第16話 暗殺者の尋問をしよう
なんとこの国の騎士は弱かった。まあ貴族の三男の半分くらいは騎士になるって本で読んだことがあるし、さっき暗殺者を取り押さえていた騎士は貴族のボンボンだったんだろう。あっ、その暗殺者は今僕の足の下にいるよ、逃げようとした時に追いかけて取り押さえたからな。全くもう少し騎士の育成に力を入れて欲しいものだ、平民1人も抑えられないとは、そのせいで余計な仕事が増えたじゃないか。
(そんなことを言ってるけどすごく楽しんでるよね…)
確かに楽しんではいるけど、なんでアオイはそこまで適確にツッコミを入れられるんだろう?
メシア)それはマスターの考えている事が独り言のように漏れているからです。
えっ、てことは僕はずっと独り言を言ってるおかしな奴だったの。そんな、一体どうすればいいんだ。
(大丈夫、レンくんがおかしな奴でも私は大丈夫です…)
(いや何が大丈夫なんだよ、それに僕がおかしな奴って断言しちゃってるじゃん)
本格的にやばいな、早くこの問題を解決しないと僕の日常が楽しいもので無くなってしまう。
メシア)マスター、足の下の暗殺者が暴れています。先にこちらの問題を解決した方がいいと思われます。
ああ、忘れてたな、そう言えば暗殺者を踏んでたんだっけ。これじゃ人踏んで固まってる変な奴じゃん。
(さらに付け加えると呆れたり、頭抱えたりしてる変な人だね…)
もう何も言わないでくれ、僕のHPはもう0だよ。
僕はロープを出して暗殺者を縛り上げた。あれ? ロープなんて持ってたっけ? 周りの人達もすごい驚いた顔をしているし。
(すごいね、レンくん錬金術使えたんだ…)
は? 錬金術なんて生まれて此方使ったことがないぞ。まさか、スキルを手に入れたのか。
メシア)はい。錬金術とその称号を手に入れました。
マジかこんなのでスキルが手に入るのか。いや、勇者スキルでスキル修得率にブーストかかってるのかな。まあ、スキルを修得しやすくなるんだし、スキルの説明もメシアがやってくれるから問題ないな。
「さて洗いざらい吐いてもらおうか」
へえ、騎士の尋問ってこうやるんだ。小さい部屋に汗臭い男達が威圧したり、鉄の処女とかで拷問したりしないのか。さっさと拷問した方が早い気がするんだけどな。ただその事を騎士長に聞いてみたら、
「騎士はそんなことをしません。騎士の尋問とは己の強さや誇り、己の在り方などで威圧し自白させるのです。その為自白しないからと言って怪我をさせたり罵詈雑言を浴びせたりすることはありません。ただ聞きたいことを1度だけ問い、あとは静かに自白するのを待つだけです」
って返された。まあ暗殺者を取り逃した騎士についても聞いてみたけどものすごい困った顔をしていたから無かったことにしようと思う。
(やっぱり騎士は誇り高いみたいだな。)
(そうですね、でも中には誇りも礼儀も無い騎士もいますけどね…)
それは仕方ないだって人間だもの。
それで騎士の威圧(笑)で自白したのだが、どうやら王都の外にある洞窟にアジトがあるらしい。暗殺者はそこの組織に雇われたと言う。そして今は組織をどうするかの話し合いを王様や騎士長などで行われているのだけど。これ完璧に僕ら(ゆうしゃ)いらない子だな。
「それでは私たち王国騎士がアジトを攻め落として来ます」
「うむ、頼んだぞ騎士長」
「はっ、必ずや王の元に反逆者達の首を持ってまいりましょう」
どうやら騎士が、アジトを攻め落とすことに決まったみたいだが、どうもあのへっぽこ騎士を見てると安心できないんだよな。
「僕1人でもアジトを攻め落とすことは出来ると思うんですけど」
「確かに勇者様が行かれたら半日と経たず攻め落とすことが可能でしょう。しかし勇者様に頼りすぎて自分達の身を守ることも出来なくなるほど腑抜けるわけにもいきませんし、王に逆らったら騎士が粛清に来るということを世に知らしめなければいけないのです」
なるほど。確かに僕が行くよりも騎士に行かした方が良さそうだな。でも本当に騎士って強いのかな。
メシア)マスターの国…日本の自衛隊員の平均を10とするとこの国の騎士はへっぽこを抜くと50を軽く超えます。また、へっぽこ騎士はあくまでも騎士という肩書きのために所属している為このような討伐には参加しません。なので今回の討伐は成功する可能性が高いです。ここにへっぽこ騎士がいるのはここが安全な場所で王様の護衛という功績が手に入るからです。
まあそうだよな。あんなへっぽこ騎士が普通だったらこの国の治安はすごく悪いことになるからな、ちゃんと強いやつもいるのだろう。でもここ安全じゃないじゃん。いや騎士長がいるからある程度安全なのか? と思って聞いてみたら騎士長はそんなに強くないらしい。どうなっているんだろう?
「あのそろそろ説明を再開してもよろしいでしょうか」