第82話 百物語
アオイはその話を聞いて「そうだったのですね、正体が分かって安心しました…」とか思っているのだが普通の日本人であるレンは疑問を抱いてしまった。
いやまあ、気になるのも仕方が無いと思うけどね。
「幽霊を切ったのか?というか知人を殺されてよく怪談話にできるな?」
「まあ、所詮知人ですし」
そしてサリアは予想通りの答えを返してくれた。人ならともかく知人が死んだのなら悲しんであげてもいいと思うけどね。
まあ、それからレンが日本や西洋の怪談話をして100本目の蝋燭を消したのだが
「この生物ってなんだ?」
レンの眼前には黒い半透明でネチャネチャで核がある生物、すなわちスライムがいた。というか召喚された。
「おお、今回はハザードか」
「ハザード?」
「うん、百物語で召喚できる生物にはクラスがあってね、それのハザード級の魔獣が出たんだよ」
まあ、サリアが要約して説明してくれたのだが端折りすぎてわかりにくいしレンは理解するのを放棄してるし、レン以外のメンバーは説明する気が無いしで進まなさそうなので私が説明しよう。
元々百物語とはとてつもなく大掛かりな召喚儀式である。
まず100本の蝋燭、その全てに魔力を込める。この時に込めた魔力量によって儀式の規模が変わる。
次にその蝋燭全てに火をつけ物語を語りながら消していく。
すると蝋燭に込めた魔力が消す度にほかの蝋燭に均等に分配されていく。
100本あった蝋燭が半分になると魔力は2倍に、そして最後の1本になるとその蝋燭には全ての魔力が集まっている。その蝋燭を消すと濃縮されていた魔力が放出され今まで物語を語り、頭の中に浮かんでいたイメージが具現化する。
これが今は失われた百物語の真実である。
という説明をメシアから受けたレンがスライムをアカギでつついてみる。
「なあ、今回の百物語ってどれ位の魔力を込めた蝋燭を使ったんだ?」
「10000かな?」
頬を指で掻きながら恥ずかしそうにサリアが答えた。
「10000?」
「クレナイさんの総魔力量を1とした時、約10000の魔力を込めたよ」
つまり最後の1本に詰まっていた魔力はレンの総魔力量の100万倍である。
「どうやったらそんな膨大な量を込めれるんだよ」
「まあ、伊達に魔法の神をやってないからねそれくらいなら2分あればできるよ」
「2分か、全くどれだけの魔力を持っているんだよ」
あまりの発言に化け物のレンも呆れ気味である。
「まあ、年齢が10桁ほどいくと極めるの上をさらに越せるからね」
サリア、推定年齢10億歳越えである。うーん、この中だったら意思を持ち始めて1日くらいの私が1番若いかな?
「それにしてもスライムって面白いな」
「つついてもつついても元に戻ることが?」
「そう」
ついさっきからずっとスライム相手に連続でつついているレンだがついてできた穴が一瞬で塞がれる。まるで沼をつついているかのような感触だ。
「そりゃそうだろうね、こいつ沼だし」
「え?」
「こいつは1匹で小さな国を飲みことの出来る災害級の魔獣だよ」
さあまたまた私が説明しちゃうとメシアさんの出番がゼロになっちゃうので今回はメシアさんに説明してもらおう。
メシア)このスライムの名前はイロードスライムで有機物がその体に触れると魔力に還元され大きくなります。そのため村や街、国を飲み込む事に大きくなり、終には星まで飲み込む災害級の魔獣です。
と、久しぶりの出番だったメシアの話を聞いて寒気を覚えたレンは早々に太陽でスライムを焼いてしまった。
「というかサーリアはなんで何も言わないんだ? いや、本当に何で隠れてんの?」
レンの目線の先にはログハウスの裏に隠れてこちらを見ているサーリアの姿があった。
「いや、どうもそういう気持ち悪い生物は苦手なので」
「なんと女らしいことを」
「女ですよ」
いやいや剣を振り回して幽霊さえも切り裂く奴が女だと言えるのかな? とか思いながら辺りを見渡したレンがあることに気づく。
「あれ? アオイがいないな」
「ああ、アオイさんなら『マインが心配なので先に戻ってますね』って言って帰っちゃったよ」
「なんだあの二人意外と仲がいいんだな」
宿でアオイの「マイン殺す」宣言を聞いていたレンはアオイの成長に感動する。
「というかそろそろクレナイさんも帰った方がいいんじゃない?」
「なんでだ?」
「だってクレナイさんは今一国の主なんだよ?」
それを聞いてレンがキョトンとする。
うーん、こりゃ忘れてたパターンだな。
そしてそれを察したサリアが即行でレンを下界に返してこの打ち上げパーティはお開きとなった。
が、しかしお開きになるということは片付けが残っているわけで、すなわちスライムの焼き残しや食べ残しなどが残っているわけである。
「で、姉様、この食べ残しとスライム食べる?」
「食べませんよ! もう気持ち悪くて吐き気を催しそうなので消していいいですか?」
「吐き気がするわけではないんだね」
うん、いいよ。という言葉のうんの時点でサーリアは近くに立て掛けてあったエクスカリバーを掴んで光の柱でスライムの消し炭を消滅さした。その余波で食べ残しやBBQセットが散乱したがまあ、問題は無い。
その惨事に苦笑したサリアが魔法を使って散らばった物を片付ける。
「さて、政治がある程度整ったらもちろん戦争をふっかけるよね?」
またまた唐突にとんでもないことを言い出したのだが今更なので一旦スルーしよう。
「もちろんだ。戦争の準備を始めておかないとな」
元のぶっきらぼうな口調に戻った姉様を見たサリアが2度目の苦笑をする。
「クレナイさんがいた時は綺麗な言葉遣いだったのに戻っちゃったね。私的に新鮮で面白かったんだけど」
サーリアはイヤーな顔をしながら話を続ける。
「だからこの口調になるんだと気づかないものかね」
「?」
まあ、この辺はネタバレにならないだろうからハッキリと断言してしまおう。
気づかないし変わりません。




