第33話 ○○天使アオイちゃん
いい機会だから魔法の仕組みを説明しておこう。
まず攻撃魔法の場合、魔法に合わせた性質(炎なら炎、水なら水を、ただし氷は水)の形を変えて発射する。これが攻撃魔法だ。例えばファイヤーボールの場合、炎を出してそれを丸めて発射するようなイメージで撃てる。
呪文を使うとここまでのイメージを全部飛ばして魔法が撃てる。ただし沢山の呪文を覚えなくてはいけないからどっちがいいかはよくわからん。
魔法のことがよくわかった所で本選びに移る
元々盗賊達のアジトにあったお金がいくらかあるからそれで何冊か買えそうだ。
さて何を買おう。
散々悩んだ結果物語3冊 「恋する少女と無情の騎士」、「フレード王国建国伝説」、「魔の森」、と古神語で書かれた本を1冊買うことになった。
「恋する少女と無情の騎士」は騎士に助けられた少女と騎士の恋愛小説だ。これは僕が読む訳では無い、アオイへのお土産だ。僕が読みたい訳では無い。決して無い。
「フレード王国建国伝説」、「魔の森」はそのまんまだ。異世界系では常識を学ぶのに仲間に聞いたり王様からの説明を受けたりと面倒なことをしているが実際はこういう伝記を読むだけである程度の常識はわかる。
僕は買った本を手に持ったまま店の外に出た。そろそろ鞄を買わないとな、いちいち路地裏に入って収納するのが面倒になってきた。
「結局店を出るまで呼びに来なかったな。まだ買い物しているのかな?」
「女性の買い物が終わるまで待つのも男の役目ですよ、レン様。」
うわっびっくりした。いきなり隣にいた知らない人から……知らない…ってマイン!?
「マイン、びっくりするから伏線張ってから出てきてくれ。横から足音が…とか人の気配が…とかいつもやってるじゃん。」
「それよりもアオイを探した方がいいのではないですか?」
「そうだな。」
疲れる。これからは周りにマインがいないか注意しよう。
「あっ、アオイいましたよ。あそこの店の前にいます。」
「あーいたいた。」
アオイは武器屋の前で黒い棒を持っていた。何してるんだろう?
武器屋の近くの木に隠れて様子を見てみよう。
「ぴる……る……ぴぴ…ぴー」
よく聞こえないな。何か踊っているみたいだけど。
手に持ってるのは…棒?
「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴー」
ぼ、撲殺天使? え、どういうこと?
レンの頭の中
残虐+天使+エスカリボ○グ=撲殺天使ド○ロちゃん(アオイ)!?
や、やばい殺られる。これは止めた方がいいのか?
いや見なかったことにしよう。大丈夫、もしアオイの愛が殴ったり嬲ったりだったら即効で逃げよう。(全然大丈夫じゃない)
「あれ? レン様、アオイに声をかけなくていいんですか?」
「少しそっとしておこう。」
今近づくと殴られそうだし。
さっき買った本でも読んでいよう。
「でも後ろにアオイいますよ」
「えっ」
振り返るとそこには微笑みながらアオイが立っていた。手にエスカリボ──もとい鉄バットを持ちながら。いやどっちにしろ怖いな。
「会っていきなり『えっ』は失礼ですよ、レンくん…」
いや確かに失礼かもしれないけどもっと大事なことがあるだろ。
「そのバットは何なんだよ」
「……………」
え? 何この沈黙、すごく気まずいんだけど。
「む、虫除けです…」
「え? いや、でも」
「虫除けなんです」
「そ、そうか」
虫除けの虫って男のことだよな、男避けなら普通指輪とかじゃないのか?
可愛い女の子がバット持ちながら歩いている…これはナンパ出来ませんな。そのバットが僕に向けられないことを祈ろう。
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レンくんは気付いてないみたいですね。この鉄バットはレンくんに近づくゴミ屑共を倒すために買ったものです。
鉄バットを持った女の子が近くにいたらそれだけで近寄りにくくなるでしょうし。
しかしどうやればレンくんの誤解をとけるのでしょうか、嫌われてなければいいのですが…
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やはりアオイもレン様を狙っているのですか。まあレン様を渡す気は全く無いですが早めにレン様と殺し合う準備をしておきましょうか。ああ、レン様とまた殺し愛ができるなんて、想像するだけでドキドキします。レン様は渡しませんよ、アオイ。
アオイとマインの2人はレンと過ごす未来を想像し、その未来の障害になりそうな敵の存在を再確認した。
レンを巡る2人の女の戦いが今、始まる。
そろそろゴールデンウィークですね。
という訳で4月29日から5月5日まで毎日投稿します。
5月5日は本編中では書けなかったことを投稿します。
魔王勇者の無双の旅、今後も更新を止めずに頑張りますので感想をください。