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第91話 逆念仏

 サリアが持っていた本を掲げる。


「これは知り合いに貰った仏教の本で読んだら極楽に行けるらしいよ」

「逆に読んだら地獄に行けるのか?」

「さあ?」


 一瞬みんなが冷たい目でサリアを見つめる。


「魔法の呪文は逆に詠唱すると逆になるのか?」


 レンからの質問。


「いや、魔法の詠唱は単語に意味があるからね。「ほのう」を「うのほ」って言っても意味がわからないだろう?」


 ならなんで念仏ならいけると思ったんだよ。


「いや、鵜の穂って書くとそれっぽいぞ」


 レンが何時ぞやのフリップを取り出して漢字を書いた。


「ああ、確かに。あ、それならカタカナもいいんじゃないの?」

「こうか?」


 レンがフリップに「ウノホ」と書く。


「 こんな漢字はどうですか?」


 サーリアがフリップに「宇野步」と書く。


宇野うのあゆむ?」

「人名、その手があったね」


 既に座り込んだ3人はワイワイガヤガヤと脱線を続けるが痺れを切らしたマインの手によって話が戻される。

 まあ、方法は…


「うわあ、せっかく描いた宇野歩の肖像画が縦に真っ二つにー」

「ちょっとマイン、今世紀の最大の傑作が出来そうだったのにー」


 レンの持っているフリップを切り裂いて強引に戻すやり方だったがまあ、いつもどうりだろう。


「まずはあの黒い門の説明が欲しいのですが」


 マインが指さしたのはサリアが消し忘れていたあの地獄の門だ。


「ああ、もしかしてクレナイさんが聞いていたのもあれの事なのかな?」

「あ、そうそう」

「あれはねヘルに物を送る用の門だよ。ヘルは地下に住んでるからね送りにくいんだよ」


 ヘルって地獄に住んでるんだっけ?

 ということをレンが思い出しているがまあ、間違ってはいない。


「しかしわざわざあんな真っ黒な門にする必要があったのですか?」


 マインがサリアに律儀に手を挙げて説明する。

 あ、サーリアとレオは草原の端で斬り合って愛と剣術を確認していた。

 いやあ微笑ましいですなー


「あれは私の趣味だよ」

「趣味悪っ」


 なんで? かっこいいじゃん。

 と素面で言いのけたサリア。

 知っての通りサリアはレンと同じく厨二病気質である。そのため魔法もド派手である。


「そう言えばあれでヘルにピザ送ったこともあったなー」

「ピザ?」

「ピザ職人がやっているあのくるくる回して作るやつを練習してた時に出来たピザを配ってたことがあってね」


 ふーん、と話を聞いていたレンがふと気づく。


「というかなんで俺、ここにいることが当たり前になっているんだ!?」


 レンが突然立ち上がる。


「レン様も関係者だからいても問題ないと思いますよ」


 マインの言葉にレンがふるふると首を降る。


「いやいやちょっとまって、俺達夕焼けの見える空で告白して付き合うことになったんだよな? 普通に考えたら楽しい日々が始まるはずだろ?

 なんで魔神がピザの練習をしているなんていうどうでもいい知識を覚えないといけないんだよ」


 腕を大きく振り体全体で不満をサリアにぶつける。


「えーと」

「というわけでだ。これから1ヶ月間もう俺らを呼ぶな。用があるなら電話するか直接来やがれ、異論は認めん」


 何か苛立ちのせいか口調が変わっている気がするがまあ、いっか。


「というわけでさっさと戻したまえ」

「はあ、わかったよ」


 サリアが手を振ってレン達を元の世界に返す。


「いやあ、告白シーンをぶち壊したらあんなことになるんだね。面白かった」


 うん、やっぱりクズだな。


 ───────────────────────


 よし、どうやらサリアも少し反省したのか王都に返してくれたみたいだな。

 人混みがすごくて離れ離れになりそうだったからマインの手を掴んでアオイの元へと戻る。

 あれ? 今回はリーフィン視点じゃないのか、だって?

 リーフィンってなんだよ、いつの間にそんな人物が出来てるんだ?

 まあ、知らない人物視点ではなく今だけは俺視点だ。

 それはそれとして魔王が歩いているのに人が避けないのか、って?

 逆にパニックになってめんどくせーだろ?

 だから色々と変装しているんだよ。


 まあ、でも数分でアオイがいる屋敷までたどり着いた。

 そしてここで俺はとても重要なことに気がついた。


「…マインに告ったことをアオイに言わないとな」


 ───────────────────────


 さあここはグレン魔導国の王都、その中心。すなわちアオイが仕事している屋敷である。

 その執務室にレンとアオイはいた。

 アオイはいつも通りのあまり感情を出さない顔だがレンは冷や汗を書いている。

 補足しておくとレンは少し前にアオイの好意に気がついている。残念ながらレンは小説の主人公でも物語の主役でもないので少し鈍いが鈍感と呼ばれるほどではないのである。

 そしてレンが心配しているのは嫉妬したアオイに金属バットで殴られないかということである。


「─ということでメタトロンには天界であったんだよ」

「何故かマインとの距離が近くなっている気がするのですが…」

「うん、マインとは何も無かったよー」


 こ、こいつ逃げやがった。そりゃあ怖いだろうけどこのヘタレめ。


時無あかねさんとのコラボ作品を書きました。

ぜひお読みください。

https://ncode.syosetu.com/n3214ey/

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