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第112話 女神姉妹の行動

 金の剣を持った白ドレスの女性は書庫の中を歩む。

 その書庫には人の気配がなく、ただ羽根ペンを動かす音しか聞こえない。

 そんな書庫の中でその女性は動くものを目指して進む。

 そして羽根ペンを持つ『ボク』の前で止まる。


「やあ、ダンタリオンの羽根ペン。久しぶり、になりますか?」

『一応久しぶりになるんじゃないかな? まあ、サリアと会ったのはまだボクが羽根ペンの頃だったからね』


 サーリアがボクに話しかけながら近くの本を重ねて座る。そこにあるのは神が読むための本だから大切に扱って欲しいんだけどね。


「しかし、ダンタリオンの魔力で動くだけの羽根ペンが心を持つとは思いませんでした」


 サーリアの方を向かずに未だに羽根ペンを動かし続けるボクに剣先を向ける。


「それで何をしてるのですか?」


 同じ神話の世界の仲間であるがその行動に躊躇いはない。


『ボクの仕事を知っているのだろ? この世界の記録だよ』

「クレナイさんの記録ですか?」

『新しい神話が生まれそうなんだ、それを記録することは大事な役目だとは思わないかい?』

「記録するだけならいいですが。手を出すならその首切り落としますよ」


 サーリアがほんの少しだけ剣を動かし、鋭利な刃がボクの首にめり込む。だが、血は流れない。


『安心してほしい。ボクは彼に手を出すことはしないよ。ボクはあくまで彼の行動を記し、彼の行動を観るだけ。ボクは──傍観者だからね』


 サーリアが納得したように剣を戻す。ボクの首筋には切り傷が出来ていたがそれはすぐに治る。その一瞬のうちに見えた傷の向こう側にはただ虚無があった。


『サーリアはいつまで彼で楽しむ気なんだい?』

「あなたはその答えも知っているのでしょう?」

『知っているけど本人の口から聞きたいものなんだよ。それがどれだけ普通のことでもね』

「私はクレナイさんが子供を作り、その子供に自分の意思を託すまではクレナイさんが道化の役目ですよ」


 さて、私は聞きたいことが聞けたのでもう帰りますね。

 と、言い残してサーリアがボクの書庫から帰って行った。

 しかし、神を楽しませる道化役か。

 随分と大変な役目に着いたみたいだね、レンは。

 さあ、今日のことも記さないと。


 次会える時、君は生きているのかな?

 サーリア



 ───────────────────────



 レンは久しぶりにアオイが仕事している城に遊びに来ていた。

 と言っても実際は遊びに来た訳ではなく、いろいろと用事があったのだが、マインが予想以上に忙しかったので延期になり、結局遊ぶことになった。

 そして少し部屋の中でごちゃごちゃしてたのだが1人が寂しくなったのでアオイよりかは時間がありそうなマインに来てもらった。

 と、ここまでは良かったのだが入ってきて早々にマインがとんでもないことを言い出した。

 すなわち


「今すぐにそれを脱いでください」


 と言ったのである。

 もちろんレンではなく隣に立つメイドに、である。

 隣に立つメイドはミイ、ナイナのどちらでもなく、これと言って特徴がない普通のメイドだった。


「……申し訳ありません、騎士団長様。さすがに魔王様がいらっしゃるこの場で服を脱ぐことは出来かねます」


 メイドは至極真っ当なことを返すがなおもマインは警戒を解かずにメイドを睨みつける。


「誰が服を脱げと言ったのですか。私が脱げと言ってるのはそのメイドの皮ですよ、サリア」


 メイドは、いやサリアは手をスカートの前に運び笑う。


「よく気づいたね。結構上手い変装だと思ったんだけどね」


 そしてメイド皮かぶりサリアの背中が割れ、中から血にまみれた黒ドレスサリアが出てくる。

 今回の黒ドレスはいつもよりフリルの数が少ない。メイドの皮に引っかからないようにするためだろうか。


「レン様は常に『魔王覇気』を使っているせいで普通のメイドや騎士では近づくことすら出来ないんですよ。だからあんな離れたログハウスに住んでいるのですが……。まあ、ともかくあなたが不自然に近寄っていたからですよ」

「それでも皮を被っていることまでは分からないんじゃないのかい?」

「魔王魔法で魔力を纏わせたのに何故か内部までは忍び込ませられなかったので。皮膚は人間のものだとわかりましたからね」

「怪しいと思ってもそこまでするのかい?覇気に耐えられるスキルを生まれつき持っている者もいるし、そういうものが王や貴族などの覇気スキル持ち相手のメイドを務めるのはよくあることでしょ?」


 と、ここまでは上手い具合に議論が進んでいたのだが突然終わる。まあ、マインの


「え? レン様に近づく女は全て調べてますよ?」


 という言葉でサリアの口をつむぐことに成功した。

 いやぁ、相変わらずのヤンデレっぷりですなぁ。


「さ、さすがだね。ということはもしかしてこの中身にも気がついているのかな?」

「もちろんですよ」


 当然とばかりに頷くマインにサリアが両手を伸ばしながら近づく。


「なら、見守ってあげるから楽しんでね」


 その両手がマインの顔に届くぐらいの距離になった時、サリアの顔が割れた。

 そこから伸びたものは女性の腕、それも爪を装備した腕だ。

 爪というのは獣の爪を模した物を手甲に付けたもので近接戦闘、それも高速で攻撃するタイプの武器だ。昔は普通の武器だったが今では暗器としての使われ方の方が多い。例えば暗殺者だったり、例えば王を守る従者だったりと。

 サリアの体が分解され魔法陣へと変わっていきその魔法陣から20歳ほどの燕尾服を着た女性が出る。


「さあ、私達の魔王様を返してもらいますよ。小娘」


 サリアの体が変化した魔法陣の前で一礼し、マインに優しく微笑むその女性には何か生えていた。


「あっ、」


 正確にはマインが投げた剣が胸のど真ん中に突き刺さっていた。


「え? あれ? 思っていたよりも弱いですね」


 はいっ、イベント終了!

 俺TUEEEE系の小説らしくサクサク進んで実によろしい。

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