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第77話 旅の終わり

 その答えを聞いて魔神が嬉しそうに話を進める。


「アオイにとっては大したことがなくても、あなたにとっては重要な事だったとしたら? もしそうだったらあなたはどう思う?」

「いちいちセリフが長ったらしいですね、どうせ聞くことになるのですから早く言ったらいいじゃないですか」


 マインの文句を聞いて魔神が肩をすくめる。


「それはすまないね。どうしても大事なことを言うまでの前置きが長くなってしまうんだよ。そのせいで姉様に言いたいことを言われるんだよね」


 そしてさっきまで普通に座っていた魔神がマインと話すために姿勢を正す。


「さて、これ以上引き伸ばすと止まらなくなりそうなので先に結論を話すね。アオイさんはクレナイさんのことを好きになっていなかったんだよ」


 結論から言った魔神にマインが即座に疑問をぶつける。


「ならどうしてわざといじめられて、レン様に助けてもらうなんてことをしたんですか?」

「親に仲良くなれと言われたから、漫画やテレビの影響で助けられるヒロイン役をやりたくなったから、いくつか理由は思いつかない?」

「…確かにそれなら不可解なことをするのも理解出来ますね」

「そう、それなら理解出来るんだよ。でも実際はそんなことはなかった。その時のアオイさんはそんな素振りを一切見せてなかったんだよ」

「?」


 まだ理解出来ていないマインに魔神が身を乗り出しながら説明する。


「つまりだねそんな事情がないのにいじめられたりしたんだよ」

「どうしてそんなことをするのでしょうか?」

「そんなことって言っても口にしてみると何の疑問もわかないよ。アオイさんはクレナイさんにいじめっ子から助けてもらったことが原因で好きになり始め、アオイさんはクレナイさんに助けてもらうためにいじめられた。ただそれだけだよ」

「確かにそうですが、実際には矛盾しています」

「その通りだよ。アオイさんの行動は矛盾しているんだよ。それで質問なんだけど」

「ちょっと待ってください」


 マインの静止を受け、魔神が元の姿勢に戻る。


「あなたは既にアオイが何故そんなことをしたのかを知っているのですよね? それならば何故私に謎解きのように聞くのですか?」


 魔神はまた虚空からアオイが見ているのとは別の水晶玉を取り出してマインに見せる。


「君達は何か勘違いをしていないかい?私達神はなんでも出来るほど凄くはないんだ。長い時を生きてきた中で得た知識を使って、多くの技術を使っているだけで万能ではないんだよ。確かに私はアオイさんが何故そんなことをしたのか想像はついている。でもそれはあくまでその水晶玉から得た事実と、私の拙い想像力によって作られたもので、あっているかわからない。だからアオイさん自身に聞きたかったんだよ、『何を考え、何を思いながらそんなことをしたんだい?』ってね」


 そう話している間、マインが受け取った水晶玉には日本にいた頃のアオイの姿が映っていた。


「でもどうやら答えてくれる気はないみたいだね」


 アオイが持っている水晶玉にはレンが女神の心臓と玉を切り出している場面が映っていた。

 そしてアオイは水晶玉を見るだけで一切こちらを見ない。



「それに姉様の方も終わったみたいだしね」


 魔神がパンッと手を鳴らし、2人の注意を自分に引きつける。


「私達神はいつでも娯楽に飢えている。その神達を楽しませるのは君達ニンゲンだ。時にはクレナイさんのように神と戦い、時にはニンゲン同士で殺しあったりする。私は君達ニンゲンが悩み苦しみ答えを出す。今までも君たち2人が悩んだ結果の答えは私を思う存分楽しませてくれたよ。今度はどんなことで悩み、どんな答えを出すのか、とても楽しみにしているよ、2人共」


 そう魔神が言い切った時には既にアオイとマインは部屋から消えていた。

 そしてアオイがさっきまでいたソファには水晶玉だけが乗っており、その水晶玉には女神の心臓と玉を持ったレンとそれを見ているアオイとマインの2人が映っていた。


「まさか私でさえも理解できないニンゲンがいるとは思ってなかったな。他の神にも教えてあげようかな?」


 ───────────────────────


 女神が俺の手足を切り落とした時に核がどうたらとか言っていたから女神の中の核のようなものを切り出してみた。

 しかしまだ女神は動いている。さっきまで死んでいたはずなのにまだ動くみたいだ。


「心臓を取り出したのにまだ動けるのか? 一様この玉も取り出したのだが他に核のようなものでもあるのか?」


 女神は倒れたまま口だけを動かして返答する。


「いえ、その玉が核ですよ。それを取られたので私はもうほとんど動けません。さすがですね、クレナイさん」


 その返答を聞いてレンは自分の考えが正しかったことを確信する。


「やっぱりここで死んでもお前は生き返れるんだな、だから左半身が無くなってもお前はなかったかのように戦えたんだ」

「それは違います」


 核を奪われているはずなのに今まで以上に力強い言葉でレンの言葉を否定する。


「私がここで死んだ場合、私の存在は消えてなくなります。あなたに言ったでしょう?

 安全なところから見ているだけではつまらないと、それと同じですよ。たとえ負けて死んだとしても生き返ることが出来る、それでは面白くないんです」

「…死ぬとわかっていて怪我を放置しながら戦っていたのか? 化け物だな」


 レンの素直な感想を聞いて女神は小さく笑う。


「確かに私は神で人から見たら化け物でしょう。でもあの2人も怪我なんかに振り回されずに戦えますよ。それにどうせ戦うなら敵をを殺すか敵に殺されるかの2択だけにしたいでしょう?

 それにまだ終わってませんから」


 手に持っていた核から腕が再生し始めているのに気付いたレンが遠くに投げようとするが、それよりも女神の腕がレンの首に届く方が速い。


 パキン、という高い音が辺りに響く。


「ふぅ、そうでしたか、あなた達もいたんですね。妹の方に呼ばれたのだとばかり思っていました」


 核から生えた腕がレンの首を飛ばす寸前にアオイが投げた金砕棒が核を砕いたのだ。

 金砕棒を回収したアオイがレンと女神の会話に入る。


「魔神との話し合いならマインが終わらせましたよ」

「あの妹がそう簡単に面白い人間を手放すはずがないんですけどね。ん? どうやらもう終わりみたいですね」


 女神の体が光り始め、光の粒子のようなものが辺りを埋めつくし始める。


「本当に楽しかったです。また戦える時を楽しみにしています」


 光が目を開けられないほどになり、目を開けた時には既に女神の体はなかった。


「これで終わったな」

「もう終わった、さすがだね。女神と魔王との戦いだから三日三晩とかを想像していたのに随分と早く終わったね」


 魔神がいつの間にかレンの後ろに立っていてレンに話しかける。


「これで現実の厳しさを1つ乗り越えたわけだ、おめでとう、というわけでまた連絡するから待っててね」


 そう言って魔神は消えていった。

 微妙な雰囲気にされたレン達は少し固まったが、すぐに動き出す。

 さっきまで女神が守っていた王族達のところに向かう。


「さて、この国は見ての通り俺達が乗っ取った、というわけで君達には死ぬか味方になるか選んでくれ。賢い選択を期待しているよ」



第2勝終了ー

後は短編1つとあとがきだけです

いやー長かったですね

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