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第64話 地獄

 宿に帰るとそこには地獄があった。


「……………」


 ミイが気絶していて、


「全く、これくらいで音を上げるなんてまだまだですね…」


 アオイが呆れていて、


「グフ、グフフフ」


 マインが怖くなっていた。

 どうしてこうなったんだろう?とりあえずマインの頭を叩いて正常に戻す。


「痛い、どうして叩くのですか?」

「そんな恨みがましい目で見るな。先にこの状況を説明しろ」

「説明しろって言われましても」


 マインが部屋をくるりと見回して順番に指さしつつ。


「ミイが情けないことに気を失って、それをアオイが呆れて、私が可愛らしく笑っていただけですが」


 可愛らしくは無いな。滅茶苦茶怖かったし。「グフ、グフフフ」はやばいだろ、どう考えてもボスの笑い方だろ。


「それで一体何があったんだ?」

「えーと、それはですね」


 すっごいニコニコしながら話しかけてくる。正直言ってうざい。


「まず、アオイと一緒に街の外までミイの修行をしに行ったのですよ。丁度街の外に森が開けた場所があったのでそこで修行したのですが私の全力に5分も耐えられなかったんですよ。貧弱ですね」


「人斬り」って呼ばれていてチートスキル持ちで魔王の右腕のマインに料理スキルしか持っていない普通の奴隷のミイが敵わなくてもいいんじゃないかな?


「それでマインが『やはりレン様を守れるのは私だけですね』とか言い出したので私がレンくんを守りますって言ったんです…」

「なのでちょっと喧嘩してきました。少し森の中の空き地が広がったのですが好都合でした」


 マインとアオイが「ちょっと喧嘩したらガラスが割れちゃいました」みたいなノリで言ってるけど喧嘩で地形変えるってどんだけ化け物なんだよ。

 というか好都合?


「好都合って何が好都合なんだ?」

「ほら、レン様はミイに御者をやらせようとしているのですよね」

「そうだな」

「なので乗馬スキルを上げてもらおうかと」


 乗馬スキルを上げる?確かスキルを上げるには反復練習が必要だったはずだけど。


「まさか馬に乗っけて走らせ続けたのか?」

「はい、アオイの回復魔法で疲れが取れることを知っていたので馬は元気ですよ」


 うわあ、ミイが起きたら励ましてやろう。

 しかしスキルが気になったので鑑定してみる。


 名前|ミイ

 種族|人(信者)

 性別|女

 年齢|10

 スキル|料理Lv2 乗馬Lv2


 おお、少し前までは無かった乗馬がLv2まで上がっている。ミイを拾ってから御者を任せてたからな、今日の修行でレベルが上がったのだろう。

 それと人(奴隷)だったのが人(信者)になってるな。新しく宗教にでも入ったのかな?

 よく見るとミイの体には小さな擦り傷が沢山ついていた。

 本当に頑張ったんだな。とかしみじみ思っていたのにマインが余計なことを言って邪魔してくる。


「でも何故か4時間くらいでミイが倒れたんですよ」


 4時間ってミイは小柄な10歳の女の子だぞそりゃ倒れるだろ。


「ミイが倒れたので仕方なく休憩したんですよ。そしたらその森にアジトがある盗賊さんたちにばったり会いまして殺っておきました」

「殺ったら駄目だろ。もったいないじゃないか」


 殺ったらギルドでお金が貰えないじゃないか。全く駄目な子だなマインは。


「いえ、どうやら賞金首だったようで死体でも問題なかったです。アジトも潰したのでお宝が増えましたよ」


 なんだ、賞金首だったのか。しかしこれで足りそうだな。


「金貨を30枚ほど使いたいんだが宝石とかを売って用意出来そうか?」

「それくらいなら用意出来そうですね。盗賊も賞金が掛かるだけあって沢山溜め込んでましたから」

「溜め込んでた物は屋敷あるよな。換金してくるよ」

「いえ、レン様が行く必要はありません」


 そう言ってマインは気絶中のミイに近づいて蹴り起こした。


「フギュ」

「って何をやってるんだよ」


 ミイが呻き声と共に起きる。


「この宝石を換金してきてください」

「わかったです」


 マインが白い袋をミイに渡して部屋から蹴り出す。

 仲間内で上下関係が出来たな。

 いや、ミイは奴隷だからこれが普通なのか?

 しかしこれでお金の心配は無くなったな。


「さて今日の夜ご飯は何にしようかな」


 するとアオイが天使の羽から何かの箱を取り出して渡してきた。


「これは何なんだ?」

「イクラ焼きというこの街の名物らしいです…」


 イクラ焼き?何処で売っていたんだろう? 僕が市場で店を回っていた時は全然見なかったんだけどな。


「関所の近くで沢山売っていましたよ…」


 なるほど。疑問が解消出来たところでイクラ焼きの箱を開ける。

 イクラ焼きは魚のすり身をハンバーグのように焼いた物で香ばしい匂いがする。

 そして枚数が3枚しかない。



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