短編集2
これは第39話と第40話のあいだにあった短編集です。読んだことあるよ、っていう人は短編集4をお読みください
第1章 第19話 魔獣討伐
新しく乗馬スキルを手に入れたお陰で車並みの速さで移動することが出来たが、馬を休めないといけないのでフェンリルの森の少し前辺りで休憩を取ることにした。
移動する前に買ったテントを出したかったのだが道の脇には畑が広がっていて出す所がない。
「何処で寝ようかな」
「馬車の中で寝るんですよ」
「馬車の中か」
この硬いところで寝るのは嫌なんだけどな。しかしどれだけ考えても他の方法が思いつかなかったので諦めてご飯の用意を始める。
「あ、勇者様は待っていてください。すぐに夜ご飯を作りますので」
あ、作ってくれるんだ。それなら任せようかな。
10分ほどで料理ができた。
マインが作ってくれた料理は野菜のスープとステーキだった。
「いただきます」
まずはステーキから食べ始める。
ナイフがないので豪快に1口で…
「不味っ。不味い、というか苦い、辛い、酸っぱい。何かよくわからないけどとりあえず不味い」
「不味いですね…」
「そ、そんなに不味いですか」
どうしてこんなに不味いんだろう。
口に残った肉を流し込むためスープを口に入れて…
「ブホッ。何だこれ、血の味がするぞ」
「あ、それはですね。さっき取ってきた猪の骨髄が入っているんですよ。美味しいですよね」
幸せそうな顔でズズズズっとマインが血の味スープを飲む。
「この肉はどうやって作ったんだ?」
「それは猪の肉を臭み取りのハーブと一緒に焼いたものです。何故かハーブが剥がせなくなったのでそのまま焼きました。焦げ目つくまで焼いたので美味しいと思うのですけど」
今度は不思議味の肉をかぶりついて幸せそうな顔をするマイン。
これはやばい。初めて食べた旅の料理がこれではやる気が出ない。
「何するんですか」
マインとアオイのスープと肉を奪って手を加える。
料理スキルは見た目と味の両方を一流のシェフ並みにすることが出来るスキルだ。
包丁を使えば残像が見えるくらいの速度で正確に切り。焼けば完璧な焼き加減が出来る。
何より不味い料理を美味しくできる。そのためこの2つの料理に少し手を加えて強制的に味を整える。
「ほら食べてみろ」
アオイは普通にマインは警戒しながらも食べてくれた。
さて僕の料理の感想は……っていきなり泣き出した?
「ど、どうしたんだ?不味かったのか?」
「いえ、今までで1番美味しい料理です…」
「食べ物ってこんなに美味しくなるのですね」
そんなに美味しいのか?僕も自分のお肉にかぶりついて──
気が付くと僕の分の料理は全てお腹の中に収まっていた。
どうやら料理スキルを全力で使って作った料理は神の領域に入っていたようだな。
次からはもう少し質を落として作ろう。
「それじゃあ、そろそろ出発するか」