第89話 キャットファイト 上
「70歳、戦死でした。剣を持って戦って死ねたんです。あの人も本望だったそうです」
サーリアが地面に刺さった剣を見ながらそう言った。
「ん? だったそう? でしょうじゃなくて?」
「ええ、戦死した後に会いに行ったらそう言ってましたから」
「えっと人間って死んだらどうなるんだ?」
「そのまま朽ちて土になるよ。つまり何も残らない。まあ、強い意志や魔力を持った人が死ぬとたまーにエネルギーの間塊となって残ることがあるけど自然に消滅したり幽霊として討伐されたりしてるけどね」
「じゃあどうして死んだ人に会えたんだ?」
「え? レオは1回しか死んでませんよ」
サーリアが訳のわからないことを言う。
全くこの不思議ちゃんは何を言い出すんだか、と思っているレンが当たり前すぎることを言う。
「人間死んだら生き返らないんだよ」
生き返っているあんたがそれを言うか?
とは思うがこいつは例外なのでスルーしよう。
そして、どうやら例外はこいつだけではないみたいだ。
「残念だが何にも例外というものがある。例えばこの私とかな」
そいう言ったのは崖のしたから登ってきた1人の歳をとった男だった。
「誰?」
「ああああああああああああああああああああ」
雄叫びを上げながらその男へと突進して行ったのはメタトロンだ。
サリアについでで連れてこられて挙句の果てに皆から空気扱いをされていたメタトロンがその男へと頭突きを食らわす。
が、すんでのところでサーリアからの全力の蹴りを食らって崖下へと落ちていく。
「レ……クリ……ン様ああああああ───」
何かを叫んでいたのかもしれないが風のせいでよく聞こえなかった。
「えーと、では改めて」
サーリアが男を片手で指す。
「こちらがレ──」
「なるほど、この人がレオ・クリムゾンですか」
マインがサーリアの言葉を遮って先に答えを言ってしまった。
ブチンッ
という音がしてレンたちがサーリアの方を向くとブチ切れていた。
「何なんですか! 私がレオの名前を言おうとしているのに邪魔なんかして、殺されたいんですか!」
マインも負けじと言い返す。
「殺せるもんなら殺してみてください! 人斬りを簡単に殺せると思ってるのですか!」
「大体あなたは最初っから気に食わなかったんですよ。口調が似てて主武器が剣、それに体型も似たようなものだし」
「年齢が違いますよ。年齢が! 確実に1億歳以上離れているでしょうがこのババア!」
「もっと年上を敬いなさい、このガキ!」
いきなりのキャットファイトが始まった。
2人が言っているように、サーリアとマインには共通点が多い。女性で、主武器が剣で、ですます口調で、彼氏有りで、貧乳。
すなわち、
「あなたとはキャラが被っているんですよ」
ということである。
「キャラが被っているのも今のうちだけですよ。私はまだ若くて成長しますけどババアは一生貧乳ですからね!」
おおっとこれはさすがの姉様でも堪えるか!?
っとサリアがウキウキしながらサーリアの方を向くが、サーリアは両耳を手で抑えて目をつぶりながら
「あーあーあー、何も聞こえませんねー」
と、小学生みたいなことをしていたのを見て
「HAHAHAHAHAHAHAHAHA」
いつもと違う笑い声を上げながら笑い転げていた。
「この距離で聞こえないなんて相当耳が悪いんですね。切り落として上げましょうか?」
「HAHAHA」
「ガキに負けるほど弱くないですよ」
「HAHAHA」
「というか」
「さっきからうるさいですよ、サリア!」「さっきからゲラゲラと、少し黙ってください、魔神!」
大笑いしていたサリアは2匹のキャットに猫キックを食らってメタトロン同じく崖下へと転がって行った。
「あーもう、拉致が飽きませんね」
「やはり殺し合いをした方が早く決着が付きそうですね」
サーリアが剣神らしく? 殺し合いで決着を付ける方法を提案した。
もちろんマインにとっても1番の解決法なので頷いて了承するのだが、殺し合う前にやらなければならないことがある。
「さっきから何処へ行こうとしているんですか、レン様?」
「何故逃げようとしているのですか、レオ?」
自分にとって一番大事な観客の確保である。
レン、レオの2人はマインとサーリアがキレ始めたのを見て抜き足差し足忍び足で逃げようとしていた。
この時になぜレンが収納の中に逃げるという選択肢を思いつかなかったのかは謎である。
真波(nisikawa)さんとコラボ作品を作りました。
魔王勇者の無双の旅からはライト(新キャラ)とエリザベス(新キャラ)、日本戦闘type1からは川西と松本が主に登場。
ライトとエリザベスはまだ出ていない新キャラですが9月中に登場する予定です。
またもサーリアやサリアがいろいろやらかしてくれるのでぜひお読みください。
魔王勇者×日本戦闘 前編
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