新期造山帯ならば石油が期待できるのですが」
地質調査を詳しく行わないと、新期造山帯かどうかは分からない。遠くから見ても、火山活動などが起こっている雰囲気でもないからだ。
「まあ、新期造山帯でなくとも、石炭などがある。だが掘るのが大変だな」
そんな話をしていると、前方の部隊から通信が入った。
『こちら第3警戒部隊、作戦本部聞こえるか』
『こちら作戦本部、どうした』
『傷だらけの原住民らしき姿を確認、現在距離をとって監視中』
『何、原住民だと!?数は!』
『女子供ばかり5人のようです。拠点の方へと向かっているようですが、どうしますか』
『···さすがに排除するわけにはいかん、仕方がない。接触を試みてくれ』
『わかりました。接触を試みます』
本部への通信を行った警戒班のうち、半数がそのやり取りがあったあと、通信を切らずに、立ち上がった。
『誰!?』
いきなり自衛隊員が出てきて、子どもを後ろに隠す。母親なのであろう。腰のナイフを抜き、こちらへ向けてくる。
「待ってくれ、我々はあなたたちと敵対するつもりはないんだ···って、ちょっと待てよ、言葉通じないよな。どうすりゃいいんだ」
「『その言葉は、北の王国の言葉かしら···』あなたたちは誰!何のよう!?」
「言葉通じるみたいだな。よかった。我々は日本からこの陸地の調査に来たんだ。敵対するつもりはない」
そう隊長が言うと、ナイフを少し下げる。まだ警戒しているようだ。
「どうやらひどい怪我をしているようだが、何があったんだ?」
「···唯一教の奴らにやられたのよ。集落ごと」
「ゆ、唯一教?なんだそれ」
「あなたたち、唯一教を知らないの?」
「あ、ああ。知らない」
「いったいどこの大陸から来たのよ。唯一教を知らないなんて」
「まあ、唯一教?はいい。君たちの怪我を治療しよう。放っておくと傷が化膿してしまう」
「魔術師がいるの?」
「え、魔術師!?魔術師なんていないですよ」
「なによ、期待させないでよ!」
結局、その後も説得に時間がかかったため、拠点からヘリを呼んで拠点の病院へと運んだ。
怪我は問題なく、そのまま眠っていたため、詳しいことは次の日に聞くことになった。