第79話 打ち上げパーティ 上
「ま──」
「はい、ちょっと待って」
レンが最初の1文字を言ったところでサリアがセリフを遮る。
「まずはここに何をしに来たのか思い出して見て、ほら」
強引に話を逸らそうとしているような気もするがとりあえず言われたとおりにしてしまうのはレンがお人好しだからである。
そしてすぐにサーリアの剣を直しに来たことを思い出す。
「はあ、お前がBBQやっているせいで脱線したじゃないか」
「私のせい? って聞きたいけど私のせいだから何も言えないね」
阿呆なことを言っているサリアの頭をアカギの腹で叩き、黙らせる。
「うう、デジャブ感がすごい…」
サリアが頭を抱えて蹲っているが無視してサーリアの元に向かう。
「おお、さすが女神」
泣いても女神ということなのか、人間だったら顔がクシャクシャになってお世辞でも美しいとは言い難いほど涙を流しているのに未だに美しさを保っていた。
「な、何しに、き、来たんですか?」
泣いているせいで言葉が聞き取りずらい。なのでサッサと直してしまうことにする。
バッヒュッカンッ
女神の手からハンマーを奪い取ってエクスカリバーに叩きつける。
既に10Lvを超えている鍛冶スキルにとってはこれくらいは造作もない事だったようですぐに2つだった剣が1つになった。
「あ、ありがとうございます。クレナイさん」
女神が剣を抱きながらそういった。
「うん、それはよかったんだけどアレはどうにかならないのか?」
アレの時にサリアを指差しながらレンが聞いた。
「ああ、サリアの焼肉はタレが不味いことを除けば絶品ですよ」
「それは知っているからどうにかしてくれ」
そうレンに頼まれたサーリアはサリアのところまでトコトコと歩いていき収納からタレが入った容器を取り出してサリアがタレ(サリアオリジナル)につけようとしているお肉を掻っ攫ってタレ(サーリアオリジナル)につけてレンの元まで持ってきた。
そして何も言わずにグイッと突き出す。
それをレンが箸で掴んで口に運ぶ。
そして数回咀嚼し、飲み込む。
「…美味いな」
「まあ、女神ですので」
その肉はサリアのものとは全く違い、絶妙なバランスで成り立っている甘辛のタレが絡んだその肉は1つの料理として完成されていた。
「なんでサーリアの妹が料理下手なんだろうな」
レンの素朴な疑問にサーリアは
「事実としてそうなんだから別に理由をつける必要はありませんよ」
至極真っ当な答えをレンにプレゼントした。
そして2人の純粋な、それでいて心をえぐる言葉を受けたサリアは1か月前にやったように庭の隅っこで蹲っ…
「ってちょっと待って」
さすがに2度も拗ねて蹲るのはプライドが許さなかったのか速攻で立ち直り2人に向かって歩いていく。
「ほら、姉様、クレナイさんが勝ったんだから説明しないと」
「ああ、そうでしたね」
肉ばかりではなくきちんとバランスよく野菜を口に運んでいたサーリアが思い出したようにサリアと同じようにレンの方を向いた。
「よし、じゃあ長くなりそうだからトランプでもしながら話そうか」
サリアがトランプを出しながらそう提案した。
レン達が始めたのはオーソドックスなババ抜きである。
とは言ってもババ抜きなど3人ですればすぐに終わってしまう。そのためアオイやマイン、ミイ、ナイナを交えた7人でのババ抜きが始まった。
「それでアオイ達も読んで何を話すんだ?」
サーリアにそう聞いたのはレン(現在6枚)だ。
「まずはきちんと世界の仕組みを説明しようと思いまして」
サーリアが説明した基本的なことは
・魔王と勇者はサーリアとサリアが地球から召喚した人間にそれ相応のスキルを渡したもので、戦わせ楽しむために呼んでいる。
・今回は魔王と勇者を同人物にし、2人分のスキルを渡し、サーリア自信が戦うことで楽しもうとした。なお、サリアはこの魔王勇者に付いてきた人物との会話を楽しむ。
この2つを説明し、サーリアとサリアが数日前のレンに説明している場面を水晶で見せた。
「というわけなんだけど何か質問ある?」
サリアの説明に対し、自分に優等生という設定があったことを思い出したアオイが手を挙げる。
「今更なんですけど、どうして魔法系のスキルがあるのですか…」
「あー、それはだね」
サリアが何処からかフリップボードを取り出して来て魔法スキルの説明を始める。
「まずスキルが技術を補助する役割を持っていることは知ってるよね?」