第56話 奴隷
「奴隷はお風呂に入れたりしないのか?」
「当たり前です。レン様はナイフが汚れた時にお風呂で洗いますか?」
ナイフが汚れた時の手入れの仕方は、確か…
「濡れた雑巾で拭うな」
「それと同じです。濡らした雑巾を投げ付けとけばいいんですよ」
なるほど、完全に人権という物がないみたいだな。しかし女の子、それも僕の所有物が汚いのは嫌だから洗うことにする。
ミイを連れてお風呂場に向かっている。
今のミイは泥だらけで少し獣臭い。それに服も布を被っているだけで服を着ているとは言い難い。
それと今からお風呂に入れようとしているのにすごくマインが五月蝿い。
「奴隷なんてほっとけばいいじゃないですか」
「だいたいそれはレン様の物なんですから仕事をさせたらいいじゃないですか」
「そんな屑よりも猫の世話をしましょうよ」
本当に五月蝿い。しかしこのハクとミイを何処で拾ってきたんだろう。
「あの木箱って何処で拾ってきたんだ?」
「森の中ですよ。普通に捨ててありました」
何と、本当に捨て猫だったのか、ハクは。そしてミイは捨て奴隷?なのか。
お風呂場に着いたのでアオイにオークのお肉を焼かせに行かせてミイ(とマインに頼まれたのでハクも)を洗う。
ハクは桶に水を張って中に入れる。首が出る程度に水を張ってあるので溺れはしない。
そこに少しだけ石鹸を入れて少し毛を濡らす。ただ触ると震えているのがわかるのでそこまでで止める。怯えているのかな?
次にミイを洗う。ミイの髪は銀色で泥を落とすとその綺麗な銀色が見えてきた。
肌も洗うと白くなってきた。元が相当泥だらけだったからな。ミイを泡だらけにして洗っているうちにハクが桶から出て泡だらけのミイに突っ込んだ。
丁度いいのでミイも洗う。
その後数分間ほど洗った結果、ミイとハクは綺麗になった。
ミイは銀髪に白い肌の女の子に、ハクは真っ白な猫に変わった。
まだミイの顔は青白く、とても痩せている。それに髪もボサボサで目にかかっていて見にくそうだ。後で切ってあげよう。
ミイ、マイン(とハク)を連れて食堂に向かう。洗ってる時からだけどミイに触れる度にビクってなって怯えているのがよくわかる。そんなに怖いのだろうか。
食堂ではマインがお肉を焼いてくれていた。それにスープのような物も作ってあった。
「このスープは何で作ったんだ?」
するとアオイは僕に冷ややかな目を向けてきた。
「いきなりお肉なんか食べさしたら胃もたれしますよ…」
なるほどそれは考えて無かったな。
それで一体これは何のスープなんだろう。
「ポタトのスープですよ」
なるほどつまりポテトスープか。
そういえばハクは一体何を食べるのだろう?やっぱり魚かな?
メシア)この世界の猫は魚ではなく肉を主食とします。特に生の肉を好みます。
ふむ、確かライオンも猫の仲間だった気がするし生肉が主食でも不思議はないな。
「この世界の猫は肉が主食みたいだ」
「そうなんですか。それでは食料庫からお肉を取ってきてもらえますか…」
ん?何でわざわざ生肉を取りに行かないと行けないんだ?
「そこのオーク肉を食べさせたらいいんじゃないか?」
「どうやら焼いた肉はあまり好みじゃないみたいなので…」
アオイが焼いたオーク肉が乗った皿を地面に寝そべっているハクの前に置く。だけどハクは僕の方を見つめるばっかりで全く食べようとしない。
「確かにそうみたいだな」
僕は隣に立っていたミイを近くの椅子に座らせてスプーンを握らせる。
握ったのを確認して食堂を出た。
マインがたくさん取ってきた猪の肉にするか。
食料庫の扉を開けると死体の山が残っていた。
そういえば解体の途中でミイを発見したんだっけ。
山になってると言ってもそう何十体もいる訳では無い。解体し終わったのも合わせて10体と少しくらいだろう。だけど1体1体が1メートル半を越していてまるまる太っているので山になっている訳だ。正直、すごい邪魔だ。
少しうんざりしつつ僕は解体作業に取り掛かった。
数十分ほど掛かったが全てを解体仕切ることが出来た。1体目で解体スキルを修得出来たのが良かった。最後の1体はほとんど時間が掛からなかった。おそらく解体スキルのLvが上がったのだろう。
しかしこの猪の肉だけで1メートル四方の木箱が10個近く埋まった。骨も大量に出た。まあ、とても美味しいので文句は無いが。
そういえば猫を買ってた(ネットの)友達がいたな。確か
「壁で爪を研ごうとするから壁がズタズタになっちゃったんだよ。でもそこも可愛いんだよな」
とか言ってたな。爪とぎ用の何かを作っておくか。
猪の肉を少し持って食料庫の向かいにある材料倉庫に向かう。
材料庫は食料庫と同じ仕組みになっていて広さは同じくらいだ。ただ中に入っているのは食料ではなく、骨や毛皮、鉄、それにブラなんちゃらとか言う木もここに入れてある。
さてどうやって作ろうか。
とりあえず土台を木で作り、それに縦に裂いて捻った木の繊維を巻き付けて固定する。これでいいかな?
ついでに木で猫用の皿を作って肉を中に入れる。
これでもう作らないといけないものはないな。
メシア)ミイの髪を切るための鋏を作った方がいいと思われます。
そうだった。ミイの髪がボサボサで長かったからアオイに切ってもらうんだっけ。
何でお前が切らないんだって?
僕に女子の髪型がわかるわけがないだろ。センスもないし。それにマインに任せると余計な物まで切っちゃいそうだからな。これに関してはアオイが適任だ。
アオイ達が掘ってくれた鉄鉱石から鉄を取り出して錬金術で加工する。これも鍛冶の範疇だったようでとても切れ味がいい鋏が出来た。
作りたい物は作り終えたので食堂に向かう。
食堂ではアオイ達が席に着いて雑談していたみたいだ。
何を話していたんだろう。
「2人は何を話していたんだ?」