第50話 馬車での移動はそろそろ飽きてきました
受付嬢からの見送りを背に僕らはギルドを後にした。
ギルドを出てすぐに隣を歩いていたアオイが僕の方を向いた。
「どうしてレンくんはあの受付嬢に敬語を使うんですか…」
突然質問された。
しかし何と答えようかな。明確な理由がある訳じゃないんだよな。
ま、そのまま伝えたらいいか。
「理由なんて無いな。ただあの人は僕の本能が逆らわない方がいいって言っているんだよな」
アオイが弓を出し、マインが隠し持っていたナイフを取り出して構える。
「レンくんの敵ですか…」
「レン様、あの女を殺しますか?」
どうしてすぐに殺そうとするのかな?
「敵でもないし殺しもしないよ。大体敵ならあんなに親切に接してくれるわけがないだろ」
親切な人はいい人だ。日本にいた時に読んだ本に載っていたと思う。
「それならいいんですけどね…」
「それよりもそろそろ馬車を出すぞ」
アオイとマインが頷き道の端による。
2人が離れたのを確認してから魔法陣を出す。
馬車を持ち運べるのは楽だな。
「今回は私が御者をしますね」
「ああ、頼んだぞ」
「出来るだけ揺らさないようにお願いします…」
アオイが心底嫌そうにマインに頼んだ。
そんなに酔うかな?僕は全く酔わなかったけど。
メシア)マスターが酔わないのは状態異常耐性の影響です。マスターの操縦は状態異常耐性を持っていないアオイにとってはトラウマになるほど怖い体験だったと思われます。
そんなに速かったのか。うん、これからは出来るだけ自重しよう。
さてマインに御者をやって貰っている間にやらないといけないことがあるんだよな。さっさとやってしまうか。
僕は魔法陣を出して収納の中に入った。
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メシア)マスター、そろそろ夜になります。
ありがとうメシア。こちらも準備が終わったよ。
僕は魔法陣を出して馬車の中に戻る。
「あ、レンくん戻ってきたんですね…」
「ああ、もう夜だからなご飯食べて寝よう」
マインが御者台から戻ってくる。
「テントを出すのですか?」
「いや、まずは収納の中に入ってくれ」
不思議そうな2人の近くに魔法陣を出す。2人が魔法陣に入ったのを確認して僕と一緒に収納の中に移動する。
「これは屋敷、ですか…」
「どうしてここに屋敷があるのですか?」
よし、ドッキリは大成功みたいだな。
元々ここにあったテントと魔法を使って屋敷を作ってたんだよ。
部屋も多くて庭もある。それと畑こ太陽も12時間毎に暗くなったり明るくなったりする。この太陽はメシア先生に手伝ってもらって消さなくてもいいようにしている、つまり月だ。
まあ、ネタバレをする気は無いけどな。
人知れず努力する、なんかカッコイイ。
「なるほど、馬車に乗ってすぐに収納に入っていったと思ったら、これを作ってたんですね…」
「テントを元に魔法で大きくしたんですね。流石です」
うわぁバレてたのか。人知れず努力するとか言ってた自分が恥ずかしい。
「キッチンはあるのですか…」
「勿論あるよ」
キッチンだけでなく食料庫や寝室、お風呂なども完備してある。
「お肉さえあれば数年は生きていけそうですね」
マインが寝室を見ながらそんなことを言ってきた。
実際ここで生活出来るように屋敷を作ったからな。それに畑を作ろうと思ったのも女神の所で収納の中に入れることを知ったからだからな。
「レンくん、ご飯用意してありました…」
「レン様が用意したんですか?」
アオイが食堂から戻ってきた。
僕が作った料理を見つけたみたいだな。
前回の反省も活かして少しLvを下げて作ったから美味しすぎて泣くことは無いだろう。
「そうだよ。それじゃ冷めはしないけど早めに食べようか」
やりました、ついに50話です。
ここまで来るのに3ヶ月もかかりましたが無事に50話を投稿できました。
ただ修学旅行のせいでこの瞬間に立ち会えなかったのは残念です。
このあともまだまだ続くので、魔王勇者の無双の旅を宜しくお願いします。