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第71話 旅の仕切り直しを

「れ、レンくん、大丈夫ですか…」

「レン様、何処か具合が悪いところはありますか?」


 女神達のところから自分の体に戻り、目を開けてみるとアオイ達が心配していてくれた。

 体を起こそうとするとすぐに止められる。


「まだ寝ていてください。数日間寝込んでいたんですから…」


 どうやら本当に魔王召喚の日に帰されたみたいだな。


「そ、そうです。村の位置がわかったんですよ。少し休んだらすぐに向かいましょう…」


 アオイ、もしかして励ましてくれているのか?


「そんなに酷い顔なのか?」


 するとアオイが無言で羽から手鏡を出して僕に向けてきた。


「ああ、確かに酷い顔だな」


 その鏡に映っていた男は全てを諦めたように目から光を失い、力なく口を開いていた。まるで、まるで死人のようだ。


「れ、レンくん、何があったのかわかりませんが、元気を出してください。少し休んだらまた戦えますよ」

「いや、もういい」

「いいって何がいいんですか…」


 アオイが少し怒ったように聞いてくる。


「レンくんに何があったのか私にはわかりません。どれだけ辛かったのかもわかりません。でも立ち止まるのだけはやめてください…」


 アオイが励まそうと声をかけてくるが、続きを聞く前にマインが僕に切りかかってきた。

 反射的にマインの攻撃を避ける。


「何をするんだ、マイン」

「私はレン様が好きだから付いてきているんです」


 その間もマインは攻撃の手を緩めない。


「でも──今のレン様は全然かっこよくない。今までみたいに一緒にいたいとは思えない。だから森で言った通り」


 ──死んでください

 マインがその言葉を言ったと同時に攻撃を避け損なったレンの首が飛ぶ。


「やはり手応えがなかったですね。それにアオイ、あなたは私がレン様の敵になったら私を殺す、と、言っていたのではないですか?」

「そうですよ。でも──」


 アオイが再生したレンを指さす。その指の先をみたマインが突然笑いだす。


「あっ、ははは」

「マインのお陰で元の、私を救ってくれた時のレンくんに戻ってくれましたから…」

「ははは、すごい、たった1度、首を切り落としただけでもう瞳に憎しみの炎を宿しているなんて。さすがです。それでこそレン様ですよ」


 マインが笑っていて、アオイは嬉しそうに微笑んでいる。

 憎しみ? ああ、確かに今、俺は何もかもを憎んでいる。


「アオイ、村を襲うのはやめだ。数日以内に騎士達がここに来るだろう。そいつらを潰す」

「なぜ騎士達に襲われるのですか?」

「俺が」


 レンは静かに息を吸ってしっかりとした口調で言い切る。


「魔王になったからだ」

「ということはこの国を乗っ取る気ですか?」

「そうだ。付いてきてくれるか?」

「もちろんですよ…」

「楽しそうですね」

「ああ、楽しくなるよ。このくそったれな国を乗っ取るのだからな」


 ───────────────────────


「サリア、一体何をしたんだ?」


 ついさっきまで魔王と喋っていた妹に聞く。

 サリアはとても楽しそうに魔王がいた椅子を見ていたが私の声を聞いて私の方に体を向けた。


「何をって何のこと?」

「とぼけるのか? さっきまでクレナイ レンと喋っていたことだ。なぜまたここに呼んだんだ」

「だってクレナイさんは私達のゲームのラスボスだよ。それも適当に作った訳じゃなく計画的に作ったラスボス。それがあれじゃ楽しめないじゃない」


 確かにこちらに呼び出した時から生きることを諦めたようにぼんやりしていた。


「だが、様々なことを吹き込んだり、感情を操作して憎しみを国に向けるのはやりすぎではないか?」

「大丈夫だよ。それと少しだけ知識と力を与えておいたからもっと楽しめそうだね。もっとも記憶を消しておいたからクレナイさんは覚えていないと思うけど」


 サリアがクレナイ レンの姿を水晶で見ながら答えた。

 やはりサリアは私の妹ながら随分と非情な子になったようだ。元々私は人を裁くために感情をあまり持たずに作られたが、感情を持っているはずのサリアが人の人生を勝手に弄っているのを見ると少し不安になる。

 いずれ暴走しそうな感じだな。


 私が下界に降りて魔王と戦うためには人間達からの祈りがなければいけないという設定になっている。

 そのためにあるアイテムを勇者に持たしておいた。

 人々の祈りを集めて作ったということにしてあるアレは持ち主が瀕死の時に発動して私が下界に召喚される。

 そして私が全力を持って魔王を倒す。

 果たしてどれだけ魔王が強くなっているのかわからないが出来るだけ楽しめればいいな。


「姉様はどのスキルを持っていくの?」


 スキルが載った本をクルクル回しながら聞いてくる。


「スキルは何も持っていかない。そんな物に頼ってはゲームが楽しめない。この体とエクスカリバーだけで十分だ」


 腰に差してある剣を抜いて刃を眺める。


「それって確かクレナイさんが欲しいって言っていた奴じゃないの?」

「そうだ。だが私の愛剣を渡すわけにはいかないからな」

「姉様も相当の戦闘狂だと思うよ」


 馬鹿なことを言っているサリアの頭をエクスカリバーの腹で殴る。

 とてもいい音がしてサリアが頭を抱えて蹲る。


「さて、世界を滅ぼす魔王と世界を救う勇者、2つの力を与えたんだ。私の元にたどり着くまでくらいは無双してもらいたいものだな」



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