第三話 古びた城のある小さな町へ(2)
「トイラスいい?この呪いは四人の賢者が作った複雑で、強力な呪いなの、でねこれは、私たちのご先祖様が犯してきた罪なのよ、だから、私たちがこれは解かなきゃいけないのよ。
まだ私が何を言っているかわからないと思うけど、じきにわかるようになるからそれまで覚えておいてね」
頭に響く声、懐かしいこの声、聴いたことがある声。
「だから私たちが死んでも力はあなたに受け継がれるのよ、だから絶対にあなたのその能力とこの力で、絶対にその呪いは解かなきゃだめよ」
だれだっけな。この声は、小さい頃の記憶によく聞いた覚えがある。
「あなたなら大丈夫よ、絶対にできるわ。でもごめんねこんなつらい人生にしてしまって。
だけどあなたにしかもう救えないのよあの呪いを受けた子、王女さまを救うには」
だんだんと声が薄れていく、
「――ち、お―じょ、――ルツさまを、――くうには」
やがて聞こえなくなり……。
あたたかな布団の中で、目が覚めた。
「んっっ。……あれは夢だったのか?」
あの声や話はよく分からなかったが、とりあえず、着替え、散歩に行く。
***
町の大通りを歩く、トイラスは朝食をとっていないことに気づき、宿屋から少し歩いたところにある食堂で朝食をとっていた。
「このパンうまいな」
トイラスが予想以上においしかった少し小さめの丸いパンを頬張りながら、言う。
トイラスは食堂の入り口近くに座っていたが、ちょうど左隣にいた、ガタイのいいお爺さんが話しかけてくる。
「おいしいだろう」と自慢げに懐かしむようにお爺さんが言い、続けて言う。
「あんたは旅のもんかね?」
えぇと頷く。
「そうか、そうか、ならここのことはなおさら知らんだろう」
「ええまあ、確かに全然知りませんが」
「なら、わしが教えてやろう」
この町のことは実際何も知らなかったので、一応聞いてみた。
「あんた森にある城は知っているかい」
「一応知っています、一回見にも行きました」
なぜか驚き、お爺さんは続ける、
「あの城はな、昔ここら辺一帯を治めていた王国のもんなんじゃよ。でな今から大体百五十年ぐらいかのう、前に王国は滅んだんじゃよ、その王国はな、あまり評判は良くなかったんじゃよ、なんでも王族が悪さをしていたとかな、で滅んだ後、城だけが残ったんじゃが、壊すにも費用が掛かるといって今の王国はそのままにしてるんじゃと」
ゆっくりと長くお爺さんは話してくれた。
『あっ』と思い出すようにお爺さんが付け足した。
「それとな、あそこには王女様が住んでいるらしいんじゃが、……」
お爺さんは言い淀んでしまった、
「どうしたんですか?」
気になったので素直に聞くと
「能力がなあ、なんでも危ないらしいんじゃよ。」
お爺さんは顔を曇らせながら言う。
「危ない?」
トイラスの言葉に頷くように、お爺さんは言った。
「噂の範囲なんじゃが、人を消すとか、な。」
それ以上言うと、ゆっくり立ち上がって食堂から姿を消してしまった。
「お姫様か……、今、王女様は、って何番目の王女様だ?」
第一王女様は確か王宮にいるはずだから、第二王女?
でも聞いたことないな、第一王女様は確か今十三歳ぐらいじゃなかったけか。
そうするともっと低いのか?
と考えていると、さっきのお爺さんの話を周りの人も聞いていたのか、何やら話している。
自分の疑問が晴れなかったので、思い切って、一番近くにいた少しふくよかで優しそうな、
男の人に聞いてみた。
「王女様って、そんなにいましたっけ」
自分に投げかけられていると気づいた男は、言葉を返す。
「記憶の間違いじゃなきゃあ、第一王女様しか聞いたことがないな」
「じゃあ、城に住んでいるのは誰なんだ?」
「兄ちゃん、そこらへんにしときな、深く突っ込んでも、何もないよ」
とふくよかな男はそう言って、テーブルの上にあったパンを取り食べ始めた。
疑問は取れなかったが、まあいいか、確かに言われた通り、そこまで気にすることではないな。
トイラスも自分のパンを食べ終え、食堂を後にする。
***
することがなく時間を持て余していたので、例の城のある森まで来てしまった。
まあ別に悪いことをするわけでもないし問題は全く持ってないのだが。
そういえば、食堂でお爺さんは、この町の話がしたかったのか? それともパンの話をしたかったのか? どっちだったんだ? まあいいか。
細い小道をしばらく進むと見えてきた、例の旧王国の城だ。
道の横にそびえたっている、真正面から見ると、やはり屋敷のように見え、屋根の近くにある窓が特徴的な城だ。
噂の王女は、いないのだろうかと、敷地には、入れないのであちこちから見てみるが、全く持って人がいる気配がない。
王女が住んでいるのなら、使用人の一人や二人、兵士だっていてもいいはずなんだがな。
まあ王女がいないなら、いなくて当然なんだが。
することはないが、そろそろ帰ろうか、と思いもう一度見て城に踵を返しかけた時、ふと真ん中の窓に人影が見えた気がした。気のせいだろうか、あまり気にせずに町に帰った。
***
『能力』というものがこの世には存在する、そう生まれてから自分に宿るもの。
『能力』というものは約百年前から人に発現するようになったらしい、まだ比較的新しい時期にこの世には異変が起きたのだ。
なぜ存在するようになったのか、どうやって発現するようになったのかは、わかっていない、しかし俺はそんなことはどうでもよかった、この能力のせいで平穏な生活は遅れないからだ。
『能力』は多種多様で、基本的には人それぞれ違う、でもやはり常に普遍的なものだけが発現するわけではない、俺がいい例だ。
俺は、自分が認知しているすべての能力を封じることができる、能力の概要はこうだ。
基本的には能力を持つ者は人であるから、人が出す音、視界に入っているのならその者の能力は封じれる。
また便利なことに自分でそれをオンとオフで切り替えられるのだ。しかし昔は、そうはいかなかった。
読んでくださりありがとうございます。
まだ全然稚拙でまとまってない文章かもしれませんが、精進して頑張ります。
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次話はしばらく後になるかもしれません。