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第21話 初の戦闘描写──思っていたよりも難しいな。後編

 仕方ない殺すか。


  僕はマインの剣を捌きつつ左手でマインに石を投げつけた。勇者の力もあって弾丸並みの速度はでる。

  マインの顔の横を通り過ぎるような軌道で投げる。


「──」


 狙い道理の軌道を通り後ろの木にあたって石が弾け飛んだ。

 何も喋らない。マインの肩が震えている。さすがに弾丸並みの速さで拳大の石が飛んできたら怖がるか。マインにも恐怖心があって安心し……


「あはは」

「…………マイン?」

「あははははっ。そうですよ。それくらいはしてくれないと私が殺す相手に選んだ意味がないですから」


 ──マインは全く怖がっていなかった。顔の横を通過した石によって頬を切っているのにマインは笑っている。傷から垂れた自分の血を舌で舐め取りながら嗤っている。


 何でマインは笑っていられるんだ。僕ならアレを受けた時点で何か対策を取るのに。マインはあれが当たったら死ぬということ、その事を理解している。それどころか楽しんですらいる。


「……狂ってる」

「ええ、確かに私は狂っているかもしれません。昔は仲良くしていた人間を何の感慨も無く殺せるようになりましたから。でもあなたも同じでしょう?」


 マインが楽しそうにレンの顔を指さす。


「僕と君の何が同じだって?」


 ──マインは戦っている間もずっと嗤い続け


「だってあなたも今嗤っていますよ」


 ──それに応えるようにレンもまた嗤っていた。


「あなたも私と同じですね。楽しいでしょう?」

「ああ、確かに楽しいな」


 そう言いながら僕はマインに袈裟斬りを叩き込む。本当は最初から気付いていた。いやこの世界に来る前、と言った方が正しいか。僕は元の世界にいた頃から喧嘩するのが好きだった。学校で喧嘩ばかりをして周りの子供を傷つけ退学させられかけた。

 そして現実で戦うことに限界を感じ、ゲームの世界へと引きこもった。


 もう一度言おう──今、すごく楽しい。


 ──それは異様な光景だった。男女が互いに斬り合っている。それ自体はさほど珍しくは無い、レンがいた世界とは違いこの世界では斬り合い自体は珍しくない。

 だが2人は楽しそうに笑いながら斬り合っていた。

 永遠に続きそうな斬り合いも唐突な〇〇〇の言葉によって終わりを迎える。


 「クレナイさん、聞こえてますか? 聞こえているなら直ぐにその戦闘をやめてください」


 僕の頭に直接女神様の声が流れてきた。


(なんで女神様が呼びかけてくるんだ?)

 「普通に考えて勇者とその仲間が殺しあっていたら止めますよ、あなたが倒すのはその子ではないのですから」

(とは言っても止められないぞ)

 「では私が持ってる精神攻撃系の最も強い魔法を使いますね。いいんですか?」

(魔法でもなんでもやってみろ。この戦闘は止められ……)

 「神よ、世界よ、我の願いを聞き入れたま……」

(はーい分かりました直ぐにやめますね。いやぁ仲間と殺し合うなんてするわけがないじゃないですか)


 危なかった。女神様が使ったのは僕が昔作った世界最強(最大最強の黒歴史)だ。あのまま言われていたら土の上を転がっていたかもしれない。


 「マイン、ちょっと聞いてくれ」

 「なんですか?」

 「この戦い、休戦ということにして魔王を倒してから再戦しないか?」

 「ふむ、いいですよ」

 「マインがまだ戦い続けたいのもわか……いいのか?」

 「ええ、どうやらあなたを殺す方法は簡単じゃないようですしね」


 マインが僕の体を見る。この戦闘で無数の傷を付けられたがその全てが直ぐに癒えている。


 「そうですね。では魔王を倒し、私があなたを殺す方法を思いついたら再戦してくれますか?」

 「ああ、それでいいぞ」

「わかりました、では少し時間貰いますね。拾いたいものもありますし」


 そう言ってマインは森に向かって走っていった。

これで第一章の本編は終わりました。

幕間と登場人物表を挟んで第二章突入です。


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