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青春の後悔  作者: イトユウ
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男は自転車のペダルを何を考えるわけでもなく、一心不乱に漕いでいた。


男の頭の中には靄がかかっており、少しでも気を抜いてしまえば、その靄が薄くなり、中が見えてしまいそうで不安になる。


男が走っているのは河川敷の自転車専用道で、十キロ近く一本道が続いている。そのため、自転車愛好家達の中では絶好のサイクリングスポットになっている。


しかし、今走っているのはその男一人のみ。


それもそのはず、時刻は夜中の二時で、併設して通っている歩行者専用道にも、お酒に酔った数人がいるだけで、辺りは街灯の小さな灯りだけである。


何キロ走ったか、男が息を切らして漕ぐのを辞めようとした時、前方に数多くの小さな光が動き回っているのが見えた。


男はお酒に酔った数人が懐中電灯を持って動き回っているのだろうと思い、絡まれないため、今来た道を戻り始めた。


この数キロで男の頭も少しは安らぎ、靄が薄れ始めても平然としていた。


そのため、戻りは疲れない程度に辺りの空気を味わいながらゆっくりと自転車のペダルを漕いだ。


しかし、頭の中の靄がほとんど無くなり、一人の女性の顔が見えてくると心がざわついた。その女性は男の方を見て微笑んでいた。


自転車を全力で漕ぐ体力もあまり残っていなかった男は、先程の複数の光のことを考え始めた。


果たして、 ただの酔っぱらいだったのか、何か実験でもしていたのか、何かの宗教か。結論が出るわけもなく、女性の顔も頭の中にちらつかせながらサイクリングを続けるのであった。




その光の正体は意外な形で判明することとなった。


朝起きると、家の前を何台もの警察車両が通りすぎていった。頭上の時計を見ると六時半をさしていた。昨夜、ベッドに入ったのが四時頃だったので三時間も寝ておらず、男の体は鉛のように重く感じられた。


眠気眼の頭で警察車両と昨日の河川敷での謎の複数の光を結びつけてしまい、気になった男は顔を軽く洗い、寝巻き用のスウェットの上にウインドブレーカーという軽装で、河川敷に様子を見に行った。


男の家は河川敷沿いにあり、男はとりあえず河川敷に出ることにした。


どうやら警察車両は男の家と河川敷の間のあまり広くない道を走っていたようで、数キロ先と思われる所に警察車両のパトランプがかろうじて見えていた。


そしてそれは、昨夜の複数の光が動いていた辺りであった。


恐くなった男は現場には行かず、スマホで調べることにした。すると、その情報はすぐに見つかった。


どうやら、六人が一斉に同様の薬を飲み死に至ったらしい。集団自殺が濃厚だが、念のため他殺の可能性も残しているということであった。

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