第94話 魔王魔法
黄色いセーターを着て同色のズボンを履き、腰に大型のリボルバーを装着したライトが紅茶を飲んでいる。
その向かいでは黒いマントを羽織り黒いセーターにこれまた真っ黒のズボンを着たレンが同じ紅茶を飲んでいた。
そしてその部屋に緑のミニスカートとそれが隠れるくらい大きな白いセーターを着たマインが入ってきて、レンたちの紅茶が置いてあるテーブルにドンッと手を置いた。
「魔王魔法が使いたいです!」
そして自分の思いを盛大にぶちまけた。
内容はどうでもよかったが普段そんなことをしていないマインが突然叫んだことに2人が驚いて思考停止していた。
「えっと、マインさん?」
レンが少し怯えながらマインに聞く。
「それって剣で倒せない俺を魔法で倒そうって算段ですか?」
「それもありますけど…」
それもあるのかよ!
と、レンが冷や汗を流す。
ついでに言うとライトは魔王魔法が何かわかってないよ。
「アオイは普通に魔法使ってますし、レン様は既に日常の一部になってますし、そこの黄色いのはここに来てまだ1週間しか経ってないのに魔法使えてるし、私だけ使えないんですよ!」
とても悲しそうにマインが言った。
確かにメインキャラの中で1人だけ使えてないな。それは仲間はずれみたいで可哀想だな。
それとライトの魔法は銃のことかな?
確かにあれは知らない人から見たら魔道具みたいなものだからな。
「とは言っても俺は魔王魔法が使えないからな」
そう言った途端レンのポケットからモーツァルトのレクイエムが流れた。
「レン、それってもしかして俺らで決めた『嫌な奴の着メロ』か?」
「そうだよ。あいつから電話が来る時は面倒臭い時だからな」
だが無視するわけにもいかないのでしぶしぶ電話に出る。
「もしもし…」
『そのすごく嫌そうな声は何かな? せっかく魔法のことならなんでもござれの魔法の神サリアちゃんが電話してあげたのに。それで魔王魔法の剣だったね』
「『その魔法は少し特別でね』」
サリアの声が後ろと電話から同時に聞こえた。
「魔力が大量にいるんだよ」
レンが後ろを見るとサリアがいた。
「なんでここに来たんだよ」
「説明しにくかったからね」
「それでどうやったら使えるんですか?」
マインがサリアに聞いた。あんなことがあったのに普通に聞けるとは相当使いたいみたいだな。
「まず、自分が持っている魔力をイメージできるかい?」
「出来ますよ」
そこら辺はイメージ出来るみたいだな。
というかそれが出来たら魔法が使えそうなんだけどな。
「そしたらそれをこう手のひらから押すような感じで出すんだよ」
サリアが手から黒い煙のようなものを出す。
「これを操って戦うのが魔王魔法だよ」
サリアの手のひらからでた煙がクマやハートを形作る。
それを真似してマインも手のひらを前に突き出す。だが何も出てこない。
「これは失敗か?」
「いや、これは無色透明なだけだね。しかし珍しいね普通何かしらの属性に偏っているはずなのに無色か。道理で魔法が使えにくいみたいだね」
マインが右手をレンの方に向ける。
するとレンの髪が風でも吹いたようにバサバサと動く。
「あ、そうそう。そうやって人を吹き飛ばすこともできるよ。ほかの魔王もよくやっているしね」
なるほど。あの魔王がやる手を翳して敵を吹き飛ばすっていうのはこういう事だったのか。
「それでこの煙みたいなのを変えて攻撃」
サリアが出した煙から氷の槍が現れる。
そしてレンの頭目がけて飛んで行く。
だが何となく来そうだなと予想を付けていたレンはアカギでそれを砕く。
「なるほど。そうやるのですね」
マインも氷の槍をイメージしたのか突然氷の槍が現れる。それもレンの顔の前5センチくらいの所にだ。
驚いたレンが何とか砕くがそれを戦闘中に出来たら随分と苦戦するだろう。
「おお、これは使えそうですね」
「あれ? そう言えば俺も使えた気が…」
「ああそう言えば君にも与えてたね」
レンがサリアたちと同じように赤い煙を出して形を変える。
そして氷の槍を作ろうとする。普通よりも大きいものができてしまう。
「あれ? 火属性によっているから小さくなると思ったんだが」
「ああ、氷は熱変動の一種だから火属性だよ」
「なるほど」
そのあともレンたちは魔王魔法で遊んでいた。
「よし、もう完璧ですね。これで私も魔法使いの仲間入りです」
うん、君は剣だけでも十分強いよ。