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第72話 騎士殺し

「それで、騎士をどうやって襲うのですか?」

「襲うのではなくて返り討ちにするだが。まあ、今回は魔法と剣でのゴリ押しだ」


 僕は屋敷の外に出て、何も無い所に向かって魔法を撃つ。

 槍状の氷を回転させて撃つ魔法だ。

 氷は僕の掌を離れてすぐに停止する。


「こうやって魔法をストックしておくんですか…」

「そうだ。これをいくつか作って騎士に撃ち出す」


 それと同時に屋敷を収納から出して自分達も外に出る。


「魔法は俺が作るからアオイ達は罠を回収してきてくれ。もうこの森に住んでいる奴らは敵じゃない」


 本当の敵はこの国だからな。


「さあすぐに始めよう」


 ───────────────────────


 外にいる数百人単位の騎士団から屋敷に向かっていくつかの魔法が撃ち込まれる。

 もちろん魔法や飛び道具に対する対策は完璧だ。

 と言ってもマインを屋根の上に載せているだけだがそれで十分だ。

 騎士達がこの森に着くまでに3日かかった。

 王都からこの森までは馬車で2日かかる。

 魔王を倒すために騎士が集めてあり、行軍の準備もされていたはず。

 つまりこの国の上層部は勇者が魔王になったと聞かされても少々の混乱だけですぐに持ち直し騎士を向かわせたと言うことだ。

 さすがだな。元々異世界からきた化け物が魔王になるのは不思議ではないってことなのか?


「ああ、本当に最低の奴らだな」

「レン様、勇者が呼んでいます。応じますか? 目障りなら私が切り捨てて来ますが」


 マインが屋根から戻ってきて報告してきた。

「お前は包囲されている。大人しく投稿しなさい」

 とでも言うのかな?

 まあ、呼んでいるのなら応じてやろう。

 屋敷の扉を全開にして黒いオーラ(ただの煙)を纏いながら勇者の元に向かう。

 こういう細かな演出が恐怖心を煽るんだよ。


「さて何の用だ。ここは俺の屋敷だが、魔法を撃ち込む理由があるのか?」


 少し低めの声を出して脅す。

 あ、この演技のモデルは「恋する少女と無情の騎士」に出てきた魔王だ。

 意外と奥が深く面白い本だった。

 最後の辺りで魔王に襲われそうになる姫を片腕を犠牲にして騎士が助けたのはかっこよかった。

 っと話がずれたな。

 魔王っぽい口調で話したにも関わらず勇者は平然としていた。


「さて、あなたに聞きたいことがあります」


 勇者が俺の方に向けていた剣を鞘にしまって聞いてきた。


「あなたはこの世界に仕える勇者だったはずです。こちら側に戻る事は出来ませんか?」


 勇者が味方にならないかと聞いてくる。

 実戦ならやってはいけない選択だ。しかし勇者は俺が人間に味方するかもしれないと本気で思っている訳では無い。

 その証拠に後ろの魔術師達は大きな魔法を構築しているし、勇者も剣の柄に手をかけている。特に魔法の方は既に中断することが出来ない。

 そして勇者に対する返答は決まっている。


「無理だな」

「そうですか。…殺ってください」


 勇者の指示に従って後ろの魔術師達が魔法を撃ってくる。

 だが上から降ってきたマインの剣によって真っ二つにされる。


「なっ、馬鹿な」

「そんな…」

「くそ、化け物が」


 三者三様の騎士達を斬り殺す。

 どの騎士もある程度の強さを持っているが俺に傷を負わせられる強さの騎士はいなかったようだ。


「──っ」


 騎士達相手に無双していたマインに勇者が襲いかかる。

 マインの絶対切断で斬られても剣には傷一つ付いていない。

 勇者のスキルかな?

 っと、その前に騎士達を片付けないとな、いくら楽に倒せると言ってもさすがに多勢に無勢だ。


「なのでこうして殲滅しようと思う」


 指をパチリと鳴らし背中に魔法陣を出す。その魔法陣からストックしておいた魔法の数々を撃ち込んで殲滅する。

 氷の槍、爆発する火の矢、石の弾丸、風の刃、それに沢山作ったナイフも風魔法を使って飛ばす。

 騎士達は魔法が撃ち込まれることを想定した訓練をしているはずだがまるで雨のように降り注いでる魔法を防ぎきるのは無理だったようだ。

 剣で魔法を叩き切ろうとした騎士は氷の槍に頭を貫かれ、魔法で盾を作った魔術師は火の矢に盾を壊されて風の刃でズタズタに切り裂かれ肉を撒き散らし、火魔法で氷の槍を溶かそうとした騎士は石の弾丸に体を抉られて内蔵を地面に落とす。


「レン様、こいつはどうしますか?」


 マインに呼ばれて振り返ると血だらけになった勇者と同じく傷だらけのマインがいた。

 そしてマインは勇者の首に剣の刃を押し付けていた。


「ああ、まだ殺さないでくれ。聞きたいことがあるんだよ」


 俺は勇者のそばまで歩いて行く。


「さて、女神から何か貰わなかったか?」

「貴様に教えることなど何も無い」


 そう言って勇者は口を閉じた。



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