5話
蜥蜴モドキが現れた翌日。現場にいってみると、蜥蜴モドキはどこかへいっていた。なので、設置した3つのカメラを回収する。
「蜥蜴、どこか行ったな。草の倒れかたからすると、北の方に行った見たいだな」
「あれなんだったんでしょうね」
カメラを回収して、拠点に戻る。隊員たちは銃器の返還を行う。隊長は本部へと報告を行う。
「報告します!昨日の蜥蜴モドキは北の方に行ったと思われます。しかし、道がわかりづらく、追跡は難しいと思われます」
「いなくなったのか」
「はい。あんなところで何をしていたのかはわかりませんでしたが」
「なら放置ってことで。今は蜥蜴に構っている暇はない。今まで通り周辺警戒に戻ってくれ」
「了解!」
隊長が去っていくと、ふぅ、とため息をつく。
「蜥蜴モドキが出たと報告を受けたときは異世界生物の洗礼かと思ったが、特に何事もなく終わってよかったな」
いま、拠点にいる部隊の上層部はピリピリしていた。防衛省及び日本政府から、資源はないか、食料はないかと毎日せっつかれているのだ。
その上さらに得体の知れない蜥蜴モドキが現れたのだ。しかもずいぶん大きなものが、である。報告では10m以上の大きさがあったという。
···もしかするとその蜥蜴モドキも食用となったかもしれないが、少し気が引ける。
「蜥蜴モドキってもしかするとドラゴンとかだったりしませんかね。ラノベで出てくるやつは森の守護者だったりダンジョンのボスだったりしますけど」
「ドラゴンだったらそれこそ洒落にならんな」
ハハハ···と乾いた笑いが出る。
しかし、とりあえず調査の支障はないようなので、特に対処はせず放置することとしたのであった。
新陸地 大森林上空
「うーんとくに変わったものはないな」
「そう簡単に見つからないですよ。鉄かアルミならある程度簡単に見つかりそうですけど」
「そりゃまたどうして?」
「鉄とかアルミの鉱床が地表に出てきてたら、植物が生えないんですよ。栄養がないから」
上空からの調査を行っているのは、航続距離の長いOP-3C。画像データ収集のためにP―3Cから改造された機体であった。岩国基地からはるばる調査に来ていたのだ。ついでに、地図の作成も行っている。
海では、海上保安庁と海上自衛隊が海底調査を行っており、安全な航路探しをしている。
「今日でもう半月だからさすがに疲れたな。一向に資源も見つからないし」
「そもそも空からじゃあ石油なんかは無理だろう」
「そうだ···ん?おい、MADに反応!金属だ!」
「ようやく見つかったか。範囲は?」
「まだ全部は映ってない。だが範囲は大きいぞ!」
「方位は?」
「0―3―0」
「よし、そちらへ向かう」
OP―3Cは、北の山脈、現地でヴァノーニ山脈へ機首を向けた。
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「さて、あと少しで異端者達の住む集落に着く。我々は1500。余裕ですね」
「ふん、戦争状態にあるのだ。問題ないだろ」
「まあ我々は任務をこなすだけだ。戦闘後はいつもと同じで構わん」
「若様は話がわかりますねぇ!」
ゲラゲラと下卑た笑い声をあげる若い男たち。
···そもそも我が国に兵たちに与える報奨などほとんどないのだ。ならば異端者どもから奪うしかあるまい。
火の粉が夜空に舞い、虫たちが鳴くなか、夜は更けていく。
明日、同じような炎が村を焼く。その事を、まだ村の人々は知らない。