第32話 苦労人ギル
「貴方確か何もクエストは受けてわよね」
「嬢ちゃんについて行けばいいんですか?」
「頼めるかしら?」
そう頼まれたら断れないのがギルでありリリアの直属の部下であった。
(さて姐さんから頼まれたのはいいがすごい速度で走っていったな。スキル持ちなのかあの嬢ちゃん)
「まあ関係ないか」
ギルはまるで風に溶けたかのように姿を消しマインの後を追った。
ギルは風の妖精に守られている谷──シルフ村の出身である。
そのためシルフに伝わるいくつかの魔術を使うことが出来る。
今ギルが使っているのはその内の1つで風と同じ速度で移動することが出来る魔術だ。風邪に溶け込むためあまり重い物は持てないが少しの防具なら問題ない。
「まだ嬢ちゃんは来てないみたいだな」
(あの速度で走っていたからそろそろ着くだろうな。その前に村の奴らに事情を説明しとくか)
だがギルが声をかけようとした村人の近くにいたのはマインだ。
(速すぎるだろ。何でこんな所にいるんだ。俺は風と一緒に来たんだぞ。風より速く走れるって言うのか。
まだ嬢ちゃんは村人と話しているみたいだな。畑にオークが現れたのか。嬢ちゃんは1人で倒せるのかな?俺より速く走れるのだからただの初心者じゃないと思うんだけどな)
だがギルはマインが腕一本で振るナイフで岩のような皮膚を持つオークの首を切り落とす所を目撃しその認識が甘かったと悔いることになった。もちろんオークの皮膚を少女の細い腕それもナイフを持った右手だけであんなにも容易く切り裂くことが出来ないことをギルは理解していた。それ故にさらに恐怖を感じる。
(首落とすだけじゃなくナイフでオークの死体を解体し始めやがった。普通なら業者が鋸使ってやる作業だぞ、どんなに人間離れしてるんだよ)
あまりの光景に驚いていたギルはマインに近づく人影に気付かなかった。
「よう嬢ちゃん。そのオークの肉早く渡してくれるかな?」
(ん? この声はレガンか、何で王都のゴロツキがここにいるんだ?豚の肉の匂いにつられて出てきたのか?それは無いか)
少し話が脱線しかけたが首を振って強制的に現実に戻す。
(これは奴を助けた方が良いのか? レガンは王都のBランク冒険者で今日冒険者になったばっかりの初心者(Eランク)が戦り合える奴じゃないからな)
そう思いながら立ち上がろうとするギルに向かって大きな岩が飛んできた。
「うお」
少し驚きはするが裏の仕事を生業とするギルは自分の反射速度にものを言わせて回避した。
「一体何が飛んできたんだ?」
一瞬あの少女が自分の隠れている場所目掛けて岩を投げたのかと思ったが即座に否定する。自分の隠れている場所は少女からは死角になっていて見つけられるはずが無いとギルが思い込んでいるから(とっくにマインは気付いているが敵意が無いので無視している。)と飛んできた岩が呻き声を出しながら動いているからだ。
「おい、大丈夫か」
(こいつどこから飛んできたんだ? ってよく見たらレガンじゃねえか。レガンをここまで投げ飛ばしたのか? どんな化け物なんだよ奴は。)
だが動揺するのも数秒の間だけですぐに気を取り直し簡単な応急処置をしてギルドの方向にシルフ村の魔術を使って移動した。
ギルはマインの強さを異常と判断しこれ以上此処に留まるのは危険だと判断したからである。
ただギルの方にレガンが飛んで来たのはマインが適当に投げたらそこに飛んだだけで決して警告ではない。だがそんな事を考えられるほどギルは落ち着いてもいなかった。
──この後ギルのマインが人斬りだという説明を受けたリリアが自分の使える全権力を駆使してマインの証拠を消そうとした話はまた別の話である。(多分書かないと思う by龍鳴 竜)
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マインは市場には居ないみたいだな。やっぱりギルドで何かあったのかな?
「マイン何処に行ったんだよ」
「そんなことよりも見てください、ポーションとか売ってますよ…」
「これは治癒のポーションか」
ポーションは錬金術でしか作れず、薬剤師が作った薬は飲まないと効果が無いのに対してポーションは傷にかけるだけでも効果があるため値段が少し高くなる。
それにしてもアオイは楽しそうだな。女子は買い物が長いってよく言うけど本当なんだな。
おっ、本屋があるな。この世界の本がどんな物かわからないからな。ちょっと寄ってみるか。
マインはほっといていいのかって?
マインなら問題ないだろ。それよりも本屋だよ。
「アオイ、本屋に寄ってくるから終わったら呼んでくれ」
返事は無かったがこっちに向かって手を振っていたから分かってるだろう。
この世界の本屋だがなんと言っても小さい。田舎にある駄菓子屋みたいな大きさだ。やはり異世界では識字率が低いのだろう。
置いてある本は僕が知っている人間語とよくわからない文字の2種類あった。このミミズ文字は何なんだろう?
メシア)それは古神語です。おそらく数百年前に書かれた遺失魔法の本だと思われます。
遺失魔法か、なんでそんな物があるんだ? 魔法はイメージすればいい訳だから伝える必要がないと思うんだけど。
メシア)イメージで魔法を発動させる場合、集中しなければ魔法は発動しません。そのため不意打ちに対応する時や戦闘中などのイメージが掴みにくい状況では魔法が使えません。それを打開するために生み出されたのが呪文です。呪文を唱えることによって頭の中のイメージを固定化し魔法を発動させます。イメージと違い発動までの時間が長くなり応用も聞きませんが、素早く誰でも使うことが出来ます。
なるほど、僕の場合は名前を言ってから魔法を使っていたから無意識の内にイメージが強化されてたのか。




