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第31話 オーク討伐

「本当に大丈夫なのかしら」


 受付嬢──リリアはさっき出発して行った少女のことを気にかけていた。

 リリアはまだ幼い頃に冒険者としてお金を稼いでいた頃がある。マインに小さき頃の自分の姿を重ねているのだ。最も命の心配はしていない、あの人斬りが人殺しをしないかが心配なのだ。


「心配なんですか、姐さん」


 額に傷がある冒険者がリリアに敬語で話しかける。

 レンは冒険者達が礼儀正しいのは当たり前だと認識している。

 ──そんな訳が無い。冒険者はその殆どがスラムや傭兵上がりの者である。そのため荒くれ者が殆どで礼儀も知らず口が悪い、このギルドの冒険者の様に礼儀正しいのは元騎士や王族達から仕事を受けるランクSの冒険者だけである。


「貴方確か何もクエストは受けてわよね」

「嬢ちゃんについて行けばいいんですか?」

「頼めるかしら?」

「この街で姐さんの頼みを断れる奴の方が少ないですよ」


 そんな荒くれ者だらけの冒険者ギルドだがここにはリリアがいる。


 リリアは普通の受付嬢ではない。

 リリアはこの街の領主の娘であり様々な所にコネがある。リリアはこの街に不必要な者や自分に敵対する者をコネを使って潰してきた。ついた渾名は「不干渉(アンタッチャブル)」だ。

 さすがの冒険者も自分から地獄へ行くようなことはしない。リリアも自分に敵対せず真面目に仕事をしている者に厳しくはしない。

 結果として礼儀正しく質も高い冒険者が出来た。


「ギルが行けば問題ないと思うのだけど、大丈夫かしら」


 今更だが額に傷のある冒険者、名前はギルである。


 ───────────────────────


「カナ村までは歩いて3分くらいですね」


 ──もちろんマインの感覚である。カナ村は普通なら馬車で半日かかり徒歩なら4日はかかる村である。


「3分半ですか。少し衰えましたね。やはり1週間も人を殺さなかったせいでしょうか」


 ──言っていることは狂言じみているがそれを正してくれるレンはここにはいない。


 村が騒がしいですね。もうオークが出たのでしょうか。

 畑仕事をしているおじいさんに聞いてみますか。


「すいません。何かあったのですか?」

「ん? 何だ嬢ちゃん」

「冒険者ギルドからクエストを受けてきました」

「ほおー嬢ちゃんがクエストを受けたのか。まあ倒せるんだったら誰でもいいんだがな。今畑の方にオークが出たんだよ」

「そうでしたか。ありがとうございます」


 言われた畑の方を見てみると確かにオークらしき影が見える。


「あれですね。サクッと殺しちゃいますか」


 そう言った直後マインの立っていたところの地面が少し抉れマインの姿が消えた。そしてオークの首がごとりと落ち、村人達がオークの方向を見た時にはオークはこと切れていた。マインは化け物を見るような村人の目線を受けながらオークの肉を剥いでいた。


「ふぅ、さすがにオークを1人で倒すのは大変ですね」


 レン様がいたらもっと楽なんでしょうけど。

 それにしても村の人達が随分と静かですね。何かあったのでしょうか。

 ふと肩に違和感を感じ、振り向いた。

 そこには大柄の鎧を着た男がいてその手は私の方に置かれている。


「よう嬢ちゃん。そのオークの肉早く渡してくれるかな?」

「?」


 いきなり何を言っているのでしょうかこの男は。これはレン様に持っていく手土産だと言うのに。


「オークの肉は渡しませんよ。私が倒したものです」

「嬢ちゃん、俺が誰だか分かっているのか?王都で有名なレガン様だぞ。分かったらさっさと渡せ」


 レガン? 知らない名前ですね。


「レガンという冒険者は知りませんし、渡しませんよ。と言うか五月蝿いのであっちに言って貰えますか?」

「このガキ殺されてぇのか」


 五月蝿い人ですね。殺しちゃってもいいのでしょうか。でも殺したことがレン様にバレて嫌われるのは嫌ですし、今持っているのがこのナイフだけなんですよね。このナイフで殺すのは勇者とレン様だけだと決めているのですが。素手でころせばいいですかね。


 レガンはマインが黙っているのを怖がっているからと勘違いしたのかマインの持っている肉を奪おうと手を伸ばして


「え?」


 掴んだものは肉ではなく地面だった。

 マインがレガンの腕を掴み投げとはしたのだ。


「ほらほうけてないでさっさと逃げ出すなり死ぬなりしてください、目障りです」


 もちろん逃げ出さなかったら本当に殺すだろう。だがその点レガンは最良の判断をした。


「ヒィィィ」


 マンガの様な悲鳴を出しながら逃げ出した。

 マインはレガンがいなかったかのように肉を袋に詰めて戻る準備を再開した。もうマインの脳内にはレンの事しかなくレガンのことは宇宙の彼方まで捨てられていた。


「レン様に褒められるといいのですが」


 マインはレンに褒められる未来を想像しながら来た時と同じ様にものすごい速度で帰って行った。



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