第75話 神魔対戦 ☆
女神は楽しそうな笑顔を浮べていた。
そして今まで浮べていた魔法を全てレンの方に向けて撃った。
全てが大量の魔力を凝縮した1つで大木をへし折るくらいの威力がある魔法だ。
「アオイ、もう離してくれていい。マインと一緒に離れていてくれ」
「わかりまし──」
アオイの姿がセリフの途中で消えた。驚いたレンが後ろを見るがアオイの姿は見つからない。そして着地したレンを女神の魔法が襲う。
「これはテレポートみたいなものか?」
女神の魔法を難なくよけ全てを叩き切ったレンが予想を立てる。
「ええ、戦いを楽しむ私と違って妹は人間と話をするのが好きなので、おそらく今頃は上の方で楽しくガールズトークでもしている頃でしょうね」
メシアからではなく女神から答えが帰ってきたことに驚きつつ剣を構える。
女神がレンに追加の魔法を放つが全てが避けられるか、着られて霧散する。
そしてレンが仕返しとばかりに左手に持っていた太陽を女神にぶつける。
「これくらいは避けられるか」
「もちろんですよ」
女神は太陽を体をずらすだけで避け、爆発した爆風を利用して一気にレンの元まで移動する。
レンは近づいてきた女神に向かって0距離で氷の槍を放ち牽制しながら地面を蹴って距離をとる。
全ての槍を叩き落とした女神はレンに不満そうに声をかける。
「どうして逃げるのですか? 魔法の撃ち合いは楽しくないのですが」
「お前を楽しませるために戦っているわけじゃないからだよ」
(とは言っても魔法でこいつを倒すのは無理そうだな)
20メートルほど離れると即座に方向転換し、女神の前まで跳躍する。
しかし女神は全く驚いた素振りを見せず、長剣を振ってくる。アカギで対応しつつ、連撃を叩き込むが全て受け切られる。
「なん、で、そんなに、受けきれ、るん、だよ」
「はあ、あのですね、あなたに与えた天剣術は私の技術の一部ですよ、その一部に私が負けるわけにはいかないでしょう?」
女神が少し息切れ気味のレンに向かって連撃を畳み込む。まるで嵐のように全方向からくる斬撃をレンは全て受けきる。
「あらあら、息が上がってますよ、大丈夫ですか?」
女神がレンに向かってわかりやすい挑発をする。
だが女神を魔神のせいで憎んでいるレンはその挑発に乗り、女神に向かって不安定な体制で切りかかる。
だがしっかりと両足で地面を踏みしめている女神に不洗練な攻撃など意味があるはずがない。即座にアカギを弾かれ胴に一太刀入れられる。
「とでも思ったか? 俺は超回復持ちなんだ、息切れなんて起こらないんだよ」
それをアカギの柄で受け止める
「もちろん知っていますよ」
だが女神はそんなことを意にも介さず、アカギごとレンの体を地面に叩きつける。肺の中の空気が強制的に押し出され一瞬呼吸が出来なくなる。
動きが止まったレンの手足を付け根から切り落とし、蹴り飛ばす。そして空中に浮いたアカギを掴みレンの胸に向かって投擲する。見事に命中したアカギはレンの体を貫通し地面に刺さる。
女神は切り落とした手足を長剣で刺し、切り口から見える血管に指を入れてみたり筋肉をちぎったりと弄る。
「やはり胴体から再生するみたいですね。これから生えてくれば面白かったのですが…残念です。これは処分しておきますね」
長剣がさらに光り輝き、レンの手足を消滅させる。
「さて、まだ再生しきっていないみたいですね」
レンの手足はまだ半分ほどしか再生していない。
「あなたの絶対切断は切られたことすらわからないほどに綺麗に斬るスキル、それに対して私のエスクカリバーは『斬られた』勘違いするほどに斬る『確定切断』というスキルです。これに斬られると再生する度に削られていき斬られた状態のままになる。一度斬るだけの絶対切断よりも確実に斬れるスキルですね」
しかしレンは少しずつではあるが再生している。再生した部分が削られきる前に新たに再生しているのだ。
「オーガ以上の再生力ですね。しかしどこかに核でもあるのでしょうか? どれを破壊すれば再生しなくなるのか試してみたいですね」
ようやくレンの手足が再生しきる。
しかしアカギが邪魔で立つことが出来ず、右腕でアカギを掴んで体から抜く。
自分の血が付いたアカギを熱して血を蒸発させ油を飛ばす。
「意外と綺麗好きなのですね。そのまま戦うか、舌で舐めとるかすると思っていたのですが」
「そこまでするほど堕ちてはいない、さ」
レンが地面を蹴り女神に向かって飛ぶ、地面がめくり上がり次の瞬間には女神の前に着地していて剣を振り下ろそうとしている。
今まさに刀を振り下ろし女神の首を撥ねようとしているレンの手首を切り飛ばし、アカギごと手首を上に蹴り飛ばす。
そして驚くレンに剣を向け少し前にレンの手足を消滅さしたように光輝かせる。
そしてそのまま光を蓄えながらレンの体を切り刻んでいく。
「あなたは不死身じゃないんですよそれを本当にわかっていますか?でも死を恐れないのはとてもいいことです。あなたならこの状況でも即座に復活できるでしょうに何か策でもあるのでしょうか。さすがです。あなたを選んだ甲斐がありました。そうですね、あの刀が落ちてきたらあなたの墓標にしてあげましょう」
女神が語りかけている間、レンは全く動いていなかった。いや、正確にはレンだったミンチ肉に動きはない。
「さてどうやら溜まりきったみたいですね。反撃の1つもなく、ただ無様に切られ続けられるのは予想外でした。あなたはもっともっと動いて、戦って、命を削って、もっと私を楽しませてくれる、そう思っていたのですが…残念です。しかし本当に楽しい戦いでした。私の神生の中でもとても楽しめる戦いでした。
しかし本当に動きませんね、話している間に魔法を撃ってきたり、体を再生さしたり、出来そうなものなのですが。自爆覚悟で魔力の暴走、とかも無いようですし。うーん、このままあなたに動きがあるまで待ってもいいのですが、それはそれで興が冷めてしまいそうなのでさっさと殺してしまいますね」
女神は今まで保持していた剣の力を発動させ標準をレンに合わせる。
一瞬剣が光り、ものすごい轟音が鳴り響く。まるで目の前に隕石が落ちたようなお腹の底に響く轟音が鳴り響き辺り一面を砂煙が覆い隠す。しかしすぐにその砂煙が晴れる。女神が長剣を振り、砂煙を剣風で吹き飛ばしたのだ。
砂煙を吹き飛ばした女神はさっきまでレンがいた場所を見つめる。
レンがいた場所には直径5メートルほどの大穴が空いており、深さはゆうに50メートルを超えていて、そこが全く見えない。
タイトルを少し変更しました
挿絵の作者は人参先輩です