第26話 テンプレ
「嫌な予感ですか…」
「そうなんだよ。このまま行くとまた罠に掛かりそうな気がするんだよ」
「そんなこともありましたね…」
2ヶ月前、1人で迷宮系ダンジョンに挑んでいたのだが進んでるとすごく嫌な感じがしたんだよ。まあ、その時は唯の勘違いだと思って無視したんだよ。そしたらいきなり落とし穴に引っかかってそのままPKされたんだよ。あー思い出したらムカついてきた、あいつら落とし穴の上にレアなアイテム置きやがって、僕はモンスターじゃないんだよ。
それでどうしたのかって?
もちろんアオイと一緒にもう一度潜って皆殺しにしたよ。悪党死すべし慈悲は無い。
おっと、脱線してしまった。それでその時の嫌な予感が今もしている訳で、さてどうしよう。
「レン様、一旦止まりましょうか?」
「いや、そのまま行ってくれ多分この辺でトラブルが起きると思うから早く離れたい」
「わかりまし──」
「そこの馬車今すぐ止まれ」
一瞬時間が止まった。
「れ、レンくん、盗賊が出ましたよ。倒した時にお金と装備を落とすお得な討伐イベントですよ」
えっ、アオイさんまた「…」忘れてますよ。
「五月蝿い奴らですね。レン様の旅路を塞ぐとは。レン様、奴らを皆殺しにするので少し待っていてください」
「いや待つのはお前だよマイン」
ちょっと待って最近展開が早すぎる。一旦深呼吸して落ち着こう、スーハースーハー。よし最初から確認しよう。
まず盗賊が現れて、その後にアオイはなんて言った?
メシア)報酬がとてもいいイベントが来たと言ってました。
うん、わかってた。元々イベントを利益で考えてたからな、盗賊をイベント扱いするのも分かるんだが、せめて本物くらいは人扱いしてあげようよ。
それにマインはマインであっさり全滅宣言しちゃってるし。人を殺すのはやめたんじゃなかったのかよ。
メシア)マスターに害をなす唯の害虫としか見ていません。
断言しちゃうんだ。それといちいち質問に答えてくれてありがとう。でもどうせなら今何をすればいいかを教えて欲しいんだけど。
メシア)それでしたら、
→マインを止める
→盗賊を倒す
→アオイに天使になって盗賊を脅してもらう
の3つですね。
何でマインを止めないといけないんだ? マインならそこで大人しく…
「アオイ、マインは何処に行ったんだ」
「マインなら『レン様の邪魔をする五月蝿い羽虫達を消してきます。』って言いながら走って行きましたよ…」
「待て待て早まるな」
僕はダッシュでマインの襟を掴んで馬車に戻った。
「何故あいつらを消してはいけないのですか?」
「昨日人を殺さないって決めたばかりだろうが!」
「あいつらは羽虫ですよ」
「そうですよ美味しいイベントですよ…」
「やっぱり人間扱いしてなかったのか」
あれ? 盗賊が怯えている。なんでだろう。
「お、お前ら一体な、何者なんだよ」
なるほどさっきの話を聞かれていたのか。
それは怖い体験だったろうな。さすがの盗賊さんでも自分が羽虫や美味しいイベント扱いされたことはないんだろう。いや普通は無いか。この世界で盗賊を捕まえたらどうなるんだろう?
メシア)騎士に渡せば賞金が貰えます。この賞金が掛かっていない盗賊もいますがどちらも犯罪奴隷として売った分のお金が貰えます。
なるほど、という事はあいつらを騎士に渡すだけで金が貰えると。
「アオイ、どうやらあいつらを捕まえて騎士に渡すだけでお金が貰えるらしい」
「やっぱり美味しいイベントだったんですね…」
「そう、だからあいつらを全員捕まえようと思う」
「レンくん、顔が怖いですよ…」
おっと、どうやらお金のことを考えてるうちに悪党の顔になってたみたいだ。
「それじゃあ捕まえますか」