第49話 浦島太郎
「レンくん、起きてください…」
今日はアオイが起こしに来た。
女の子に起こされてばっかりだな、だって?
失敬な、僕だって一回だけだけど自分で起きたぞ。
大体何か問題が起こるのが悪いんだよ。起こらなかったら自分で起きれるのに。
ん? てことは何か問題でも起きたのか?
「何かあったのか?」
「レンくんは今日でここに何日泊まったか覚えてますか…」
質問で返された。
「疑問文に疑問文で返せと学校で習ったのか!」
と返したいのだけど、ネタとはいえ女の子の額を人差し指でグリグリするのは難易度が高い。
っと、そうじゃなかった。えーと、今日で…3日目だな。
「今日で3日目だぞ」
その言葉を聞いてアオイがやっぱり、みたいな顔をしている。
「落ち着いて聞いてください。今日で7日目ということになっています…」
なん、だ、と。まさか4日も寝込んでいたと言うのか。
いや、待て。さっきアオイは
「──ということになっています…」
って言っていた。わざわざそんな言い方をする必要があるだろうか。
「私達も今日で3日目だと思ってました…」
うーん、わからん。とりあえずメシア先生、説明お願いします。
メシア)マスター達が収納に入っている際、マスター達の時間流が遅くなりました。その為収納内にいた約1時間の間に現実世界では4日も経過していました。
何と浦島太郎と似たような事が起こっていたのか。
マインも部屋に戻って来ていたみたいなので2人にメシア先生から聞いた説明をしてあげる。
「浦島太郎みたいですね…」
やっぱりアオイも思い浮かべたか。
「それよりもどうして7日目ってわかったんだ?」
「元々7日間泊まる予定だったんですよ…」
「それで追加で泊まるのかレン様に聞きに来たんですよ」
なるほど、どうしようかな。何かクエストでも受けに行こうかな。
「それなら一旦ここを出て少しクエストを消化しよう」
「わかりました…」
そうと決まったら早めに荷物をまとめて収納に入れておく。
「もう忘れ物は無いな」
「はい。準備出来ました」
よしこれでクエストを受けられるな。
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とか思っている時期がありました。
今更だけどランクFの冒険者が受けることの出来るクエストなんて採集や雑用ばっかりだったんだっけ。僕はDだけどアオイ達はまだFだからな。
「クエストを探しているのですか?」
受付嬢が聞いてきた。
まあ10分以上クエストボードの前で立ち止まっていたらそうだろうな。
「クエストで良さそうなのが見つからないのでしたら納品用の魔獣を狩ってみたらいかがでしょうか」
納品用? ああ、オークとかの肉をギルドが買い取ってくれるんだっけ。何でも雑貨屋より安く買い取る代わりにポイントが貰えるんだっけ。
「納品用の魔獣の出る場所がわからないんですよ」
フェンリルの森に魔獣が出るのは知っているがオークの出現場所なんて知る訳が無い。
「それならエメラ山に出てくる革トカゲが借りやすいと思います」
革トカゲか。なんか弱そうだな。
「とても弱い魔物なのですが動きが素早く剣や矢での攻撃が当たらず魔法を使うと革製品の材料になる丈夫な革が焦げてしましい使い物にならなくなってしまうのです」
それを初心者に進めるのか?
「た、ただこのトカゲ1匹でそうの相当の金額が稼げるので戦闘の訓練も兼ねて初心者に進めているんですよ」
僕の不安そうな顔を見て慌ててフォローを入れてきた。
しかし相当の金額か。幾らぐらいなんだろう。
メシア)傷が少なければ最大銀貨30枚です。
何だと。銀貨30枚だろ。相当な金額じゃないか。
それは稼げるな。
「じゃあそこに行くことします」
「頑張ってください。沢山の魔獣を狩れることを願ってます」
受付嬢からの見送りを背に僕らはギルドを後にした。