第?話 神魔対戦
雲ひとつない綺麗な空を砂埃と共に舞う。
──眼下にはミンチになった肉塊を砕いている女神の姿が見える。
女神は上空に浮いている俺の姿には気付いていない。異様なほどの執着心を持って、過剰なほどの追撃を加えている。
そんな、あまりに隙だらけなアレを見て思わず苦笑する。
──まさかさっきまで狂気的に殺しに来ていたアレが、ちょっと視界から消えただけでここまで油断するとはな。
アレが地面に剣を向ける。それは力を込めず、ただ剣先を動かしただけの動作。しかし、剣先に光が集められ、空間が歪むほどの力が溜められる。そして放出。莫大なエネルギーが全て光に変えられ、地へ降り注がれる。
おそらく地上にいたのであれば魅せられていただろう光の柱。しかし今は戦いの最中で、死の光を美しいとも思えない。光が全て消す領域のみを確認し、すぐに砂煙の中のアレに目を向ける。
消滅の光に祈りを捧げているのか、醜く消えていくそれを哀れんでいるのか。
どちらにせよ隙だらけのアレに向かって落下による勢いも乗せて女神の左肩から腰のあたりまで剣を振り下ろす。
アレの切り跡からは光の粒子が零れ、再生するような素振りはない。
しかし、アレは嗤う。
自分の体がゴミに変わって行くのを自覚しながら、悲しみでも怒りでも怨みでもない笑み。
喜びから漏れたその微笑みは、その美しさと裏腹に狂気的な嫌悪感を感じさせる。
──目が笑ってないんだよな。
男も同じように笑い返す。もちろん狂気のブレンドを忘れずに、だ。
「さて、まだ戦えるみたいですね」
アレが歌うように言葉を紡ぐ。それに言葉ではなく、剣撃で返す。
これは女神と1人の男の狂気と暇つぶしの物語。