第84話 政治
「えっと、何か手伝うことないか?」
アオイの働きっぷりをみて少しでも手助けになればと、1人座っているレンが聞くが
「それじゃ先に今やってることの説明をしますね…」
そこからペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラペラー、っと2時間ほど説明を受けたレンはまあ、当たり前のごとく後悔した。
マインも寝ちゃっているしな。
「しかしマインが寝るって相当のことだぞ」
「いや、普通じゃないですか? 学校にも通っていない10歳の女の子ですから…」
「それもそうだな。結局俺も理解出来なかったし」
そうですか…、っとアオイが残念そうにするがアオイも元14歳の女の子である。
そしてアオイはレンとそんなことを話しながらも実務をこなしている。
「サクラミネ公爵、農村部での件ですが」
「盗賊に襲われている件ですね。それはマインを回すので地図をそこの子に渡してください…」
「かしこまりました」
「サクラミネ公、貴殿に聞きたいのだが王亡き今、私のような有能な貴族が政治を行った方が良い結果になると思うのだがどうかね?」
「私一人で十分ですし、レンくんというか王様もいるので大丈夫です。というか早く帰ってください」
アオイが指を鳴らすと2人の女騎士が出てきて貴族の両腕を掴み屋敷から放り出した。あとこの貴族がサラッと言ってしまったが王様は死んでいる。というか政治をするために王城に残っていた貴族達を守るためにレンが消えたあとアオイに向かっていき死んだ。その際にマインが感動で泣いたり、王様を供養し冥福を祈るアオイの姿を見て貴族達がアオイの元についたりなどのイベントがあったのだがカットである。
「魔王様、今日は…」
「ああー、はいはい長ったらしい前置きはどうでもいいから早く本題言ってくれない?」
「私共の国、ミニマ共和国を魔王様が収めるグレン魔導国の属国にして頂けないかと愚考致しまして」
「わかった、書類を持ってきているのだろ、早く渡してくれ」
ミニマ共和国とはフレード王国にとって魔の森をは挟んだ反対側の国だ。
そこの国王がレンにへりくだって書類を恭しく渡している。
最初の頃はレンも緊張や好奇心でそわそわしていたのだが様々な貴族達と今日一日であったせいで精神的にお疲れである。
もうわかっているとは思うが今レンが座っているのは屋敷の一番奥にあり最も豪華な部屋の最も豪華な椅子、すなわち玉座だ。アオイにはただ難しい顔をして座っていてくれたらいいと言われていたのだが流石に飽きる。
「仕方が無いですね、私がレンくんの姿をして座っています…」
そんなことが出来るのか!
と驚くレンを横目にアオイが自分の体の形を変化させて…レンと同じ姿になった。
元々天使とは決められた姿を持たないものである、天使を見たものが勝手に想像し創り出された体で人の前に出る。そのため好きな姿をとることも可能なのだがそんなことを考えるほどの意思を持っていないので天使らしい姿のままというわけだ。また神は自分の姿を変えることができない。天使ができていることを神ができないのか?
と思うかもしれないが神たちは天使と違い明確な姿が決められているのだ。
さて話がずれたがその結果としてレンが座っていた玉座にアオイが座り、レンは大変な仕事から開放された。
と、言うわけで国を出ることになった。というのもアオイが政治をするのにレンがいると
「魔王様にやらせればいいじゃないか」
という声が出てくるらしい。
だがもしレンが国外にいた場合、魔王様は国内にいない、と言い訳ができるということなのだ。
なので今マインとレンは馬車に乗ってアオイ曰く交渉が上手くいっていない国、メナール法国である。メナール法国は名前の通りメナール教を元に作られた国で礼儀作法がしっかりしていて祈りの言葉も学校で教えられる。またほかの国に比べて教会が多い。
そしてメナール教とは剣神サーリアを崇める宗教でもある。
さらにレンとサーリアが戦ったことは既にメナール法国に知られている。
またサーリア直々にレンが神敵だと告げたせいもあり、今のレンはメナール教の信者に取っては親の仇のようなものである。
そんな仇が治める国と仲良くできるだろうか、否、できない。
そのため全ての国交を閉鎖され、グレン魔導国内にある全ての教会が立てこもった。
まあ、そんなことをしてもアオイやマインなら屋敷ごと潰せるのだがそんなことをしては国民の印象が悪い。
そのためレンが行くことになったのだが
罠がたくさんあったのである。
「だからといって翼を出して飛んでいくっていうのはどうかと思うのですが」
「まあまあ、早いしいいじゃん」
「そうですけど…」
マインがものすごーく不満そうにレンに文句を言う。
「こういう時は普通お姫様抱っこじゃないんですか? せめて荷物みたいに肩に担ぐのはやめてもらいたいのですけど」
と、レンの背中から羽の風を受けながら話している。話しにくそう。
「お姫様抱っこは風が当たって大変だと思うぞ」
レンが至極真っ当なことを言ったが
「それでもお姫様抱っこ方がいいんですよ!」
恋する乙女に風など些細な問題でしかなかった。そこまで言うのなら、とレンがお姫様抱っこをしてあげるとムスッとしていたマインの顔が笑顔に変わった。
「ムフフフフフ」
「え、なんか気持ち悪い」
「酷いですよ、レン様。それにこちらの方が密着率が高くて少し興奮しているだけです」
まあ、たしかに密着率は高いだろうが残念ながらそろそろ空の旅も終わりである。
遠くに見えてきたもの、すなわちメナール法国である。
さてメナール法国の説明の補足をしておこう。
メナール法国はメナール教をモチーフにして作られたためサーリアに関する風習がとても多い。
まずこの国の人間は生まれた時に1本の剣を親からもらう。そしてその剣を持ってその剣と共に成長していくのだ。そうまさにサーリアのように。
そして法国というと魔法のイメージがあるが先も述べた通り剣が主体のため法国は強い剣士の宝庫である。また聖剣騎士団なるものが存在し、サーリアの使っていた剣の1部、すなわち使わなくなった一振の剣が収められている神殿を警護している。
そのメナール法国を治めているのはメタトロン教皇である。この名前はメナール法国の教皇に代々受け継がれており、今代の教皇で66代目である。
教皇の役目は神の代理として国を治め神と人との繋がりを保つ役目をしている。教皇は1ヶ月に1回満月の夜に剣神の言葉を授かる。実際はサーリアではなくサリアが教皇に神託を託しており、満月の夜にやる理由は「カッコよさそうじゃん」とのことだ。
そして神託の通りのことをするのも教皇の役目であるといえよう。
さあ、そんな剣士の国でトップに立つお方が敬愛するサーリアから直々にレンを殺せと言われたらどうなるか。
レンを滅ぼそうと単身国の前で待ち伏せするのである。