第80話 打ち上げパーティ 下
「まずスキルが技術を補助する役割を持っていることは知ってるよね?」
サリアがこれまたどこからか出してきた学校の椅子に座り、ノートを机の上に広げたレン達が頷く。
「それを知っているのなら話は早いね、魔法の補助のためだよ。ほらこんな感じだね」
そう言ってサリアがフリップボードをレンたちに見せる。
まあ、色々と複雑なことが書かれているが要約すると
何も無し|無詠唱 イメージが必要
詠唱付き|詠唱有り イメージいらず
スキル|無詠唱 イメージいらず
こうなる。
「無詠唱でイメージ無しだったらどうなるんだ?」
というレンの質問にサーリアが実践をもって説明する。
「『ファイヤ』っとこんなふうに使いたい魔法の名前を言ったり」
サーリアが左手をかざすと何も言っていないのにボッと火がともる。
「こんなふうに大まかなイメージだけで魔法が使えます。実際には大まかなイメージをスキルが強化してるのですが、まあ、そんな感じです」
それを聞いて生徒達がふむふむ言いながら頷く。
「なるほど、それは便利ですね…」
「まあ、元々知ってましたけどね」
「なるほど、わからん」
まあ、どれが誰のセリフか読者の皆さんにはわかると思うので触れないでおくが忘れている方もいると思うので今一度日本組の設定を言っておこう。
レンは中学に入った直後から引きこもり始めている。つまりまだ3-5=-2も出来ない馬鹿である。
それに比べアオイは秀才である。全てのテストで5科目総合490点を取っている紛うことなき秀才である。
そのため秀才組と凡才組の2つのグループに別れて雑談することになった。
「というかサーリアって秀才じゃなかったんだな」
というレンの疑問を聞いて少し疲れたような顔をしたサーリアがボソボソと答える。
「サリアがおかしいだけですよ。というか魔法担当がおかしいのですけど… 私のような剣担当は秀才じゃないのが普通ですよ」
そう言われるとそうなのだが
「まあ、つまり原子がイオン化するとプラスやマイナスの電気を帯びるのと同じように魔化して出来た魔素はそれぞれの属性を帯びるんだよ」
「なるほど、その変化した魔素がその属性の元となるわけですか。それなら属性ごとに違いがあったりするのですか…」
「振動と移動速度だね。火属性の場合…」
あまりにも次元の違う議論を目のあたりにしてレンも疲れたような表情を浮かべる。
「とりあえずババ抜きの続きでもするか」
「そうですね、レン様」
「俺の天剣術ってサーリアの剣術の一部なんだよな」
「そうですよ」
「何でサーリアの剣術の一部しか持っていない俺が勝てたんだろうな」
「それはそうですよ私だって一部しか持っていってないんですから」
「自分の技術に一部とかあるのか?」
「えっと正確には天剣術は私があなたの持っている刀を使う時に使う剣術なんですよ」
「え? まさか剣を変える毎に戦い方も変えているのか?」
「あ、いえ、そうではなくてですね」
うまく説明出来ずにいるサーリアが説明を諦めて実践で見せる。青い魔法陣を空中に出し、そこから何千本という膨大な数の剣を出した。そしてサーリアが手を縦に大きく降ると全ての剣がまるで持ち手が居るかのように構えられる。
「このように1人で千本以上の剣を操って戦うのが私の戦い方なんです。それでその中の1つをクレナイさんにあげたんですよ」
サーリアは簡単に言うが実際にやってみると難しいことがわかるだろう。1人でたくさんの剣を持ち手がいるように操るということは1人でたくさんの体を動かしているということでもある。もう1人の自分、それを作るだけでも出来たら天才と呼ばれる領域だ。それを何千体、まさに神の技術である。
「さすがに神はやることのスケールが違うな」
「まあ、これでも剣神なので」
というわけでアオイたちの話が終わるまで、このような雑談を挟みながら数時間ほど様々なトランプゲームで遊んだ。戦績は297戦中、レンが1勝、サリアが144勝、マインが146勝でマインの優勝だ。もちろんレンはこの結果に納得していない。
「なんでそんなに勝てるんだ?」
「イカサマしてますからね」
なるほどやはりイカサマかそれなら俺も使えば勝てるかもな、と思ってどんなイカサマか聞いたレンだがサーリア達のセリフを聞いて諦める
「どのカードがどの絵柄か覚えているだけですよ」
「レン様たちの目に写ったカードを見ているだけですよ」
「無理だ」っと、いやまあたしかに2人ほどの良い目を持ったものなら出来なくはない、それにマインのイカサマはレンでも数ヶ月練習したらできるだろう。
だが50枚以上のカード全ての位置を覚えるのは無理がある。止まった状態ならまだしも動き続けているカードを覚えるなどまさに神の技術である。
「なんでサーリアはそこまでのことが出来るんだよ」
「これくらい出来ないと剣を操ることが出来ないので」
これが出来るのと剣が上手いのと何が関係あるんだよ、っとレンは思ったが少し前にサーリアが剣を千本以上同時に操っていたことを思い出したレンは疑問を飲み込むことにした。




