第47話 雑貨屋
マインがドンと胸を張った。
そんなマインに連れられ市場にやってきた。
マインが入っていったのは何と雑貨屋だった。
「本当に大丈夫なのか?」
森を出た時に料理を任せたら悲惨な目にあった。買った種が人食植物だとか洒落にならん。
「農村出身の人なら種の目利きくらい簡単ですよ」
そういえばマインは農村出身なんだっけ。それなら種の目利きは信用出来るけど
「種を買うのになんで雑貨屋に来ているんだ?」
右を見れば剣が、左を見れば防具が、上を見れば魔物の骨を使った装飾が飾られているこの店はギルド公認の雑貨屋だ。
普通の武器屋と違いここにはポーションや水筒、治療薬、保存食、この辺りの地図が売っている。
もちろん農作用の種などない。
本当にここで種が買えるのだろうか?
「ギルド公認の雑貨屋は買取もやっているのですよ。だから冒険者達は魔物の皮や骨、トレント種の枝などのギルドに納品しない物は雑貨屋に売りに来るんです」
ああ、持ち物の買取をしてくれるのか。ゲームでもよく見るな。僕がやっていたゲームではギルドで買い取ってくれたんだけどな。
「時々種を売りに来る冒険者もいるので魔物や薬草の種ならここに来た方が早いんですよ」
「その通りだ。ほら嬢ちゃん、トレントと薬草の種だ。育て方はわかるか?」
腕や顔に傷がある強面の男がマインにいくつかの小さな袋を手渡した。
マインは銀貨3枚を払って種が入った袋を僕に渡してくる。
「大丈夫です。農村出身なので」
「そうかまた何か必要になったらここに来てくれ」
良い人そうだな。やはりこの世界でも見た目で判断するのはダメだな。
ついでにここでいくつかの物を買う。
「それではレン様次は野菜の種を買いましょう」
「そうだな。何か欲しい野菜があるか?」
大きな盾を見ているアオイに聞いてみる。僕らの料理長だからな一応聞いておこう。
「ポタトとキャレット、レテスの3つがよく使いますね…」
ポタトはサツマイモの様な形のジャガイモだ。50センチ大のポタトを見た時は何事かと思った。
キャレットは所々穴が空いている人参だ。虫が食っている訳でもなく成長の過程で穴が開くらしい。
最後のレテスは少し空を飛ぶだけの普通のレタスだ。
どれもこの世界ではよく栽培されていて料理にもよく使われている。塩があまり取れないこの国では塩よりも使用頻度が高い。
「それなら農業ギルドで買えますね」
「農業ギルドってなんだ?」
「それはですね」
マイン曰く農業ギルドは作物関係の品を扱っているギルドらしい。ただし相場よりも少し値段が高いらしい。その代わり質は信頼出来るので珍しい物以外ならギルドで買った方が良いのだという。
そんな訳で農業ギルドに行ってきて種を買ってきた。
農業ギルドはまるで市役所のように淡々と事務仕事をこなしていた。
ここで買ったのはポタト、キャレット、レテスの3つとイチギ草、トメトの種も買った。
イチギ草は苺でトメトはトマトだ。他の野菜と違って日本で見たものと変わりはない。
「それではレン様お願いします」
「わかった」
地面に青い魔法陣を出してアオイとマイン、それに僕が乗る。
僕の収納に僕自身が入れるのか心配だったけど生物だろうが魔法だろうが入れることが出来る収納先生には僕も入れることが出来たので今は何の躊躇もなく収納の中に入れる。
自分のポケットに入っているみたいで少し変な感じだけど問題は無い。
「ここがレン様の収納の中ですか」
「真っ白ですね…」
マインの言う通り収納の中は白一色だった。白い空間の所々に入れた物が浮かんでいる。
「レンくんどれだけ収納に入れているんですか…」
「ははは…」
アオイが驚きを通り越して呆れている。
僕らの足の下、そこには星があった。
「何処で星なんか見つけてきたんですか?」
「作ったんだよ」
「?」
少し説明が足りなかったかな?
太陽の持続に使っている分以外の魔力で土を作り続けたら星が出来てたんだよ。
お陰で魔力も昨日の練習後の20倍になった。
「それにどうしてゴブリン豆がもう育っているんですか?」
「ゴブリン豆だけを加速したんだ」
「加速ですか…」
便利な収納先生の能力の1つ、時間操作。収納の中だけだが時間を操作出来る。
これもメシア先生から教えて貰ったものだけどとても活用させて貰っている。
「私達も加速できるのですか?」