第55話 猫
猫の鳴き声ってなんだ?
ここは収納の中で動物の鳴き声なんか聞こえるはずがないんだけどな。
ん? そういえば「お腹空かせているかも知れませんし」言っていたような。
「まさか猫を拾ってきたのか?」
「あっ、そうでした。そこの木箱に入ってますよ」
そういってマインは獣の死体の横に置かれた木箱を指差した。
その木箱の縁に小さな猫が前足を乗っけてこちらを見ていた。
「可愛い…」
アオイが猫の方に向かって歩きだした。アオイって猫好きだったのかな?
でも確かに可愛いな。少し泥で汚れているが白い猫だ。首輪は付いていない。野良猫かな? あ、そもそもこの世界に、首輪があるのか分からないな。
それに大きな箱だな。体長が30センチもなさそうな猫が1匹入るには大きすぎる。横1メートルはありそうだな。
「あれ? まだ奥に何かいますね…」
アオイが木箱の奥を覗きながら言ってきた。
まだいたのか通りででかい訳だ。
「この子は首輪がついているみたいですね」
アオイが木箱に手を突っ込みながら言った。
しかしこの世界でも猫に首輪を付けるみたいだな。それならやっぱりあの白猫は野良なのかな?
「ほら白い革の首輪が付いてますよ」
アオイが木箱の奥にいた人間の女の子の首を掴んで見せてきた。
僕が見たのを確認すると、持ち上げていた女の子を横にポイってして白猫を抱き上げた。
え? 何で女の子が木箱に入れられているんだ?
と、とりあえず鑑定を
名前|
種族|人(奴隷)
性別|女
年齢|10
スキル|料理Lv2 (空き)
装備|従属の首輪
あれ?名前が無いな。それに従属の首輪ってなんだ?
うーん、とりあえずメシア先生宜しく。
メシア)名前が無いのは従属の首輪を嵌めたためです。従属の首輪は対象を奴隷化し名前を奪います。この状態で名付けるとそれが名前になります。おそらく前の主人に捨てられたことにより、名前がリセットされたのだと思われます。
ふむ、つまりこの首輪を付けて主人を登録すると奴隷が手に入ると。
しかし名前か。女の子の名前を付けたことはないからな。やはりシャルとかエミリアとかがいいのかな?
「この猫の名前はどうしましょうか…」
「そうですね、ハクはどうですか」
「いえ、やはりミイでしょう…」
うーんさっきから首輪を外そうと頑張っているけど全然取れないな。
「絶対にハクがいいです」
「ミイの方が可愛いです…」
いや、君達この子心配してあげなよ。
その間もカチャカチャやっていたら首輪が光って白い色から黒に変わった。
「じゃあその子の名前がミイでこの猫の名前がハクこれで決まりです」
マインがそう言い切った途端、女の子の体が一瞬淡く光った。
まさかさっきのマインの言葉で…
メシア)はい、マインの言葉により名前がミイに決まりました。その女の子は今よりマスターが所有する奴隷 ミイ です。
何で僕が所有していることになっているんだ?こういうのには普通奴隷術とかのスキルがいるんじゃないのか?
メシア)奴隷術でしたらついさっき、マスターが首輪を弄っていた時に修得しました。
勇者スキルって化け物スキルだな。
とりあえずこの子をお風呂に入れないと。さすがに女の子がいつまでも泥だらけなのはダメだろう。
「なぜミイがダメなんですか…」
「ハクの方が可愛いからです」
ああ、猫の問題もあったな。
「猫の名前はハクで決定。それよりこの子をお風呂に入れるから手伝ってくれ」
言い争っているアオイとマインにそう言って猫を攫う。
2人が同時に僕の方を驚いた表情で見て
「その猫の名前をハクにするんですか…」
「その首輪を付けているってことは奴隷ですよね。奴隷をお風呂に入れるのですか?」
同時に質問された。アオイからは猫の名前を、マインからは奴隷のことを。
「とりあえずアオイはさっさと猫の話から離れろ。お前も人間なんだから人の心配して上げろよ」
アオイが羽を出し、猫の方を見ながら言った。
「私は天使なので人間のことはそんなに興味が無いんですよ…」
元は人間だろうが。
っと、怒鳴りたくなったのを堪えてマインに聞く。
「奴隷はお風呂に入れたりしないのか?」
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