第85話 メナール法国
メナール法国にレンたちが到着したがレンたちの目の前には剣気を放つ白の祭服を着た女性だったが、普通の日本人だったレンに剣気などわかるはずもなく、マインだけが楽しそうに笑っていた。
「さてなんの御用なのかな? 早く答えてくれないとやっちゃうぞ」
マインの笑顔と同じくメタトロンは笑顔で言っているのだが全く可愛くない。
それもそのはずセリフの全てが棒読みで常に剣を向けてきているからだ。
「うん、とりあえず男がその口調で喋るのやめてもらっていいかな?」
レンが突然意味のわからないことを言った。
そしてその意味のわからないことを聞いた教皇様が突然別の口調になり、剣を収めた。
「さすがだな、それも魔王としての能力か? ん? 答えたまえ悪魔の使徒よ」
いや、どちらかといえば魔神と女神の使徒なのだがまあ、あの二人なら悪魔と言えなくもないかな?
さあそして剣神から神託を受け取る事ができ、そしてみんなにも優しくアイドルのように法国の国民に愛されているそんな教皇が1人で剣神を倒した魔王相手に1人で向かわせるだろうか?
否、である。
1人で行こうとするメタトロンを近衛騎士団全員が押さえ込み、縄(縛られても痛くないゴムのような素材でできている)でミノムシにされて教会に監禁されている。
さて、では一体ここにいるメタトロン(偽)は誰なのか。その答えはとても簡単だ。
「いや、まずは名前を名乗るのが礼儀というものか」
メタトロン(偽)が見事な礼をする。
「私の名前はシグムンド・ヴォルソング。この国の近衛騎士団団長だ。さてそろそろこちらの質問に答えてもらってもいいかな?」
メタトロンの代理として戦うことの出来る人物、そんなものは騎士団長ぐらいしかいないのである。
なおシグムンドとメタトロンが付き合っているなどのことは残念ながらないので期待しないでほしい。
「ああ、さっきの質問だがなこの頃美少女ばかりとあっていたせいかそういうのがわかるようになってきたんだよ」
嘘だな。どうせ鑑定でも使ったんだろうに全くこれだから厨二病はカッコつけたがるんだから。
「さて、メナール法国とグレン魔導国の国交を築きたいのだが」
「断る」
シグムンドがレンの言葉を遮って先に断りを入れた。返事をするのに3分もかかっていたレンとは大違いである。
「いや、騎士団長になんの権限があるんだよ」
そんな当たり前のことを言われた騎士団長様はサッと懐から1枚の紙を出す。
というかいつの間にかシグムンドは鎧姿になっている。祭服の下に着ていたのか? いや、もしそうならどうしてガシャガシャならなかったんだ?
どうやらアオイ(経済学や戦闘技術)やサーリア(スリーサイズ)と同じように永遠の謎を残してくれたようだ。
さてシグムンドが出した紙、それは全権代理者を証明する紙である。すなわちシグムンドは今この外交ではメタトロンと同じだけの権限を持っているということだ。
すなわちシグムンドに断られたこの外交は思いっきり失敗したということで、それならレンが取れる行動も少し説得してから帰ることしかなくなった。というか観光してもいいのだがあの剣神の真似事をした国に楽しめる観光名所があるのかどうかわからないので帰ることにしたのだ。
「暗くなってきましたね。帰る前に収納の屋敷に戻りますか?」
まあ、たしかに辺りは暗くなってきてはいる。だが空を飛んでいるレンや夜目がきくマインにはなんの問題もない。問題があるとすればレンと一緒に寝れるチャンスをマインが逃すくらいである。
そしてマインはこのチャンスを逃すほど馬鹿ではない。
そのためこうして今もアタックを仕掛けているのである。レンが告白を受け入れてくれるその時まで。
「あ、そうそう付き合わないか、俺達」
「付き合う?」
「そう、恋人にならないか、ってこと」
レンの爆弾発言にマインが固まる。告白の雰囲気としては日が沈みそうで、右を見れば綺麗な夕焼けが、左を見ればこれまた綺麗な星空が見える。また行きと同じでマインはレンにお姫様抱っこされている。
まあ、ただすごい速さで飛んでいるので風がびゅうびゅう吹いていて普通なら
「好きだー」
「何? 聞こえないー」
「何でもないー」
ってなるくらいには強い風が横を通り過ぎているのだが2人共聴力が種族的に強いのでこの程度の聞き分けなど造作もない。
さて本題に戻ろう。
レンからマインに向けての突然の告白、それも15歳から10歳に向けての告白である。
あれ? レンってマインの好意を蹴ってなかったっけ?
とか思っている人もいるだろう。ああその通りだ、女の子からの好意を蹴るなど死んで爆ぜて砕ければいいというか早く腐りやがれ。という冗談は置いておくとして、レンはマインのことを可愛いと思うことが時々あったのを覚えているだろうか。それに初めてマインにあったときに比べ今のマインの姿はしっかしとした洋服屋に行ったおかげで随分と女の子らしくなった。
さらにメシアからもマインの好意について聞かされていたことも影響があるだろう。
まあ、この二ヶ月間レンが寝ている間にマインが耳元で
「マインは可愛い、マインは可愛い、マインは可愛い、マインは可愛い、マインは可愛い、マインは可愛い」
と言い続けていたのは関係がないと言い切りたいものである。
まあ、結果的にレンがマインのことを1人の女として見始め、今ふと思い立って告白をしたわけである。そして硬直から回復したマインが顔を真っ赤にしながら深く頷き、レンの胸元に顔を埋める。
さてここまでの状況を見れば随分といい話になるような気がしてくるのだが、よーく考えてみてほしい。果たしてこんなに面白そうなことにあいつが関わってこないだろうか。
「うんうん、えっとクレナイさん? ちょっとマインちゃん借りてもいいかな? 少しお話をしたいんだけど」(テレテレ)
「俺は今君とお話がしたいな」(怒)
ここは見渡す限り白い空間にポツンとログハウスが建っているところで、今回は土俵のようなものも置いてあった。
そしてそこには黒いドレスに身を包み、黒いハイヒールを履いてニヤニヤと笑いながらレン達を見ている角の生えた女性がいた。
まあ、あのサリアがこんなに面白い場面を見逃すはずがないからな。
「うん、とりあえず後ろの人が君と話したそうだから今は譲るよ。じゃあ借りてくねー」
と、完全に自分の都合でレン達を呼び出したサリアはさっさとマインの手を取って歩き出していく。
そしてログハウスの中に入り、レンから見えないように魔神らしく魔法を使って目隠しと防音をする。
今日はマイン達の方について行こう。なんか面白そうだし。(メシア)そういう所はサリアと似てますね)
うん、うるさいよメシア。
「さてさてさーて、クレナイさんから告白されたんでしょ。どうなの、どうだったの? やっぱり嬉しかった?」
「そ、そんなにグイグイ来ないでください。確かに嬉しかったですけど…」
「やっぱりかー。え、何、もしかして私が邪魔しなかったら、キス…とかまでやってたの?」
マインが真っ赤になって照れながら縮こまる。
「そ、それはそれとしてですね、レン様とあっている人って誰なんですか?」
「む、それは話を変えようとしているのかな? うんうん可愛いなぁ。それともクレナイさんにあっているのが女かどうか気になるのかい?」