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短編集4

 吾輩は猫である。

 名前はハクだ。この名前は人斬りと呼ばれている魔人に付けられました。


「どうしたのですか…」


 今、人外の女の子に話しかけられています。


 ───────────────────────


 私は元々捨て猫でした。前の主人にある奴隷と共に森の中に捨てられました。

 なんでも私とこの子が邪魔になったそうです。

 そして数日ほど森で過ごしていたのですが人斬りの魔人に拾われて前の家と同じくらい大きな屋敷に連れていかれました。

 そこで出会ったのは2人の、いえ2柱の化け物でした。片方の黒髪の女の子はまるで神の眷属のような圧倒的なオーラを出していて、立ち向かったら一瞬で灰にされそうなくらいの威圧感がありました。

 もう片方の黒髪の男の子は前の主人と同じく、人間の匂いがしましたが格が違いました。

 前の主人もある程度は戦えるほどの剣の腕を持っていましたが、この人は違います。おそらくこの世界に存在する全ての生き物が全力を尽くしても勝つことは出来ない。そう思わせるほどの強さを持っていました。

 そしてそのまま私と奴隷の子はここに住むことになりました。


 奴隷の子の部屋が割り振られました。その部屋は前の主人の書斎と同じくらいの部屋で普通の奴隷なら「もっと質素なものでいい」と、一言言うのが普通ですがこの子は言いませんでした。奴隷の子の目は黒髪の男の子を見つめ続けていて、信頼していることがわかります。

 しかしよくあそこまで強い人に対して平常心でいられるものですね。人とは危機管理能力が低いのでしょうか?

 その後に私の寝床の話が出たようで何やら言い争っていましたが、私には人の言語は聞き取れません。

 なので1番安全そうな男の子の部屋に逃げ込みました。案の定、女の子達はこの部屋まで追いかけてくることはありませんでした。


 そしてその日の朝、起きてみると男の子の顔の上で寝ていました。

 驚いて飛び上がってしまい、死を覚悟しましたが殺されることはありませんでした。


 その数日後、突然男の子、いえもう新しい主人ですね。主人に抱きかかえられました。

 その時の私は水浴びをしていないせいで汚れていて、主人の近くに居れる状態ではありませんでした。

 そのため水浴びをしていたのですが、主人が入ってきたので急いで上がりました。

 その時に外に黒髪の女の子がいて話しかけてきました。

 そして今に至ります。


「どうしたのですか…」


 相変わらず人間の言語は話せません。

 ですが表情からある程度のことはわかります。


「にゃーにゃにゃにゃーにゃ(かくかくしかじかということがありまして)」


 通じるかわかりませんがとりあえず猫の言葉で状況を説明します。


「にゃーにゃにゃーにゃ…(レンくんはそんなことでは怒りませんよ…)」

「ニャフ!?」


 お、驚きました。どうやらこの子は猫の言葉を話すことが出来るみたいです。そういえば羽が生えているのを見たこともあるので天使なのかも知れません。


「にゃ、にゃにゃーにゃ(えっと、それなら私は何をすればいいのですか?)」


 天使様なら救ってくれるかもしれないので助言を求めてみます。


「にゃーにゃにゃにゃー…(レンくんが作った玩具で遊んであげればいいと思います…)」


 そういって私を抱えて天使様は1つの部屋に行きました。

 その部屋は奴隷の子の部屋と同じくらいでたくさんの小動物を模した人形が置いてありました。

 正直に言うとこの部屋は私の苦手な部屋です。私は猫なので小さい動物がサッと動くと本能的に捕まえたくなってしまうです。しかし主人の物を勝手に咥えたり、引っ掻いたりすると怒られるのは前の屋敷で知っていたのでできるだけがまんするようにしています。しかしここには私を誘惑する人形がたくさん置かれているので我慢するのが大変なのです。


「にゃにゃーにゃにゃにゃ…(ここに置いてあるのはあなたのためにレンくんが作った玩具です…)」

「にゃ?(玩具ですか?)」

「にゃむ、にゃにゃにゃーにゃー…(そうです、だからこの玩具で遊んであげたらレンくんは喜びますよ…)」


 そうと言われたら遊ぶしかない、チョロチョロと走り回る鼠や飛び回る蝶のような玩具を追いかけ回す。


「にゃにゃにゃーにゃ、にゃにゃにゃー…(それとそこの柱のようなものは爪とぎ用のものなので使ってみてください、レンくんが遊んでくれる時もあるのでその時は普通に遊んであげてください…)」


 どうやら本当に天使様だったようで助言をくださいました。

 言われたとおりに遊んでいれば殺されることはないと言ってくれたのでこれからは主人を楽しませることに全力を尽くすことにします。


 ───────────────────────


「おーい、アオイ」

「なんですか、レンくん…」


 ついさっきまで嫌われていた僕に、ハクがようやく懐きました。

 いやぁ良かった良かった。昨日なんて抱っこした瞬間逃げれれていたからな。

 それに玩具もようやく使い始めてくれた。特に動く鼠が気に入ったようで耳が取れかかっていたくらいだ。


「見てくれ、ほらすごい懐いたんだよ」


 さっきから頬ずりしてくるハクの姿をアオイに見せる。


「良かったですね…」


 アオイが笑顔でそういった。

 うん、やっぱり平和が一番だな。



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