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第37話 魔術ギルド

 魔術ギルドは四角い建物で日本の三階建てのビルを木で作ったイメージをしてくれればいい。魔術ギルドの1階は魔術本(マジックブック)──本に魔法を封じ魔力が少ない人にも使えるようにした物──を販売している。2階より上ではギルド員達による魔術の研究が行われている。

 魔術ギルドに初めて来た者は2通りの反応を見せる。

 ギルドの大きさに驚く者とギルドの隣にある料理屋の匂いにつられて店に入ってしまう者である。

 そして今魔術ギルドに来た男女達は後者であった。


 ───────────────────────


「いい匂いがするな。ちょっと寄って行くか」

「だ、ダメですよ、レンくん。先に魔術ギルドに行かないと…」

「朝ご飯まだだからいいんじゃないかな?」

「ダメです…」


 そんなに頑なに拒まなくてもいいと思うんだけどな。それにしてもいい匂いだな、この国の料理をまだ食べてないんだよな。

 マインの料理を食べてたんじゃないかって?

 僕は美味しくない物を料理とは言わない。マインの料理であれ、街道の時に食べた有合せ料理であれ、美味しくない物は料理では無い。

 王城で(パーティ)に参加してたじゃないかって?

 色々あって何も食べれなかったんだよ。あー思い出したら悔しくなってきた。小指サイズの鰻を茹でたやつや黒いじゃがいもを蒸した物とか興味あったのになー。

 まあ過去の事をグチグチ言ってても仕方がない。今はこの料理屋で腹拵えをしよう。


「自然な感じで料理屋に行こうとしてもダメですよ、レンくん…」


 なんとアオイに見つかった。できるだけバレないように行ったのにさすがは天使だな。


「馬鹿な事を考えてないでさっさと行きますよ…」

「お腹すいてるんだけどなぁ」


 何時になくアオイが積極的だな。魔術に想い入れでもあるのだろうか。それともただ単に興味本意なのかわからないな。

 こういう時は聞いてみるに限る。


「どうしてそんなに積極的なんだ?」

「昨日レンくん達が寝てから魔術書を読んでいたんですよ。魔術書に書いてあった魔法の使い方はわかったのですが魔力が足りなかったので増やす方法を教えて貰おうかなと思ったんです…」


 天使の魔力でも足りなかったのか。でもそんなに急ぐ必要があるのかな?僕は必要ないしアオイ達も怪我はしてないみたいだけど。


「あの女の子の怪我を治してあげようかと…」

「そっか、相変わらずアオイは優しい子だな」


 本当に優しいな。マインとは大違いだ。

 ここ(魔術ギルド)に来るまでの道中でなぜ手首だけを切り落としたのか聞いたのだが


「マインは何であの子の手首だけを切り落としたんだ?」

「レン様に手を出そうとしたからです」

「それは知っているんだが足とかを切らなかったのは何故なんだ?」

「手首だと処分する時に楽なんですよ」

「処分ってどうやっているんだ?」

「犬にポイッですね」ニコリ


 とか言ってたんだよ。それに最後のニコリがやばい。言ってることが恐ろしいのに最後のニコリを可愛いとか思ってしまった。

 やっぱり女って怖いな。(格言)


「焦っても仕方が無いですし、先に腹拵えをしましょう。レン様が何か食べたそうな顔をしていますよ」

「あれは知り合いの怖いところを見つけてしまった時の顔だと思います…」


 鋭い、さすがはアオイさんとても鋭いな。


「マインの言う通り、先に朝ごはん食べよう」

「わかりました…」


 魔法ギルドの隣の料理屋──クリンク亭はテーブルがいくつかあるだけの簡素な店だ、だがそのテーブルの大きさが尋常ではない。個人用に2、3個は普通の大きさだが他のテーブルは直径が3メートルほどの丸いテーブルになっている。


「いらっしゃいませ。3名様ですか?」

「はい。そうです…」

「それではこちらにどうぞ」


 僕らは店員に案内された窓際の席に座る。


「こちらがメニューです」

「は、はい、ありがとうございます」

「決まりましたらお申し付けください」

「わ、わかりました」


 店員はメニューを渡して次の客の応対に行った。

 何で店員の相手をアオイに任せて店員ばっかり見ているんだアオイが可哀想だろ

 とか思っている読者達に重要な事を教えてやろう。ここの店員はメイド服を来ているのだ。まさかこの世界にもあるとはさすがだなメイド服。


「レン様大丈夫ですか? この店に来てから『な、メイド服、だと!?』と言ってから一言も話してませんよ」

「ああ、まさかこの世界にもメイド服があるとは思わなくてな」

「めいど服とやらは知りませんがこの店員達が着ているのは前回の勇者が考案した侍女服だそうです」


 なるほど前の勇者がメイド服を広めてくれたのか。前の勇者の像を見つけたらお供え物でもしておこう。



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