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第105話 『領域』

「なるほどね。これが君の『領域』って奴かい?」

「そうですよ」


『領域』とはマインが創り出したもので魔王魔法によって放出した魔力を一定範囲に一定濃度以上溜め込むことで作られるものだ。

 この中では敵の動きが髪の毛1本レベルで感知でき、またマインは自由自在に動くことが出来る。反対に敵の動きを制限したり、レンと戦った時のように体温を奪うことも出来る。

 もちろん、元の使用方法である、空気中に放出した魔力を使った魔法も使える。


 正にマインが全力で戦える戦場。それが『領域』である。


「はあ、やりづらい」


 サリアとマイン、鬼神とは鬼の上位互換である。

 そんな存在がなぜ押されているのか。

 それは準備の有無である。

 マインは常に戦えるように準備しているがサリアはレンを復活させるためだけに来たので準備を何もしていない。

 だが準備をしたとしても魔神は軽く倒せる相手ではない。


 サリアが盾を構えた。



「? 防御のつもりですか?」

「いいや、攻撃だよ。純粋なる爆発(ショックボム)


 盾を構えただけ、それなのに地面にヒビが入り急いで後ろに跳躍したマインの体を吹き飛ばす。

 速い速度で木にぶつかり、木をへし折って止まる。

 さすがに受身を取りきれなかったのか口の端から血が垂れる。


「がはっ、はぁ、はぁ、凄いの撃ちますね」

「まあね」


 そしてまた攻撃が始まるが先程までの猛攻ではなく、少し防御も入った連撃だ。

 そして連撃の間を縫ってサリアが攻撃を繰り出す。

 その手に持った剣で、魔法で動きが鈍いながらも対等以上に戦う。


火焔球(ファイヤーボール)


 サリアの剣から撃ち出された火の玉はマインに難なく避けられる。


「どうしてわざわざ魔法の名前を言うのですか? 元々魔法に名前はないし、あなたほどなら名前でイメージを補完しなくても魔法くらい撃てるでしょうに」

「私が名前を言う理由なんて1つだけだよ」


 サリアが体の前で剣を上向きに真っ直ぐに構える。


「カッコイイからだよ」


 2度目のセリフを口にしたサリアへマインがため息をプレゼントする。


「はぁ、相変わらずちゅうにびょうですね」

「それはクレナイさんの受け売りかい?」

「いえ、これはアオイからですよ。残念ながら」


 少し悲しそうにマインがつぶやく。

 このセリフだけを見ると知り合いのおしゃべりのような雰囲気だが会話しながらも命を削りあっている。


 マインは腕、剣、足、体の全て、武器の全てをフル活用してサリアを斬り刻もうと奮闘する。

 それに対してサリアは広場の中央から一切動かずに魔法やその右手の剣、左手の盾を使ってマインと応戦している。

 サーリアの無数の剣による攻撃や、レンの太陽を伴って戦う軍としての強さではなく、完全なる個としての戦力。

 自分の体、それそのものを武器とした戦闘は速度と技術がものを言う。


 カチャ


 そんな音が戦闘中の2人の耳に聞こえた。

 そして突然2人がログハウスの方向をむく。


「いま、カチャって音がしたような」

「誰ですか?」


 レンがログハウスから顔を出す。

 意味がわからないのかマインの動きが止まる。

 しかし次の瞬間全力で剣をサリアに投げつけ漂っている魔力をサリアに向けて圧縮する。

 そして全速力でレンの元に駆け寄る。

 涙が溢れ出てくる。だがそれを拭いもせず、ただ、ただ全力でレンの元に向かう。


 全力で殺したはずだった。万全の状態で、絶対に殺せるように準備してから挑んだはずだった。

 だがそれだけの事をしてもレンは何事も無かったかのように笑ってそこに立っている。

 常人なら既に心が砕けていてもいいくらいなのに。


「──っ、レン様、帰ってきたんですね」

「ああ、帰ってきたよ」


 レンに飛びつきその胸に頭を押し付ける。

 5年前と同じ匂い、体温、凍っていてもなお、全く変わっていない。

 そんな状態でさらにレンがマインの体を抱きしめる。


「おかえりなさい、レン様」

「ただいま、マイン」


 マインが5年前の宣言通り、マインがレンの首に手を回して唇通しを触れ合わせる。


 その口付けはとても甘い味がした。



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