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第X話 旅が終われば物語も終焉を迎える。

「ようこそ、まさかここまで来るとは思ってなかったよ」


 そこにいるのは1人の子供。少女か少年か、わかりにくい顔立ちをしている。

 ここは何の変哲もない10畳ほどの部屋。

 そこでパソコンを前にそれが座っていた。


「ボクに告白するためにここに来たわけじゃないって言うんだから驚きだよね」


 レンの方には顔を向けずパソコンに何かを打ち込みながら会話を続ける。しかし数十秒ほどで書き終え、レンのほうに体を向ける。


「さて、必要ないとは思うけども一応自己紹介しておこうか」


 それは自分の胸に手を当て、名を名乗る。


「ボクは龍鳴 竜。『魔王勇者の無双の旅』の作者であり、君を産んだ親だ」


 レンやアオイ、ボクを産んだ作者はそう言ってレンに微笑んだ。


「まさか小説として書いたキャラが現実まで出てくるなんてね」

「オーディンのエネルギーを使った荒業だ」

「どうしてここまで来たか教えてくれるかい?」


 小説のネタにする気か、メモを取り出して龍鳴が聞く。


「アオイにとって住みやすい世界に書き換えるためだ」

「ボクの書いたあの世界を変えるって言うのかい?」

「アオイを救うためにどれだけ頑張っても無理だとわかった。神にでもならなければ無理だって分かったんだ」

「でも神も世界を思い通りに変えられるわけが無い。だから世界を好き勝手変えてるボクの元に来たってわけか」


 理由としては単純明快。だが、この世界の作者に会うだなんてことを考える人間はいない。


「だって君の物語を読んで楽しんでいるボクたちだって、作者に会うどころか、今いる世界が誰かの書いた世界だなんて考えすらしないよ」


 だが、それを考えてしまった。それだけの知能を持ってしまった。


「それで、ボクの作品を勝手に書き換えるってことだけど、著作権どうこうの問題をなしにしても出来ると思っているのかい?」


 作者と著作物の力関係など、分かりきっている。

 例え著作物が逆立ちしても、作者には適わない。


「確かに、俺は作者には勝てない。でも、作品を改変するだけなら別だ。お前が今ままで俺の物語に加えてきたエネルギーと、今、加えられるエネルキーの差なんて比べ物にならないくらいの差がある」


 今までという長い時間と、この一瞬との差だ。

 そして、自分が生きた証を刻み込む方法として、これを選んだだけ。


「なるほど、よく考えたね。彼女が幸せに生きていることそれ自体が、君がこの世界に生まれて、何かをしたという証になるわけだね」


 そして、その幸せというものが徹底しすぎているだけ。

 数万年以上の時を使って、1人の少女を幸せにするために作者の元にまで殴りかかってくるのだから、異才という他ないだろう。


「そうだね、もう手放してもいいのかもしれないね。初めて書き始めてから一年半もたった。そろそろ終わらせてもいいかもしれない」


 魔王勇者の、1人の少年の旅は目的地にたどり着くことで終わりを迎える。


「次のアオイは君のことを覚えているのかい?」

「全ての記憶は勾玉に保存しておいた、もう、あのアオイも消えるよ」


 ここに来てから全く動かず、ただ見てるだけのアオイの存在が薄くなっていた。


「お疲れ、レンくん。よく頑張ったね」


 パソコンの前から立ち上がり、レンに席を譲る。


「ここからは君の物語だ。ボクは君に楽をさせてあげられなかったからね。その分だけアオイに楽をさせてあげてくれ」


 部屋から出ようとする龍鳴にレンが最後にひとつ聞く。


「その口調、もしかしてリーフィンとサリアはお前だったのか?」

「ボクは物語を記録する傍観者で、物語を掻き乱す道化だよ」


 扉が閉じたあとの部屋に残されたのはレンだけ。

 もう彼の物語に手を加える必要はない。今ままでボクが楽しむためだけに彼の世界に干渉してきたけれど、今度は彼らが楽しむために干渉する番だ。


「ここで魔王勇者の物語は、おしまい。次は、多分ないだろうね。彼ほどの人材は、きっとすぐには見つからないだろうから」


 ちょっと悲しい気持ちもあるけれど、この世界なんてそんなもんだろう。


「バイバイ、レン。主人公、お疲れ様」

新作書きました!


魔王を倒してくれと女神に頼まれ異世界に来ましたが、どう考えても怖いので自分探しの旅に出ます。

https://ncode.syosetu.com/n3343fs/

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