第38話 レストラン
「そろそろメニュー選びませんか?」
「そんなこと言ってもなぁ」
「この世界の料理を知らないので選べないんですよ…」
「店員に聞けば教えてくれますよ」
マインの提案を採用して店員に聞いた結果
僕|エルフライ定食
アオイ|シキン定食
マイン|コルテッタ
を頼んだ。僕のエルフライは山に住んでいるエルというイノシシのお肉のフライらしい。アオイのシキンは川魚の一種でこの辺りではよく取れる魚だそうだ。
コルテッタはこの国の伝統料理でマインのお母さんがよく作ってくれたらしい。
話を聞いてみる限りラタトゥイユみたいな料理だろう。
そんなことを考えていたら料理が来た。
「エルフライ定食とシキン定食、コルテッタです」
「ありがとう」
さてイノシシのフライだが見た目は普通のフライドチキンだ。黄金色の衣を纏って美味しそうな匂いを撒き散らしている。
「いただきます」
エルフライをフォーク(バターナイフの先を捻って細くしたような道具)で刺し口に運…ぼうとしたがマインが不思議な顔をしていたのでやめた。だってエルフライの食べ方を知らないのだもの。「レン様はこのソースを使わないのですか?」とか言われたら頓死する自信があるぞ。
こういう時は聞いてみるに限る。(2回目)
「マイン、何が不思議なんだ?」
「どうしてレン様は食べる前に「いただきます」と言うのですか?」
ああ、この世界には食事の前の挨拶がないのかな?
メシア)いえ、ありますよ。メナール教食前の言葉を殆どの人が使用しています。
なるほど、それなら説明しやすいな。
「メナール教の食前の言葉と同じような物だよ」
「それも異世界の文化なんですか?」
「そうだよ。僕らの国の文化だよ」
「そうですか。ではいただきます」
マインはメナール教の信徒では無いみたいだな。
それに日本の文化が認められるっていうのは嬉しいことなんだな。前の勇者も日本の文化を広める時に同じ気持ちになったのだろうか。
「レンくん、冷めないうちに食べちゃいましょう…」
「そうだな」
しんみりしていた気持ちはポケットにしまって(捨てる勇気はなかった)今はエルフライ定食に集中しよう。
まずは1口。ふむふむ、食感はフライドチキンを硬くした感じかな。
「味はどうですか?レンくん」
「完全にエビだな」
そう、このエルフライはエビフライの味がするのだ。そのくせに食感が硬い肉そのものだから質が悪い。それにこの肉は火を通さないとエビの味が出ないらしい。寿司にして食べたかったのにな。
「アオイの方はどうなんだ?」
「食感や見た目は魚のフライですけど味は鶏肉ですね…」
鶏肉か、それなら唐揚げとかも作れそうだな。いや、この世界には醤油がないのか。豆があったら錬金術でなんとか出来そうなんだけどな。
メシア)大豆でしたら似たような豆が山で採れます。ゴブリン豆と言い、山から土を持ってきたらどこでも作れるがあまり美味しくない物として知られています。
そういえばマインは山の近くに住んでいてよく遊びに行っていたって言ってたな。ゴブリン豆がありそうな所を知っていないかな?
「マイン、ちょっと質問してもいいか?」
どうしてそんなことをいちいち聞くんだって?
マインがハムスターみたいな顔をしながらコルテッタを食べてるからだよ。
「ひょっほまっふぇくらふぁい」
これは「ちょっと待ってください」かな?
「うん、わかった。ただ口の中の物を飲み込んでから話してくれ」
モグモグ ゴックン
「はい何か聞きたいことがあるのですか?レン様」
「ゴブリン豆って知ってるか?」
「はい、知ってますよ。確か私の鞄の中に入っていたはずです」
え、マジ? やったねこれで探しに行く手間が省けたよ。マインが腰のポーチから小さな袋を出して見せてくれた。