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幕間 マイン──前編

 私が住んでいたのは山奥にある小さな村だ。

 家が数軒集まっただけの小さな村だったけど皆が仲良く暮らしていてとても楽しかった。お父さんと狩りに山へ行ったり、友達と遊んだりと毎日が楽しかったのを覚えている。

 そんな楽しい日々がいつまでも続けばいいと思っていたけどそれが叶わないことを知ったのは8歳の時だ。


「マイン、今から遊びに行かない? 」

「今から行くの? ライラ」


 そんなことを言って誘ってくるのはライラだ。ライラはラボット族の少女だ。

 ラボット族特有のウサギの耳と緑の髪が特徴の可愛い女の子で私の親友だ。


「そうだよ。山に珍しい魔物が出たんだって」

「また大人の話を盗み聞きしたの?」


 そう、ライラはいつも大人達の話を盗み聞きして面白そうな事があったら首を突っ込むのだ。

 そのせいで大人達に悪ガキの1人として数えられている。

 ライラの悪巧みに巻き込まれているせいか私もその悪ガキの中に入れられているのだ。


「そろそろ悪巧みはやめないと小屋に入れられるよ」


 小屋とは村の外れにある空き家のことで悪い事をした子供をそこに入れて閉じ込めるのだ。

 子供達からはお仕置き部屋や小屋と呼ばれている。

 ライラはこれまでに3回も入れられているがこの様子だと全く反省してないんだろう。


「大丈夫だよ。それに一緒に来てくれるんでしょう?」

「もちろん行くよ」


 そんな面白そうなことを逃す訳がないじゃないか。


「それじゃあ先に行っといてくれる? すぐに追いつくから」

「わかった」


 村から山までは森を3キロほど進まなくてはならないが子供の頃から遊んでいた森だ数分で着ける。

 山に着いたけど辺りにライラの姿が見えないな。木の幹にでも座っとくか。


「ライラまだかなー」


 そろそろここに着いてから10分が過ぎた。流石に遅すぎると思う。

 足元の石は全て草むらに蹴ってしまったし、そろそろ村に呼びに行こうかな。


「よし、呼びに行くか」


 しなければいけない事を口に出すのは昔からの癖だ。これをしたら忘れないで済むと教わってからやり続けている。

 来た道をそのまま戻って村まで走った。


 しかしそこに村は無かった。

 そこにあったのは剣を振り上げて村人を襲う騎士やお腹を切られて内蔵が飛び出し絶命している者、親を殺されて泣き叫んでいる子供、その子供に剣を振る騎士、そこにあったのはいつもの村ではなく──地獄だった。


「なん、で。何で騎士が村を襲ってるの?」


 そうしている間も騎士は村の人を襲う。

 誰一人見逃さず隠れている者や逃げている者も全員殺していく。

 知り合いが悲鳴を上げながら1人、また1人と殺されていく毎に私の中から何かが零れ落ちていく感覚があった。


「ああぁ。ぅぅ」


 口から声になっていないうめき声が漏れる。

 そのうめき声を聞いた騎士が何人かマインの元まで歩いてきた。

 ──そして騎士はマインの前に立ち剣を振り上げて


「○○○○○○○○○」


 その時に騎士が何て言ったのか覚えていない、ただその時に騎士の胸から剣が生えて倒れ通りすがりの旅人が自分を掴んで走って逃げてくれたのは覚えている。


 その後はその旅人と一緒に過ごした。

 旅人は私に生きる術を教えてくれた。

 狩りの仕方や護身術に武器の手入れの仕方など様々な事を教わった。

 でもその時の私は何も考えれなくてただ呆然と教えられた事を覚えていった。


 それから数日が経ち、私も少しは立ち直って物事を考える事ができるようになっていた。

 まず最初に思ったのは悲しさだった。村の皆が死んで私一人だけが生き残ったから悲しくなるのは仕方が無いと思う。

 でも次の感情は憎しみだった。

 騎士が憎い。人が憎い。この世界の何もかもが憎い。


(憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い)


 その時は憎しみしかないのかと思った。

 でも憎しみを抑え込むことは出来た。まだ私が小さかったから少し泣くだけで憎しみが小さくなったのだと思う。

 ただその時に随分と暴れたらしく少し旅人を傷付けてしまったらしい。

 もし私が大人だったらこの憎しみを抑えきる前に旅人を殺していただろう。

 だから小さくて良かったと思う。


 ある日旅人が珍しく諭すような言葉を言ってきた。


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