第97話 帝魔会談
メナール法国の宣戦布告から5日。
今日はグレン魔導国とグガン帝国の同盟に関する会談の日。つまり帝魔会談の日である。
使われている部屋はいつもレンたちが寛いでいる部屋だ。だがこの部屋はいつもと違い、散乱していたゴミが片付けられていた。いつもレンたちの飲み物や読みかけの本が置いてある机には人数分の紅茶といくつかの資料が置いてある。
廊下に面している扉から見て左側のソファーの真ん中にグレン魔導国の王様、レンが座り、その隣にアオイが座っている。
そしてその反対側のソファーにはグガン帝国の皇帝であるエリザベスが座っていた。エリザベスは金髪碧眼の少女で青色のドレスを着てレンのことを鋭い視線で射抜いていた。
その隣には甲冑姿の騎士が待機している。
「さて、まずは今回の会談の目的を確認させて貰いますね…」
アオイがそう切り出した。
「今回の会談の目的はメナール法国から宣戦布告を受けた国同士で同盟を結び、全面戦争の準備を進めること。これで間違いないですね…」
「ええ、問題ないわ」
「それなら戦力の確認をしたいのですが…」
アオイが資料をエリザベスに渡す。
「グレン魔導国の戦力は騎士が200に近衛騎士が100ですね…」
「……随分と少ないのね」
「日頃は人斬りやレンくんに頼ってたのでこれで十分足りてたんですよね。それと元々居た騎士達はレンくんが殺してしまったので…」
「グガン帝国の戦力は帝国魔導師が50名ほど、騎士が500ほどね」
「これでどうやってメナール法国に対抗するかですね…」
「えーと、ちょっと待ってくれる?」
レンが2人の話を遮って言ってきた。
「なんで同盟を結んでいる前提で話が進んでいるんだ?」
するとエリザベスが不思議そうな顔をしながら説明をしてくれた。
「まず、私の国とお前の国は敵対していないでしょ。その状態で共通の敵が出来たならさっさと同盟を結んで法国潰した方がいいでしょ」
「それにいくつか書類も少し前に送ってあるのでここでするのは主に戦争の話で同盟関連は署名だけですよ…」
「というわけだから関係ない人は出ていってくれる? 今から戦争の話の続きをするの。正直に言って邪魔だわ」
「いや、俺、この戦争の指揮を取るんだが」
エリザベスとアオイが同時にため息をつく。
「ならどんな作戦でいくか聞かせてもらってもいいかしら」
「もちろん、いいとも」
レンが机の上に地図を広げて騎士を模した駒を並べていく。
「まず、敵の真正面に精鋭を配置して突っ込ませる。そいつらが混乱させているあいだに横から全戦力で叩く」
完璧だろ?
とでも言いたげなレンにもう一度エリザベスとアオイがため息をつく。
「どこが完璧なのよ。相手は頭がおかしい法国製の騎士よ、そんな精鋭を突進させた程度で混乱するわけがないじゃない。それどころか獲物が自分から殺されに来たとでも言わんばかりに襲いかかってくるわよ」
「メナール法国の騎士達は仲間意識なんてゼロですから仲間が死んだところで恐怖も怒りも感じませんよ」
え? マジ? というかそんな話聞いてないんだけど。
っと、レンが動揺するがエリザベスが机の一角を指さす。
「そこの資料に書いてあるぞ」
「あ、本当だ書いてある」
「ほら、これで自分が何も出来ないことがわかったでしょ。早く出ていってくれるかしら」
一応この国の王様であるレンだが結局いつまで経っても一応は一応であり、使えない子だということに変わりはないのである。
「それでなんで俺が呼び出されるんだ?」
「ライトは元軍所属ですよね…」
「ああ、そうだよ」
「それなら戦争に詳しいかなって…」
「はははははは、なるほどそういうことか」
うんうん、と腕を組みながら深く頷いているライトは重要な点を確認する。
「あのさ、この国って銃ないよな? 俺、剣振り回す戦争したことないんだけど」
そりゃそうだろうな。
得意武器が銃だろうし。
「じゃあそのジュウっていう武器を騎士達に持たしたらいいんじゃないかしら」
エリザベスがとんでもないことを言い出した。
「銃を作るだけの技術と資源がないですね…」
「いや、昔の仕組みが簡単なものなら作れるかもしれない」
「それは人数分揃えられるのか?」
「作る人数にもよるけど1ヶ月あれば作れると思う」
どんどんと話が異世界ファンタジーから離れていく。
「やっぱり持たせるとしたら拳銃よりもライフルだよな」
「そうですね…」
「今更なんだけど、そのジュウって言うのがどんなのか見せてくれないかしら?」
「これが銃だよ」
ライトが大型のリボルバーを取り出して撃って見せる。
「すごい威力ね」
「これと同じくらいの威力を持った銃を作る予定だな」
その後も異世界らしくない話し合いは続き、
「よし、それなら今回は銃を使った技術力の差で殲滅するか」
ということになった。うん、魔法と剣はどこに行っちゃったのかな?
あ、レンは戦争終わるまであまり出ないよ。